冥界の女王
意識が途切れどのくらいたったのだろう
目を開き意識を完全に覚醒させる。
そうした後今まで何があったのか自分がどうなったのかが湧き出るように思い出す。
「そうか俺死んだんだな」
後悔も悲しみもあったが想像よりも落ち着いてその事実を受け入れることができた。
自分に驚いた。
辺りを見回すと
ただただ不思議な光景が広がっていた。
広い
いや広いのかすらわからない距離感が全く掴めないのだ
暗闇の中にいるはずなのに視界ははっきりしているし
どこか綺麗でだが不安になるような
まるで夢の中と現実の境のような場所だった
青年はその場所に上向けの状態で寝転んでいた。
体を起こそうと手を黒い地面につき首をあげると気づく
自分の足がなくなっている。
腰のあたりから切断されたのではなく
まるで元からなかったように消えてなくなっている。
そして自分自身の体にを改めてみると体が全体がそして髪を見ると白く染まって
いる事に気づいた。
「なるほど幽霊ってこんな感じなのか」
ゲームや昔読んだ本の状態によく似ているように思う
何度か体の状態を確かめてどうにか動けないか。
思考錯誤していると力をこめ意識を上に向けると少し浮くことができた。そのまま横や前に動き慣れるまで
何度か地面に落ちながらこの不思議な空間を揺蕩う。
そうしていると突然
人影が見えた。
「すいませんここは....」
そう言って駆け寄ろうとした瞬間悟った
この人影は人間じゃない
何故ならその人影には全く現実感がない
この空間も大した物だったが
この存在の前では
全て霞んでしまう
髪は漆黒
肌は病的に白く
体は今にも折れてしまいそうなほど細い
儚げで消えてしまいそうな
神秘的な美しさがあっただが
か弱いなどとは少しも思えない程の
存在としての強さがあった
見た瞬間
全てが終わるそう予感ができた
「...来たか。我の名は伊邪那美神おまえの魂の回収に来た者だ」
「伊邪那美神」
思わず驚き全ての思考が止まる。伊邪那美神
確かにその神はそういった
日本における最高神の一人
日本という国を作り
以降伊邪那岐神と共に
日本の神々を産んだとされる
神の母
目の前の存在が
昔文献で読んだことのある存在を名乗る事に自分は
疑う事もせずただ納得した。
確かに神と呼ばれる存在がいるとするならば
目の前の存在だろうと確信できた。
ただもし本物だとすれば疑問に思うこともあるが
何故伊邪那岐神が今自分の目の前に現れたのか。
「貴様は死んだ道半ばで命の灯火を消しその魂体共に我が冥界に落ちたこれより貴様は我の所有物ひれ伏しただ願えそうすれば少しは楽にしてやる」
そう言われてようやく気づく体が動かない
いや動けば決定的に何かが崩れなくなる予感がある
「申し訳ございませんでした。貴女様の冥界とは不躾な態度お詫びいたします。」
目の前の存在に対し頭を下げ相手の行動を待つ神がこちらを見つめ目を閉じると
「さて確認は済んだ。動くなよ」
そう言い
目の前の神が腕を前にこちらに触れようと近づいて来る。
まるで蛇に睨まれたカエルのように
体は動かずただみることしか出来ない。
自分はあの手のひらに触れた瞬間全てが終わってしまう事を感覚で理解ができた。体の力が抜け身を委ねようとした。
ただある少女の顔が思い浮かび
動かなかった筈の体が一歩引く
「ほう、なんのつもりだ?」
「申し訳ございませんただもう一つ確認しておかなければいけないことがありました」
体が悲鳴をあげ手が震えながらもこれだけは聞かなければいけない。
「笏賀結衣花とゆう女性はまだここにきてませんか。」
自分が死んだ原因となった後輩の生死を確認する。
今さら意味などないのかもしれない。ただ
確認せずにはいられなかった。
女神の目が細く興味が出来たように足が一歩こちらにまた進む
「....安心しろ貴様の言う女は私は見ていない」
そう言れ体を覆う緊張間が霧散する。
「お答えいただきありがとうございます」
唯一の心残りが解消されたことに安堵した。
そうかあの子は生きているのか。
「だが何故そんなことを気にする?貴様のことは、見た故に貴様の死に際も貴様の人生も知っている。分からんな貴様を殺した張本人のはずだろうあの女は」
確かにそうだ彼女は俺を殺そうとし学校に火をつけた
その事実は覆し用がないただ、
「彼女がやったことは確かに許されないことだとは思います。ただ彼女があんなことをする前に気づくことができなかった自分にも責任はあると思ってます。」
「甘いな。」
その少年の返答に対し吐き捨てる。
「その女がやったことは、貴様に対する裏切りだ。
どんな理由があろうとやつは嘘をつき助けて出そうとした貴様をその手にかけようとした。
どんな理由があっても神であったとしても
恨まれても仕方ない物だそれを貴様は許すか?
それでは、地獄の沙汰も浮かばれまい」
確かにそうかもしれないだけど一つ訂正しなければならない
「確かに私にも悪いところはあっただから彼女だけは悪いとゆうわけではないですが、
それで彼女が許されるわけじゃないと思います。だけど」
「救いたくなったか...貴様のような人間は何度も見た。誰かを救おうとその全てを失った者たちを何故貴様はそんな事が出来る?」
その質問への答えはもう自分の中で知っていた。
「最後に思い出したんです。自分は、夢を諦められなかった。母のように、もう自分の目の前で何かを失わけにはいかなかった。」
女神が先程まで俺に触れようとしていた。
手を戻し何かを思案するように自分の頬に触れ目を瞑る
そうして開いたかと思うと
「気が変わった。貴様自らの夢を叶える気はまだあるか?」
そう女神は信じられないことを言い放った。
「何を」
「貴様が生前叶えられなかった夢を叶えてやろうといっているのだ。見たからな知っている。夢だったのだろう英雄や勇者になるのが。どうする?」
確かに女神は言った勇者や英雄になれるとそう
彼がなれなかった夢をもう一度目指すことができるそれだけでは決まっていた。
「やります。」
女神は微笑み何もない空間に指を振ったかと思うと
そこに黒い門が現れ開く
「この先は貴様がいた世界とは違う名前は確か(サクリファス)そこで貴様にはある偉業を達成してもらう。
その世界に存在する魔王を倒しその世界を救えそれをすれば貴様のなりたいものにはなれるだろう。そうすれば貴様を我が僕部下に迎え貴様の願いをひとつ聞いてやろう」
「願いですか。」
「ああすぐに決める必要はない成し遂げた後また聞こう」
そう言い女神が手を振ると闇から扉が現れる。
「よしでは貴様にこの門から先に行く前に体や知識
祝福を授けてやろう勇者を目指すのであればやはり人間が良いかな」
女神が手を叩き手を広げると古めかしい巻物が出てくるそれを手渡され広げると
様々な種族とその世界に対する情報が事細かに記載してあった。
膨大すぎて流石に見切れないが女神様が言った通り
魔物や魔王勇者がいる世界らしい。
「この知識を貴様に流し込み言語歴史を知ってもらうそして体を作り私の祝福をひとつ授けてやる。」
そう言いながら先程俺を触ろうとしていた手とは逆の
右手を出し触れようとしてきた瞬間
大きな音と共に地面が揺れいや違うこの空間ごと大きく揺れ始める
「早いなもう気づかれたか」
女神は上を見上げそう呟くと先程まで女神の隣にあった門が少年の目の前に出現する。
「予定が変わった貴様を今すぐにあちらへ送る」
「な!」
急な展開に理解しきれず言われるがまま女神に手を掴まれる
「時間がない祝福をひとつだけ与えるなんとか生き、いや消滅しないよう励め」
そう不穏な言葉を残し門の中に投げ込まれる
そうして女神は少年がこの場を去ったことを確認し
指を鳴らして門を消滅させる
そしてこれから来る存在に対する対応を考えようとしたが、
黒い空が割れその状況を作り出した張本人が不躾にも入って来る
上を見ると
そこには、手が4本青い肌首には蛇が巻かれている
何よりも目を引くのは完成された肉体美と顔にある
第3の目その異様でありながらもその神の美しさは、
損なわれず神秘的でありながら全てを破壊する荒々しさを持った。神性シヴァが目の前に現れた。
シヴァは伊邪那美の目の前に凄まじい音を立て着地し
目の前の女神を睨みつける
対してその神の暴挙を受けながらも涼しい顔を崩さず
目の前の神の視線を無視して
指を振ったかと思うと現れた部下であろう骸骨たちに
命じ机と椅子を用意させそこに座りシヴァに向き直る。
「なんのようだ?」
伊邪那美がそう質問すると
シヴァが発する神気によって揺らぐそこだけ次元が歪んでいるかのような圧が発生した。
「なんのようだだと。イザナミおまえどうゆうつもりだ今までサクリファスに興味を持っていなかったお前がなぜ今更盟約を破ってまで人間を送る何を狙っている答えろ」
その問いには神にとっての最終通達答えをしくじれば
神といえどもただでは済まないそれにも関わらず
伊邪那美は、
「盟約?嗚呼神々が決めたあれかすまないな私は
あまり興味がなかった故すっかり忘れていたが
あったなそんな物」
歪みに収まっていた空間が割れるシヴァの怒りの呼応しその空間は破れていく
「ここで始める気か?幾ら神と言えど私の冥界で勝ち目があるとでも?」
シヴァの後ろには、シヴァの数倍の大きな骸骨が
突如出現するこの神格の影響を受けながら存在を保てているそれ自体が脅威的だが
シヴァが振り返りその骸骨に触れるそれだけで
その姿は霧散し破壊される
「有象無象ごときで止められるわけがないだろ。
冥界ごと破壊し尽くしてやるよ」
神が構え冥界の主の足元から死霊骸骨亡霊呪いが
次々に現れる。
どちらも譲らず神が一撃を繰り出す瞬間
「そこまで」
神々の戦いが始まろうとした瞬間
二柱の間に雷鳴と共に神が現れる
白い装束を身に纏いその肉体は、シヴァに引けを取らないほど屈強でそこに存在するだけであらゆる生物を威圧し震え上がらせるほどの存在感を放っており
その神の髪と髭は白くだが老いなどは一切感じないどころかその神の力強さを表している。
「なぜ止めるゼウス」
そうシヴァに問いかけられた神ゼウスは2人の神を眺め
「はぁ、お前達は何をしておるのだ。約束の時は近い
今更神々で争う気か?」
ため息を吐き如何にも億劫そうに二柱に問いかける。
その態度にどちらも苛立ちを覚えながらも二柱とも
神気を抑え戦闘体制を解除する。
「イザナミが、盟約に違反し人間を彼方の世界に送っていた。武力行使に対しては浅慮だったかもしれんが
少なくとも、この行為は他の神々にも伝え罰するべき
物だ」
「なるほどなぁ」
シヴァからの説明を聞きゼウスは伊邪那美の方を見て
「イザナミよ、さっきの事は事実か?」
「.....」
その問いに対し伊邪那美は答えないまるで今更伝えることなどないと示すように。
「イザナミ今ここで事情を話せこんな事で神がまた消えるなどという事はあってはならない」
シヴァが詰め寄り答えを待つだがそれでも伊邪那美は、口を開かない。
「良いだろう。だが一つ聞かせてもらうぞイザナミその行為は自身の願いを叶える物か?」
ゼウスがそう問うと伊邪那美は目を合わせるだけで
返答はない
「いいだろう、この件は不問とするそれで良いなシヴァ」
そう勝手な決定を下せされシヴァは目を見開き驚きを隠せない
「さっきのどこで不問にすることになる!?」
「まあまあ落ち着け」
「シヴァも言った通りこんな事で神が一柱消えることは今は許されないそれにのうイザナミは今まであちらの世界に人を送る権利があってもそれを譲り
今まで1人として送ってこなかった故に今回の一件はその分とゆうことでどうだ」
そう言われ
「いいだろう。だがこの一件はあちらの世界の均衡を崩しかねんものだ。もし何か問題が起きれば、自身で対応するいいな」
ため息を吐きながらも了承しこの場を去って行く
「ああ構わないとも」
ゼウスがそう返し手を振るとシヴァの気配は無くなったことを確認すると
伊邪那美の耳元まで近づくと
「相変わらずあやつの雰囲気とゆうか神気は怖いなぁ
破壊を司る神とゆうのは全員あんな感じなのかのう」
先程までの神々しい姿はなくなりその場に寝転ぶと
周りの女の姿をした幽霊に酒を貰いその場で酒盛りを始めようとする
その姿に顔を顰め
「話しは終わった立ち去れ」
と冷たくあしらう伊邪那美に不満げにしながらも
酒を担いで歩いて離れて行く
「ああそうだ何を企んでいるかは知らんが全力で励めよそうでないと神であってもどうなるかわからんからな」
そう笑いながら神はこの場を後にする
眷属達に去ったことを確認すると
「あの好々爺め」
と悪態をつく
先程まであった空間の歪みや雷の後は消え失せ
復元され痕跡は闇によって消滅する
それは人がいた痕跡であっても神にさえ気づかれないほどに
「これで跡は追えぬ筈、...契約は果たしたあとはあちら次第さて人間よ貴様は何を成し遂げる?」
神は微笑み先程まであった扉を見つめる
神が見つめ人が超える英雄譚その序章を今ここに記そう