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闇夜の邂逅

作者: 龍牙 襄

いらっしゃいませ。小説では難しいロボットものです。わたしはずっとこういう巨大ロボットものがやりたくて、このお話もずいぶん長いこと考えてるんですが、なかなかストーリーがまとまらないので、思いついたエピソードから書いていこうという無茶なチャレンジです。

ここからまた新しいエピソードが始まるので単体でもぎり楽しめる、かな? ですのでロボットものを期待している方に楽しんでいただければ幸いです。

 深夜、星明りさえまばらな闇夜を、巨人の群れが歩いていく。

 巨人はいずれも身の丈20メートルほど。全部で8人いるが、いずれも異なる武具に身を固めているところを見ると、寄せ集めの兵士か何かか。彼らは4台のこれまた巨大なトレーラを守るように囲いつつ、前後に展開しながら山の斜面の森をかき分けるように進んでいる。

「少しペースが落ちている、か?」

「これ以上は無理だ。グランやヴォルクはともかく、ベアードの連中のダブレッサーが加熱する」

 巨人たちの正体は、巨大な人型兵器、直装機だった。

 彼らは数ヶ月前から交戦状態にある同盟(通称トリペリア同盟。『星教』という宗教を国教としているうちの数カ国の俗称)に不穏な動きがあるとして、隠密裏に潜入した南軍(南部国家連合軍)の外人部隊なのだ。

 当初の目的である情報収集はすんで、現在は撤収中なのだが、彼らは友軍の撤退支援を一切受けていない。それは実はこの一連の潜入作戦そのものが軍の正式な作戦ではないからなのだ。

 事の発端は彼らの部隊長であるエディの発言からだった。

「同盟が何かやらかしている」

 部隊長自身は確証があるようだったが、なんら物証が提示できるわけでもない状況で、そうそう軍は動かせない。それならばとエディは自ら率いる部隊のみで単独潜入工作に踏み切ったのだ。

 もともとエディらは南軍の正規軍ではなく正規軍に編入されているだけの余所者なので、軍としてもこの作戦が失敗した際の損失が少ないため、半ば黙認のような形で了承された。そんなため、参加人数も戦闘員8人に最低限の支援要員のみの総勢30名あまりという驚くほど少数での遂行となった。

「待て」

 先頭を行くA小隊の小隊長でもあるエディのグラバランスが左手を上げて全隊を止めた。寄せ集めの外人部隊とはいえ、すでにこのメンバーでいくつもの修羅場をくぐってきているだけあって、みなの統率はきれいに取れている。

 エディがグランのセンサー画像を全員に(トレーラー部隊も含めて)配信した。

 直装機は可視光線以外にもいくつかの光学センサーが搭載されている。通常の夜間行軍であれば赤外線ライトなどを使用するのだが、今回は敵による探知を極力避けるため、光増幅システムを使用している。その性能が一番いいのがグラバランスだった。

 その画面には、前方の森が突如開けて、空き地のようになっているのが映し出されていた。それもかなり広い。

「なんだよこりゃ。地図にも載ってないぞ」

「行ってみる。ランス、フォローを」

 エディはそう小声で言うと、A小隊のベアマックスに乗るランスと二人、その空き地に踏み出した。

「これは……墓?」

「古い墓地のようだな」

 ここは南との国境近くとはいえ、まだここは同盟内で、あたりの人々は星教を信仰している。星教では死後は天空に浮かぶ三芒星に行くと信じられており、遺体は焼却して灰は自然に返すというのが一般的で、墓を立てるということはしない。

「地元民にも忘れられた墓、か。寂しいもんですね」

 星教が広まったのはここ1世紀ほどといったところだ。それ以前は住民はこのように墓を立てていたのだろう。

「しかし時期的に考えると、ここを突っ切るというわけには行かんな」

 この墓地がどのような宗教によるものかまではわからないが、土葬だとするとその地盤は隙間だらけという可能性が高い。重量のある直装機が踏み込めるものではなかった。そのため、部隊はこの空き地を迂回するように移動する。

「ううっ、ぞっとしねえなあ」

「ちょうど時間もころあいだぜ。出るかもな」

 見れば時計は午前3時を回っている。まさに丑三つ時だ。

 その時、トレーラー脇につけていたC小隊の仙閣が何かに気付いた。

「? 岳龍、どうした?」

「墓地のほう、何か動いた」

「!」

 みんないっせいに動きを止め、空き地を見る。もちろん、幽霊を探しているわけではない。

 確かに、何かが空き地の反対側の森を彼らと同じように動いているようだった。時折、赤い光か何かがスーッと移動するのが確認できた。それらは墓石越しに、人魂のようにも見える。

 彼らのセンサーには何も反応がない。敵ならばこの距離で見つけられないはずがない。

「……ほんとに幽霊かよ」

 その時、エディが指示を出した。

「リス、頼めるか」

「わかりました」

 最後尾につけていたD小隊の小隊長であり、直装機乗りとしては珍しい女性パイロットのリスは、愛機のディスヴォルクに持っていた槍を構えさせ、音もなく怪しい赤い光のある地点に投擲させた。

 20メートルほどもある直装機用の槍は、狙いたがわず目標のど真ん中に飛び込んだ。

 と、その森の中からいくつもの赤い光が飛び出してきた。

「なっ!?」

「黒い……ザフツガルド?」

 出てきたのは漆黒に赤いアクセントの入った巨人、同盟の新型機、ザフツガルド・タイプだった。

 しかし、これならまだ人魂が出てきたほうが驚かなかったろう。

 そもそもエディらが同盟に侵入したのは、同盟が新型機を開発しているのではないか、ということを確かめるためだったのだ。ところが彼らが侵入するそうそう、トリペリアでは閲兵式が大々的に行われ、そこで新型直装機としてザフツガルドが公開された。もっとも、これこそがブラフであり、このとき公開された機体はデモンストレーションを行った数機をのぞいて、他はただのデコイだった。これは周辺国に新型機開発のうわさが流れているのを知った教央殿(星教の総本山。実質的な同盟の中心)がうった芝居だったのだ。

 その証拠に、エディらは奥地で極秘裏に生産され、実戦配備に向け壮絶な訓練までされている本当のザフツガルド(後にロイヤルガードと呼ばれる本国仕様)を目撃していた。彼らは、この情報を持ち帰る途中なのだ。

 だが、今、この目の前にいる6機の黒いザフツガルドは、先に目撃したものとも明らかに違っていた。

「これは……隠密仕様なのか?」

「後方での破壊工作、あるいは潜入作戦用……」

 双方とも動けない。どうやら向こうとしてもこの遭遇は予想外だったようだ。

「奴らも、南に向かっていた」

「ということは、行かせるわけにはいかねえなあ」

 全員に殺気が走る。

 それと同時に、黒い直装機も全機が抜刀した。

 静かな墓地で、誰に知られるともない戦いが始まろうとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

いろいろわからない部分もあったと思いますが、このお話の前後に結構ストーリーがあるので、その辺を想像していただければと。タグで探していただければもうちょっと出てくる、かも知れません(汗

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