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死想英雄譚〜死して始まる物語〜  作者: 亜化月
第一章 英雄への道
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想い出

学校から自転車を走らせる。この道は一年間通っている道の為慣れたように進んでいく道中の花屋により花束を買うそれをカゴに入れまた自転車を走らせ続けると目的地の病院が見えてきた。

駐輪場に自転車を置き花束を持って病院に入ると顔見知りのナースさんが立っていた。


「水橋さん」


そう呼びかけるとこちらを振り返り手を振りながら近いてくる。

こちらからも近づき水橋さんは


「こんにちは土屋くん今日も来てくれたのね。昨日と変わらず元気かな?」


笑顔で挨拶をしながら土屋の周りを一周しながら見つめると


「うんやっぱりいい体病気にはかかって無いみたいね」


「ええ元気にやらせて貰ってます。水橋さん今日妹は」


「今日は朝からお昼まで起きてたけれどお兄ちゃんが来るまで少し寝てる筈よ来たら起こしてと言われてたけどお兄ちゃんが起こしてあげた方がいいかもね」


そう言いながらこちらの肩を叩き花束を見て


「今日の為ににこれ買ってきたんでしょう?あの子の誕生日だもんね」


「ええそうさせてもらいますあとそれと今日父は?」


「朝早くに一度会いに来てたわ貴方もお父さんも体調に問題はないみたいだけどもう少し眠りなさい無理しちゃダメだからね」


「そうですね肝に命じて置きますありがとうございました。」


そう笑顔で水橋さんは釘を刺し去って行くそんなにわかりやすかったのかと反省しつつその場を後にする

少し歩き病室の扉の前に立ち扉を開けるとそこには

ベットで眠っている1人の少女がいた。

起こさないよう静かに病室に入り花束と鞄を置き近くにある椅子に腰掛け少女いや神楽の妹である土屋琴乃(つちやことの)

を見る顔色も悪くなく自分のようにクマもないようで安心する。こう見るとやはり琴乃は中学生ながらかなり長い黒髪と高めの身長だったため近所の人には、かなり大人びていて母親に似て綺麗な子だと言われている自分が父親似なので自分はそんなことを言われたことはないのでよく分からないが琴乃自身から自慢されていたことを前に言っていたがこの寝顔を見るとまだ年相応に幼くどちらかと言うと可愛らしい方だと自分は思ってしまうこれを琴乃に言うと拗ねてしまうので言えない事だが顔から視線を下へずらし


「ちょっとごめんな」


そう小さな声で言いながら掛け布団を捲り琴乃の足を見る近所の人に褒められて嬉しそうにしていた足が今の琴乃からは両方とも失われていた布団を元に戻し

手で目を覆う今の彼女を見ると鮮明に蘇るあの時の出来事が、

ちょうど一年前の今日家族で琴乃の誕生日を祝う為に

車で飲食店にいきその帰る途中だった。

父さんが運転席に座りその隣に母さんが助手席に座って後ろの席にいた琴乃に髪をいじられていた。


「琴乃どう?今いい感じかしら」


そう母が前を見たまま聞くと琴乃が答える


「ちょっと待ってまだ途中だからお母さんあんまり髪型変えたりしないからもう少し工夫したいの!」


そう言いながら手を伸ばし母の肩ほどまで伸びた髪をゆいながら隣にいる神楽にスマホを持たせその中の参考画像を見ながら仕上げていく


「お母さんたまにこうしてもすぐに戻しちゃうでしょ」


「まあだってそれは...お父さんが小さい頃褒めてくれた髪だものあまり変える気がないのよ」


その母の惚気に琴乃は微笑み


「わかった戻していいけど後で写真撮らせてすごく綺麗だから父さんも惚れ直すかもよ」


と父さんのことを見ながら言うと


「あらそれもそうかもね」


と笑いながら話している2人に父は赤信号で車が止まった所でハンドルを握りながら咳払いをし


「か神楽お前は今日もあそこに行くのか?」


そう明らかに話を逸らそうとしてこちらに聞いてくる

おそらく父が言っているのは神楽の日課のことだろう


「ああそうだね今日も後で走って行ってくるあんまり遅くまではしないつもりだから大丈夫だよ」


「そうかまあ小さい頃のように危ないことをしなければ構わん体を鍛えることはいいことだからな」


そんな会話をしながら車を走らせている父が交差点で青信号になったことを確認し車を走らせ交差点の途中でトラックが突っ込んできた。

ぶつかったのは助手席側衝撃で車がひしゃげ悲鳴をあげる。土屋が何が起きたのか理解した頃にはもう何もかもが遅かった。

妹を見ると苦しそうに呻き今にも泣き出しそうな顔をしながらもこちらを見て


「お兄ちゃん大丈夫?」


と心配している。その琴乃の足を見るとトラックに事故の衝撃で歪んだ車に潰されていた。

それでもこちらの

無事を喜ぶように微笑んで見せる琴乃を見て自分が何をしているのかと怒りが込み上げると同時に今自分に何ができるのかを考え行動する。


「父さん母さん大丈夫!?意識はある?!」


携帯を操作しながら父と母に呼びかけ確認する。


父は頭を窓に少しぶつけたのか頭から血を流し気絶していた大きな怪我はなさそうだがきちんと確認する必要がある。

その後母を見た。母はトラックに挟まれ大きな怪我をしておりその傷から血がとめどなく流れていた。


「お兄ちゃん?お母さんとお父さんは?」


「琴乃前は見るな」


琴乃が何かを察したように息を飲み頷くそれから神楽は携帯で救急車を呼んでいると母の方から微かに声が聞こえた。


「母さん?」


「みんな無事」


そう今にも消え入りそうな声で血を流しながらも話す母に近づき呼びかける。


「母さん大丈夫だ今救急車を呼んでるだからもう少し」


「そう神楽ありがとう貴方はやっぱり優しい子ね

...神楽後でみんなに伝えて」


「もう一緒にいられなくてごめんなさいこれからは

皆んなを助けてあげて」


「母さん?母さん!」


母はそこで意識を失い自分は母の最後の言葉を聞き

救急車が着くまで周りの人に呼びかけ家族とトラックの運転手の救命活動を行い。

家族と病院に同行した。

そしてその病院で母の死を改めて伝えられた。


父は頭をぶつけながらも後遺症はなかったが妹は足を失い無力感に苛まれていた神楽に病院にきた警察が話を聞きにきた。

何を聞かれたのか何を話したのか全てを覚えているわけではないがただ一つだけ


「トラックのあの人はどうなりましたか?」

警察の方はもとより誤魔化すつもりはなかったようで教えてくれた。


「亡くなったよ」


その答えにあまり驚きはなかった。その彼を助けようとしたのは自分でどんな最後だったかをみたのも自分だったから。だからこの質問で何かを知ろうとしたわけではない


「そうですか」


と力無く返す自分の姿をみて躊躇うような仕草をみながらも警察は言葉を続ける。


「君はあの状況で出来る限りのことをしたそれは間違いない君がいなければ被害はまだ出ていたかも知れない君がやった事は間違っていないそれだけは覚えておいてくれ」


その言葉だけが頭の中にこびりついていて、

その後父が目覚め母のことを聞き絶望感に打ちひしがれていたが神楽から母の最後の言葉を聞き母方の両親や親族に説明をし父は妹の手術代と生活費を稼ぐため職場に復帰した。

父は母を愛していたしとても大切に思っていたその母を亡くしながらも父は俺たち兄妹の前で気丈に振る舞い心配を掛けないよう


「生活のことは心配するな俺がなんとかするだからお前達は今まで通り自分達がしたい事を言え俺がその助けになってやる」


そう父は言っていたが

未だに俺は自分のあの時の無力を呪っているあの時警察の人は自分はできる限りのことをしたと言ったならば自分の力が足りなかったから母をみんなを助けられなかったのではないかと自分だけが過去に取り残されているような


「ウーンふわぁあれ今何時?」


いつの間にか目を覚まし目を擦りながら辺りを見渡す琴乃の姿が見えた。

思考を切り替え琴乃がこちらに気づくのを待つ。


「あれ?....お兄ちゃん?なんで....本当になんで?!

もう水橋さんにお兄ちゃんが来たら起こしてって言ってたのにー早く起きてたらこう笑顔で微笑みながら

いらっしゃいお兄さんみたいなのやってみたかったのに」


そんなよく分からない願望を目の前で叫ばれたが正直そんなことをやられても対応できる気がしないのでやめて欲しいそれに


「どうせ父さんが来た時も父さんに起こして貰うまで寝てたんだろ」


「まあそれはそうだけどと言うかさお兄ちゃんお父さんに言っておいてお父さんまだ私の子供だと思ってるみたいでさプレゼント熊のぬいぐるみだったんだよ!

何歳だと思ってるのさ」


そう腕を組みぷんぷんと怒っているように見える琴乃だが


「何歳ってまだ中学生だろお前それにそう言いながら随分気に入ってるみたいじゃん」


視線を向けると先程まで見えなかった手の大きさほどの熊のぬいぐるみが琴乃の近くに置かれている

おそらく


「さっきまでそれ持ちながら寝てたんだろ?」


そう指摘すると琴乃は恥ずかしそうに顔を赤らめながらも頷いた。


「まあ俺からもプレゼントがあるからこの花お待ちかねの新作だ。」


鞄からパソコンを取り出し琴乃に差し出すと目を輝かせながらパソコンを受け取り神楽が作ってきた

ゲームのオープンニング画面を見ると歓声をあげた。


「やったー今回はどんなゲーム?」


「驚け今回も王道のRPGだよ」


「お兄ちゃん好きだもんねー」


「お前も好きだろ俺はお前の影響でゲームを始めたんだから」


パソコンにみながらもっと近づくように促され琴乃と共にパソコンを見ながらゲームを遊ぶ時にアドバイスをしどんな意図のセリフなのかを説明し琴乃のプレイに感嘆しながらゲームをクリアしていくそうして

時間がたち三つ目のダンジョンに入ろうとしているところで、時計を見ると2時間もの時間が経過していた。


「そろそろ時間だここら辺で終わっておけ」


その提案にまだやり足りないのか琴乃は頬を膨らませ


「えーもう?」


と抗議するようにパソコンを神楽の手から遠ざける


「また明日持って来てやるから今日はこんくらいにしとけ」


「....そう」


琴乃は改めて体の向きを帰えろうとしている神楽に向け少し悩むような仕草をしながらも切り出した。


「お兄ちゃん今日もバイトに行くの?」


神楽の手が一瞬止まり琴乃を見る


「誰に聞いた?」


「お父さんからお前の方から聞いてくれないかって言われてお父さんが聞いてもはぐらかすからって」


「隠してたのは、悪かったけど俺も高校生だ。バイトの一つや二つやるくらい普通だろ」


「お兄ちゃんは毎日夜遅くまでバイトをして私に会いに来てそれに朝早くにお母さんのお墓参りに行ってるんでしょ?」


「別にそれは」


「そう悪い事じゃない来てくれるのはとっても嬉しいでもねお兄ちゃんもお父さんも私のせいでやりたいことが出来てないんじゃないじゃないの?」


俯きそんな不安を語った琴乃に駆け寄り


「そんな訳あるか!」


琴乃の不安を否定する


「俺も父さんもやりたい事をやるべきことをして今ここにいる琴乃のせいでなんて物はない俺たちは琴乃のお陰で今も過ごせてるそれを忘れないでくれ」


力強く琴乃の目を見て伝えるその言葉は彼にとって紛れもない本心だったから


「本当?私は2人の重荷になってない?」


本心を伝えても彼女の顔にはまだ陰りが見える

それでも少しは安心してくれたようだ。


「勿論だそんなことは絶対にない、今日はこのパソコンは置いて行く無理しない程度に楽しんでくれ」


そう言いながら琴乃にパソコンを手渡し部屋を後にする。神楽の姿が見えなくなった後琴乃が小さく呟いた。


「お兄ちゃんはもう私との夢を叶えてくれないの?」


その言葉はもう二度と届かないまま




自転車に乗り今日のバイト先へと向かう途中妹との会話が頭の中から離れない琴乃があそこまで思い詰めているとは思っていなかった。父にも心配しているのだろう父は、自分達になりたいようになってくれと言ってくれている。そのために父は身を粉にして働いて

出来れば俺には、自由にしていて欲しいのだろう。

その気持ちはわかるただあの事故のことを考えるとどうしても何もせずにはいられなかった。



「今更俺が夢を叶える事を誰が許してくれるのだろうか」


そんな言葉が口からこぼれ落ち過去の夢を思い出している時

突然電話がなった。

こんな時間に誰がと思いながら自転車を止めて画面を確認すると

先程まで一緒に部室にいた笏賀結衣花(つがゆいか)

からの電話だった。


「こんな時間に珍しいな?はいもしもし」


不思議に思いながら自転車を止め電話に出ると


「センパイ助けて!」


とゆう笏賀ちゃんの叫び声によって状況が変わった


「どうした!何があった今どこにいる」

「今学校の部室にいて火事が!」


衝撃を受けると同時に今自分にできることを考える


「わかった。今すぐに向かう待ってろ!」


そういうと何かが崩れる音と


「..ありがとうセンパイ」


とゆう言葉と共に電話が切れる


「おい笏賀ちゃん!どうした!くっそ」


急いで自転車に跨り学校に向かう。

そうして学校に着いた頃には今まで3年間過ごしてきた校舎が燃えている光景だった。

近くには、消防士がもうすでににきており、消火活動をしていた。

先生方も何人かおり生徒数人を集め避難しているようだった。

だがその中に笏賀結衣花は見当たらない。

その中で1人の先生に声をかける。


「先生!2年の笏賀結衣花はどこにいるかしりませんか!?」

「土屋くんかいや笏賀さんは私はみていないが、まさか!」

「ええまだ中にいるかもしれないんです!」

「そんな..わかった他の先生に確認をとりつつ消防士の方々に伝えてくる少し待っていなさい」


と言い先生は消防士に事情を伝えるために走って行く。

他に何かできる事ははないか考えるが、今自分にできることは何もないとゆう現実に心底腹が立つ。

後輩が今もまだ苦しんでいるかもしれないそんな時に

そんな時スマホに一つの通知音がなる確認すると

件名もない短文だったが


「助けて」

とゆう笏賀ちゃんからの

メールだった。

何故メールなのか電話ができない状態なのか今どこにいるのかそんな考えは思考の隅に追いやる。

今そんなことはどうでもいいなんの為にここにきたんだと自分を叱咤する。


「すいません先生!」


近くにいた先生にメモを渡し大きな声で謝りながら

少年は、近くにあった水道で頭から水を被り

燃え盛る校舎へと進む。

そうして進んだ青年を迎えたのは燃え盛る炎と思い出の校舎が燃えて行く光景だった。

少年は出入り口から入り炎を避け階段に駆け出す。

確信はないだがもし彼女がいるとしたら

あの部室だろうと疑うことなく階段を駆け上り

部室のある三階に到達する。

「いるか!笏賀!」

声を張り上げてドアを開けるそうして見えた光景は

少年の想定とは違う物だった。

燃え盛る部室と共にいる筈の後輩はおらず

居たのは黒いローブを羽織った何者かだった。

顔には白い仮面を被っており確認できない、

わかることは俺より少し背が低いとゆうことぐらいだろうか。


「お前は誰だ。」


その風貌と雰囲気に少し睨みながら聞く

もしかしたら逃げ遅れた生徒の可能性もあっただが

明らかにこいつは違う生徒とゆうには怪しすぎるそして逃げ遅れたとしたらこの火事の中で落ち着きすぎている

そうして向き合うこと数秒奴が動いたローブから手をだしその手には周りの火に照らされたナイフだった。

それが見えた瞬間血の気が引き反射的に臨戦体制に入る

先程の質問の代わりに帰ってきたのはナイフを振りかぶっての攻撃それをその場から大きく下がることで回避しながら近くの椅子を奴に投げつける。

その投擲を奴は避けることなく椅子を両断することで解決して見せた。


「な!?」


人間離れした芸当に驚く暇もなく奴が床に凹みができるほどの力で地面を蹴り急接近する

人間離れした力に驚きつつも刃をよけ逸らし続ける事で対処する確かに掠るだけで骨が軋むような衝撃を受けるほどの力だが動きが拙くまるでチグハグな印象を受けた。

奴の攻撃は避けられる

問題は奴がいる限り部室に居るはずの笏賀を助けることができないとゆうこと


「悪いがその部屋に用がある通してもらうからな」


そう言って奴を睨みつけ今も襲いかかって来る奴を倒す方法を考えていると


「助けて」


そう確かに部室の奥から笏賀の声が聞こえた。

それが聞こえた瞬間

奴の横薙ぎの攻撃を躱すように姿勢を下にしたまま

すれ違い様に足元を手で引っ掛け転ばせその勢いのまま部室に入り先程助けを求めた後輩を探すが

見つからない。

ありえないこの部活は他の教室と比べ狭く人を隠れる

場所はないはずだなのに

そうしている間にも奴は起き上がって来る

先程の声の出所を探していると


「助けて」


また声が聞こえた確かにその位置を特定し

窓にかかっているカーテンを開けるだがいる筈の少女は見つからず

あったのは開け放たれた窓とそこに立て掛けられた


「ボイスレコーダー..」


想像していなかった光景に呆気に取られ一瞬背後への反応が遅れる振り返ると奴が迫っておりそのまま

押し出そうとしてくる俺の後ろにある空いている窓に

相手の狙いを理解し窓枠を手で掴み足で体制を固定することでなんとか落ちずにすんだだが

いまだに今もこの謎の人物は俺の体を押し力を緩めれば背中から落ち一つの死体が出来上がることだろう

そんな絶対絶命のこの状況で一つ確かめなければいけないことが出来た。

そのために体を支えている片方の手を窓枠から外し

目の前の人物の顔に近づける目の前の人物は抵抗せずそれを受け入れ

つけている仮面を外すと

そこには俺が助けを求めていたはずの笏賀結衣花の顔があった


「やっぱり笏賀か」


そう言うととした笏賀穏やかに微笑みながら


「あれセンパイ気づいてたんですか?」


と不思議そうに聞いてくる

「気づいてなかったいや違うな可能性はあった見て見ぬ振りをしてただけなのかもしれないが」


一番外れて欲しかった可能性だったが今無常にも結果として目の前にいることが真実だ受け入れようただ気になるのは


「なぜこんなことを?何か俺はお前に酷いことしたなら謝り償いたい頼むこのままだと俺だけじゃない笏賀も死ぬ事になる」


その言葉を聞き少女は目を見開き驚きの表情を浮かべ


「こんな状況になっても私の心配をしてくれるんですか」


呆れるようなだがどこか嬉しいそうな声で笏賀は呟き


「なぜこんなことをですか...それは、

私が先輩の夢を取り戻しこの世界を救う為に私は先輩を殺さなきゃいけない。」


そう目の前の少女は宣言して見せた。


「何を言って、俺の夢?世界を救う?」


その言葉の意味を真意を探ろうとするが分からない頭の中がパンクしそうになる。

だが目の前の笏賀の目が声がそれが本気で言っていると言うことを理解させ神楽の目を逃さなかった。


「...本気なんだな?そうかまだ理解は出来てないでもお前が俺を殺すならそんなことは絶対にさせないそれに俺の夢はもう」


「諦めたって言うんですか?あの家族との事故があって先輩はもう目指す資格がないと思ってしまったんですか?これに書いてあることは全部嘘だったんですか?」


笏賀が懐から出したそれは、くたびれた黒いノート

“英雄になるために”そう子供の字で書かれた。

土屋神楽の夢の源泉、

それは、誰にでもあるきっかけで、ただその少年にとっては、自分の人生の大きな意味であり目標だった。

ある一つの英雄の物語、ある日使命を託され、

仲間を集め、力を蓄え、世界を救うそんな英雄譚

少年が胸を焼かれその存在のようになるために、

様々な方法や伝承英雄譚を書き記した物がそのノート


それを見るだけで今は心が悲鳴をあげる体を打が打ちのめされ心臓が止まりそうになる。


「嗚呼、確かにそれは、俺が英雄になる為に書いた物だ。小さい頃にみた夢を叶える為に書いた物でそのノートに書いてある事は全て本心で目指すべき夢の形だ。」


「ならなぜ!貴女は!」


「俺がその夢に相応しくなかったからだ!」


叫ぶ己の心の丈をぶちまけるように謝るように一言一言で自分の心を傷つけながら、


「その本に書いてあることが間違いな訳じゃない今の現代に魔法や魔物伝説の力なんて物はなく過去にあったのかもしれない夢の存在だ。それを手に入れる方法はなかったしそれでもいいと思っていた。

現代にはそれに頼らなくても多くの人を救う方法があったから未来を守る力があったから今は出来ずとも力をつけ体を鍛え医術や生き残る術それを身につければ先人達が残してくれた物で人を守れると思ってきたでも」


今でも夢にみる、母の言葉を父の涙を琴乃の傷を

トラックに乗っていた男の顔が頭から離れない。


「俺のやったことは間違いじゃなかったらしい出来るだけの事をやったらしいでも俺は救うことが出来なかった。守る事が出来なかった防ぐことが出来なかった。あの時俺は、全てを尽くしても大切な人を守れなかった」


少年は過去に囚われているわけではない少年は、あの時自分でも、出来うる限りのことを全てしたことは理解している。

故にだからこそ


「俺は、俺の全てを使ったとしても大切な人を守る事が出来なかった。だから俺はもう迷わない大切な人を守るために俺を助けてくれた琴乃が笑って歩けるような未来を父さんと一緒に叶えたい」


それが今の彼にとっての願い自らの限界を知ってそれでも救いたい人がいたからこそ彼は、妹を救いたいと

願っているのだ。


その少年の独白を


「じゃあなんで私を助けに来てくれたんですか?」


少女は涙を流しながら、少年に問う。


「センパイはすごく優しくてどんな人でも助けようとする。そうゆう人だって私は知っています。センパイが誰かのために頑張れる人だって知ってます。

だってセンパイは、こんな状況でも私を助けようとしてる。」


少女の涙が、頬を伝い少年の顔へと落ちる。

それはまるで水面に落ちる一雫のように心を揺らがせ

想いを溢れさせる。


「諦めきれないんでしょう!?諦められないんでしょう!?今でもあなたは英雄の夢を手放してないんでしょう?」


その言葉は津波のごとく彼の反論を飲み込み少年を圧倒する感情の奔流


「妹さんのことは私が救ってみせます。だからもう一度センパイ英雄になって見せてください」


救うその言葉


「もういいわかった。わかったからもう泣くな」


笏賀の顔に手を伸ばし涙を手で拭う。


「笏賀、確かに俺は諦め切れないみたいだ。まだわからない事し納得出来ないことはある。だから一つお願いがある。こちらをみてもう一度誓ってくれ妹を助けられるのか俺が死ぬ事でそれを叶えられるのか?」


「ええ必ず」


その涙を堪えながらも力強く頷いた彼女に少年は安心体を支えていた力を抜く。

その少年により寄り添うように力を抜き共に落ちようとしていた後輩を窓から放り出した。


「どうして」


抵抗も許されず落ちて行き少女はそのまま下に用意されていた。

柔らかい物に落ちるような音と共に困惑しながら周りに集まっていた生徒教師や数名の消防士に駆け寄られ

無事を確かめられている。

その光景を部室に戻り上から眺める神楽にスマホから

連絡がかかってくる。

先ほど渡したメモに書いてあった連絡先に先生がかけて来ているのだろう


「先生急のお願いだったのに聞いてくれてありがとうございました。」


電話には出られないため伝えられない言葉をその場で声に出す。

先生に渡した紙に書かれているお願いを叶え

笏賀が落ちるまでに間に合わせたのだから。

あれが無ければ下に落ちた。彼女を助けることは難しかっただろう。


「...まさか俺が自殺するなんて思ってもなかったな」


燃え盛る教室を見渡しながら笏賀から奪った短刀が握る。

剣には、見たこともないような文字が彫ってありどこか禍々しい雰囲気を醸し出している。


「この剣と笏賀のあの力何がどうなってるんだ。」


なぜ笏賀がこんな事に巻き込まれ選ばれたのかはわからないただ


「俺は笏賀に死んで欲しくないし、人を殺させたくないんだよ」


火は勢いをまし酸素を意識を奪って行くもう時間はない意を決して震える手で短剣を振りかぶり自らの心臓に突き刺した。

鋭い痛みとさした場所を起点に熱く感じるそこから流れてくる血をみていると

家族のことを思い出した。

母はどれだけあの時苦しかったのだろうか。

父は朦朧とした意識の中何を考えていたのだろうか

そして琴乃はどれだけ不安で苦しかったのだろうか。

後悔はある。未練もあるただこれで琴乃を救うことが出来るならそうならば満足なのだと少年は瞳を閉じ家族の顔を思い浮かべてながら


「約束守れなくてごめん」


その言葉を言い残し事切れた
















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