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死想英雄譚〜死して始まる物語〜  作者: 亜化月
第一章 英雄への道
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闇の王

神楽は、上空から見えるその光景に恐怖を覚えた。

獣の少年とフェリシアの間に立つその存在をフェリシアが言うまで自分は知らなかった。だがそれでも先に理解させられた。

これが魔王だと風貌は、多くは人間と変わらないだが

それを人間に近い生物ということは出来なかった。

背中から生えた黒く禍々しい翼、額にある曲がった角

元の世界の悪魔のような姿でありながら、

その面持ちは男性とも女性とも思え息を呑むほどに美しいこの世の物で無いような脳が理解を拒ぼうとする程に、そして何よりその存在が持つ存在感は、


「まるで神みたいな」


そう神楽が、感じるほどだった。


魔王は目の前の勇者を少し見た後、後ろを向き獣の少年ムーニアに語りかける。


「気は済んだか?」


その言葉にムーニアは顔を歪め動けない筈の体を動かそうとする。


「そうかわかった。だがもう時間だ。体を回復させろお前はまだやる事がある。」


そう言い胸元から紅く濡れ今も躍動する手に収まる程の大きさの肉と自身の黒い髪を一本抜き、ムーニアに手渡す。

その肉と髪を少年は躊躇なく口の中に入れ咀嚼していくそうすると傷ついていた筈の体と消耗した魔力が彼の体に戻っていく。

その姿に勇者は剣を構え


「誰が動いていいと言った?」


その行動を魔王が止めた。勇者に問う共に解放した。魔力によってこの場が闇に染まる。


「...そんな馬鹿な」


上空から見ていた神楽は、目を疑う何故なら魔王の魔力は、この森全域を覆う程に強大だった。勇者の魔力を圧倒する程に、


「私は、誰かのために動く事に許可を求めたりしない」


「誰かの為に?自らの為だろう勇者」


勇者のその言葉に魔王は向き直り再び問うその答えが返って来ない事を理解していても。


「もう勇者もわかっている筈だろう。これは罠でもう逃れる事は出来ないと言う事に、まさか仲間も無しに

私と戦うつもりか?」


「わかっているはずだ。貴様のその力はそんな物では無いと」


「だとしても今ここで私は引く事は出来ない。」


その宣言と共に剣を構える勇者の姿に魔王が空中より現れた漆黒の剣を構える。

戦闘が始まった。


一撃一撃が必殺全てを蹂躙し壊す程の力が解き放たれる。

剣同士がぶつかり相殺される。

先程までの戦いが速度と技術の闘いだとすればこれは

力と破壊の応酬なのだと。

勇者が剣を振い魔王の下の地面を消し飛ばし空中を蹴って魔王に迫る。その突撃を剣で受け魔王が魔法を唱えた。目の前に突如として現れた。辺りを焼き尽くす炎を強引に突っ切り魔王へと勇者が追い縋る。

魔力がぶつかる剣撃が響くごとに空が揺れ地形が変わっていく。

そんな埒外の攻防が繰り広げられ

勇者がもう一度攻撃を加える為足に力を込め魔王の姿を見た時。

魔王が一言呟いた


「少し取り込むか」


そう言い魔王が地面を軽く蹴ると魔王の後方一帯の地形が黒く染まる。

光すら存在しない木も土も水も全てが黒く染まり

その全てが捲りあがり津波のように勇者を呑み込もうと押し寄せてきた。

避けられない故に迎撃する。

思考を切り替え魔力を込め剣を振う

そうして放たれた剣撃は、黒き波に飲み込まれ消える。

山すら消し飛ばすその剣撃でもこの黒は消し飛ばせない。

そして魔王は、その上で


氷塊よ顕現せよ(フィーレボレアス)


上空に空を覆い尽くすほど大きい氷の槍を出現させた。

その光景に勇者は剣を納め屈み深く息を吐く。


その脅威を打破する為に。

解放した魔力を全て剣に集め凝縮する。

強大な魔力に対しぶつかっても打ち消される。ならば

一点そこに全てかける。

目を開き剣を抜き飛翔する。

黒き波に剣を振いその波を断ち切り進む。上へ上へ

切り伏せ撃ち破り前へ剣を振るう。


勇者の一撃(ブレイヴアース)


一人の少女は、全てを打ち破り氷の槍すらも砕いてみせた。

闇に包まれた森が光を取り戻し煌々と輝くように、その一撃は困難を突破した。

そして上空より飛来する。勇者が魔王を断つ為に、

剣がぶつかり拮抗し魔王の剣を押し除ける剣が振るわれあの魔王の顔に触れる傷をつけた。


「通った!」


勇者の叫びの通り確かな傷。浅く致命症にはなり得ないだが確かな一撃が魔王に与えられた。

その傷を魔王が指でなぞり流れ出る赤い血と勇者を見る。

このままならいける。魔王は、先程の魔法と黒い波によってかなりの魔力を消費している。

先程まで周りを覆っていた魔力も少なくなっている。

勇者も魔力を消費したが魔王ほどでは無い。

このままいけば、そうこのままならば、


魔王がもう一度地面を蹴り先程黒く染まった地形の波が時が止まったように停止し一瞬にして掻き消えた。

魔力も何もなくもとよりなかったかのようにあった筈の森は荒野とかし魔王の後方全てがなくなっていた。


「なるほど確かに魔王の力」


勇者が認める確かにこれならば、全てを統べる魔王になり得る力だ。そう確信する。


「全てを支配し自らの魔力に変える力」


多くの魔力を失った筈の魔王が魔力を取り戻してみせた。


「やはり惜しいな」


魔力を取り戻した魔王は勇者を見つめ


「やはり勇者こちらに来る気はないか?」


「何を言っている」


そのあり得ない提案にその場にいる誰もが耳を疑い

ありえないと吐き捨てる。

魔王以外は、


「元より私もお前もこんな事をしている暇など無い。

だが貴様の力と在り方はこちらにとっても看過出来るものでは無い故に罠を仕掛けた。」


「そんな事は」


「わかっている筈だ。このまま争ってもどちらにも不利益しか無いと言う事にお互いに止まれば、貴様の望む物を与えよう。ことが済めば私の首でも差し出そう。」


魔王の言葉に嘘は無いように見えた。本当に自らの首を差し出す程に勇者の力を惜しく思っているのだと。


「だとしても、私は止まらない」


それでも勇者は揺らがない。その目はただ信じる物の為にあるのだから。


「そうか....ならば、最初と変わらずこちらが無理をするとしよう。」


魔王は、破綻した取引を悟り。

もう一度剣を取り出し右手で構える。

魔王の後方が黒く染まり今度は波のようではなく確かな意思を持って勇者へと殺到する。


勇者が選ぶは迎撃真っ向から叩き伏せる。

その最中魔王が勇者の後方を取る。

読んでいる。黒く塊を弾き飛ばし後方の魔王へと剣を走らせる。

魔王を引かせ自分から距離を取らせる為に、

だが、回避も防御もしない。魔王は剣に対し何もしない剣が振るわれ魔王の首が断ち切られる直前、


「――」


魔王が何かを呟いた。その言葉に勇者の瞳が揺らぐ。

一瞬だがこの闘いにおいてその隙はあまりにも大きく、魔王の左手が勇者の胸を鎧ごと貫いた。


それでも勇者は止まらない。剣を振い首に届く寸前ナイフがその行く手を遮り、剣筋をずらす。

ムーニアが放ったナイフの一振りが首を立つ筈だったその一撃を魔王の右手を消し飛ばすに収まった。


左手を引き抜き、魔王が掻き消えた右手の傷口に触れる。


「腕一本か、随分と安い。」


消し飛ばされた。剣を出現させ勇者へと向ける。

そこには、胸を貫かれ苦しむ勇者の姿があった。

その体には胸元の傷口から全身を縛るように黒い鎖があった。その傷から血は流れない。

その鎖は勇者を捕えない。ただ勇者から溢れる魔力を奪い押さえ込むようにその力を縛っていた。


「まだやる気か?」


勇者からの言葉はないただ剣を構え応える。


「そうか」


勇者めがけて魔王の剣が勇者へと到達する直前空から

急降下する神楽が勇者の体を掴み目の前の洞窟へと進む。


「ごめんなさいフェリシアさん、立ち入る隙すら無かった。」


その少年の謝罪の言葉と一部が黒くそして損傷した大剣を見て少女は、


「いいえ、...助けてくれてありがとう」


そう感謝の言葉を伝える。大剣が飛び二人が入った洞窟の入り口を破壊し崩れていく。

外の者たちを締め出す為に、

そうして洞窟へ消えた者たちを見て


「まさか...なるほど、そうか。」


一人思考に耽り確信を得たように、目を閉じ額に指を当てる。その後誰へ状況を伝えるように魔王は話す。


「嗚呼そうだ。わかっている。....契約は契約だ。」


ここにはいない何者かとの会話を終え。魔王はムーニアへと視線を向ける。


「私はここから去る用件は済んだ。故にここからあとはムーニアに任せよう。だが一つ言っておく、

あの勇者が生きていたなら連れ帰れ。死んでいれば勇者の仲間にでも返しておけ。もし、それができない状態まで追い詰められたなら迷わず撤退しろ。最後の機会だ存分に舞え。」


その言葉にムーニアは姿勢を正し深く頷き


「は、仰せのままに。」


その返答と共に魔王はその場から飛び立ち姿を消した。



















小説の題名である死から始まる物語が完全に他の作品と名前が被っているものを発見しました。

趣味で描き始めた物ですが迷惑をかけない為

題名を死想英雄譚(しそうえいゆうたん)

にしたいと思っています。

元の題名はよこに死想英雄譚〜死から始まる物語〜と書くつもりです。

コメントなどで反対意見などが無ければ変えたいと思います。ご確認ください。

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