初めての朝
夜中に少しだけ一緒に寝てウォルフが眠ったことを確認しベッドに連れて行く。数時間後の朝に会おうね。と声を掛けて寝室へと向かう。
朝4時半ごろにウォルフが鳴いているような気がして、リビングへと向かう。
私をみてキュンキュン鳴く声が一層早くなる。
ペットシーツをみると大きい方をしていた。ウォルフはぼく出来たよ。と誇らしげに報告しているようで微笑しい。
『ウォルフ。よく出来たね。偉いね。』と声を掛けながら片付ける。
ウォルフは褒められたことがわかるのか、ちょっと得意げになっているように見えて可愛い。
そうか。ウォルフが何をしても愛らしく可愛いのか。と自分の思いにびっくりする。
ウォルフに『私を選んでくれてありがとう。』と心の中で感謝を呟く。
まだ朝ごはんには早いし、外に連れて行けないし、、と悩んだ末もう少し一緒に寝ようと、膝の上にウォルフを乗せて『朝ごはんまで一緒に寝ようよ。』と誘う。ウォルフは私の顔を見ながら首を傾げたように見えた。やっぱり可愛い。『ウォルフ、可愛いね。』と声を掛ける。
頭、背中、尻尾、お腹、おててと順番に優しく撫でていく。嫌がる素振りも見せないので、繰り返し全身を撫でて回す。と、爪が長くなっていることに気付く。毛並みもパサパサしてるような感じがする。
3回目ワクチンを打ったら爪切りとシャンプーをしようと心に決めた。
お腹を触っている時に五箇所くらいに腫瘍みたいなものがあることに気付き鼓動が早くなる。なんだろうこれ。ワクチンを打ちに行った時に獣医さんに聞いてみよう。と聞くことリストを記入する。
リストを書き終えてからも、心の中のざわつきは完全には収まらなかった。けれど、今は不安をそのままぶつけるより、目の前のウォルフを安心させてあげたい。そう思い、深呼吸して気持ちを整える。
「大丈夫、大丈夫だよ。」と自分にも言い聞かせるように、そっと耳元で囁く。
ウォルフは私の胸に顔を埋めて、すうっと小さな吐息を漏らす。その仕草がなんとも愛おしくて、不安が少しずつ和らいでいく。
時計を見ると、まだ5時前。外は静かで、薄暗い空に少しずつ朝の気配が滲んでいる。窓の向こうの気配に合わせるように、ウォルフの呼吸も穏やかになっていく。
「もう少し一緒に寝ようね。」そう言ってソファに体を預けると、膝の上の温もりがじんわりと広がる。
撫でる手の下で小さな鼓動がトクトクと確かに刻まれているのを感じ、胸の奥にふわっと温かいものが広がった。
──朝ごはんの時間までの、ほんの短い幸せな二度寝。
そのひとときが、かけがえのない宝物になるのだろうと感じながら、私もそっと瞼を閉じた。