回想
ウォルフを家族に向かい入れてから私の大切なものが一個増えた。— —ウォルフは生き物なのでものじゃないけど
ウォルフを眺めていて不意に『なぜ。私は両親から愛されなかったのだろう。』とそんなことを思ったことにびっくりした。記憶の奥深いところに置き去りにした感情であったはずなのに。
あー、と気付く。ウォルフはまだ赤ちゃん。赤ちゃんを前にすると無条件に笑顔になる。それは人間の赤ちゃんも同じはず。他人の赤ちゃんも可愛いのに自分の子供なら尚更。でも私の両親はそうではなかったなー。とそんな事を考えながらウォルフは眺める。今日も元気におもちゃで遊んでいる。まだ赤ちゃんだから、ここは広いけど後数ヶ月もすれば狭くなるよね。
和室だけじゃなくてリビングも出入り自由になるように主人に交渉しなきゃ。と心に決める。室内飼いなのだから狭いところでは運動不足になるよね。
柴ちゃんは運動量そこそこあるしね。
ウォルフを観察することは私の日課になっている。
やはり左目の目脂が気になる。家族に迎えいれた時から左目に目脂が溜まっていた。
毛にびっしりと貼り付いている。引っ張ったら痛そうやし。水に濡らしてふやかしたら取れるかな。と洗面所にいきタオルと水を準備する。
『ウォルフ。一緒に遊ぼうか。』とウォルフのある柵の中に入らせてもらう。
ウォルフは私に気付き走ってきてくれる。それだけで嬉しい。慣れたのかな。か、犬特有の愛想振り撒き作戦なのか。犬は愛されるために主人に尽くす。と聞いたことがある。私は信頼関係を築きたい。
ウォルフと紐の引っ張り合いをする。3回に1回は負けてあげる。今はまだボール遊びはできないみたい。
引っ張り合いにも飽きたのかウォルフが私の膝に乗ってきた。ちょうどいいかとウォルフの目に水に濡らしたタオルを充てて少し擦る。目脂が少しずつ取れてきた。でもこれ以上は嫌みたい。また今度やね。ウォルフお休みと声を掛け、ウォルフの体温を感じながら2人で眠りにつく。