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死想英雄譚〜死して始まる物語〜  作者: 亜化月
第一章 英雄への道
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契約

それは、少し昔の記憶、

ありふれた光景で、微笑ましい兄妹の日常。


兄がリビングソファに座り本を読み。妹が隣に座りゲームを楽しんでいる。

ふと妹の手が止まり、兄へと顔を向け質問する。


「ねえお兄ちゃん。」


「ん?どうした?」


妹の言葉に本を読む手を止め、妹へが指刺したゲーム機へと目を向ける。


「なんでゲームの勇者は、少ない仲間で魔王を倒しにいくの?皆んなで、王様にお願いして協力してもらって一緒に戦いに行ったりしないの?」


その質問に、兄は困り数秒止まってしまう。


「そうだなぁ...凄くつまらない答えかもしれないけど、あるとしたら全面戦争をしない為とかかなぁ」


「全面戦争?」


妹が兄の言った言葉の意味を考えるが、

よく理解が出来なかったのか、首を傾げてしまう。


「まあ、もし王様が勇者に仲間をたくさんつけたら魔王も、その分自分の仲間を集めて戦いに来るだろう。

だって人数がいるって事はそれだけ目立つし

戦力を集めてるって事だから」


そうなればもう少数での戦いでは終われない。

勇者に預けた人数が多ければ多いほどそうなってしまう、あとはもうただの戦争だ。どちらに勝機があるかなんてそんなもの勇者も何も関係がない。

力が強い方が勝つ単純な話になってしまう。


「そうならない為の少数、精鋭の勇者パーティ

魔王が兵を向かわせない数での各個撃破。

戦力を削って。魔王一人と戦えるように、

まあ難しいだろうけど」


そう、それは難しい。何より前提として人間側に魔王軍と拮抗もしくは少なくとも抵抗出来るだけの戦力が必要だし。

各個撃破と言ってもどんどんと仲間がやられていけば、流石に魔王も備えるだろう。

そんな事は勇者を送り出す王様もわかっているはず。

ならば、


「魔王が備えることがわかっていてもそれでも、

少人数で送り出すしかないほど追い詰められていたか、もしくは」


そこで気付く自分一人で考え過ぎていた。慌てて妹の方を向き。


「ごめん。そうゆう話じゃ無いよなちょっとつまんない方に考えてた。」


妹に向き直り謝罪する。

その兄の姿に気にしないでいいとばかりに手を振り


「大丈夫だよお兄ちゃん。凄く面白い話しだったよ。」


そう言うと妹はゲームをまた少し触り、また手を止め手のひらに顎をつきウーンウーンと唸り始める。

こうゆう時の妹は、いつも


「何か思いついたのか?」


「うん。でも」


「聞かせてくれ」


「....もしかしたら勇者が、これ以上誰も巻き込みたくなくて、王様から断ったりしたのかなって。

だってお兄ちゃんの言う通り。戦争になったら色んな人が傷つくでしょ。だからでもこれは、勇者のパーティにも言えちゃうの」


「ん?どうゆう」


「だってそれだと仲間も勇者は本当なら戦わせたく無いってことにならない?一番強いのは勇者なんだから、それに王様の兵隊の人のことも信用してないことになっちゃう。そんなこと」


妹は口籠もりこれ以上この日にその話題が出る事は無かった。


何故今こんなことを思い出したのか。

疑問に思ったからだろう。何故フェリシアは一人で森に来たのか。それが頭の中でしこりのように残り続けている。


意識が覚醒し洞窟の暗い中で目が開く。

どのくらい気を失っていたのだろう。

外が光が入って来ないほど暗い。今は夜だろうか。

少し様子をみようと立ち上がる為足を動かした時気づいた。

右足の痛みが無い。視線を向けると深く傷ついていた筈の足が、治っている。同様に右手そして穴を開けられていた。胸の傷が塞がっていた。

まるで、あの出来事が夢だったかのように、


「いや違う、傷はないけど夢なんかじゃ無い。フェリシアの体には、彼女の魂はもうこの体にない。」


神楽にはわかる。あの光景も誓いも確かにあったものだ。なら傷は、そう考えていた時気づいた。


「静かすぎる。」


外からまるで音がしない風の音も、木が揺れる音も、

この洞窟で声を出しても、本来する筈の反響音すらしない。

まるで、ここだけの隔絶されているような。


「漸く、気がついたか。」


背後から聞こえる声に、振り返る。

そこには、神楽をこの世界に連れてきた。

神、伊邪那美神イザナミがそこに立っていた。


「神様...」


予想外のことに思考が一瞬止まる。

何故ここにいるのか、この空間は、傷は、そんなことを考えている神楽を気に留めず、伊邪那美神イザナミは口を開き話し出す。


「貴様に渡し損ねたものを授けにきた。」


「...渡し損ねたもの?」


「加護のことだ。本来この世界に送る前に、渡す筈だった物。あとやるべき事が二つそれが、終われば私は去る。」


その女神の言葉に、ある考えが頭の中を過ぎる。だが可能なのか。いや気にしている暇はない。

今自分にできる事を、


「何をしている。」


女神が神楽の行動に、動きをとめ

手を地面につき頭を下げる神楽を見る。


「加護はいりません。ただその代わり、魔王を倒した時に叶えられる願いを二つにしてはいただけないでしょうか。」


そう女神に提案を持ちかけた。


「ほう、叶える願いをか。随分と見違えたものだ。初めて貴様にその話しをした時、あまり興味が無いように見えたがな」


神楽を見つめ数秒値踏みをするように見透かすように

神楽の真意を探る。


「面を上げろ」


神の言葉に神楽は、顔をあげ目の前の神と目を合わせる。


「貴様の望みは、その体の持ち主の命か?」


その言葉に魂が震える。この神に隠し事はできない。いや元より、隠す気など無かっただがそれ以上のものをこの女神は見ているそう感じた。


「いや二つと言ったらな。ならば、貴様の母の命もか

なるほど、だが二つでは足りんのではないか?」


「貴様の妹はどうする」


その事は、神楽のにとっても大きな事で、元の世界で何よりも救いたいと願った。存在だが

その女神から問いの答えは自分の中でもう出ている。


「それは笏賀に、託しました。俺は、後輩の最後の言葉を信じているので。」


「なるほどな、随分と自分を殺す原因となった者を信用しているらしい。」


女神は、空中に現れた。古い紙を取り出しそれを指で触れ目を通し、頷く。


「問題はない。確かに出来るだろう。

だが一つの願いで二人の命でなく、一人ずつか、精一杯のけじめのつもりのなのか、もう二度と自身の目の前で大切な者を死なせないと言う誓いのつもりなのか。貴様がそれがどれだけ困難な事かよく知っているだろうに」


神は嘆息し目の前の人間の願いを受け入れる。


「不器用なものだ。まあこれならば、二つの願いに増やした事を、他の神に悟られる事もないだろう。」


女神が手にしている古い紙が輝き二つに割れ消える。


「契約は成った。」


「さてあと二つ。肉体を与えるか、だがこれは貴様はもうその肉体がある。ただ貴様がどう動くか知らないが、その体の顔と声は変えるべきだろう。」


確かに、このフェリシアのまま動くことになればそれだけで様々な問題が起こる。フェリシアの体を変える事は抵抗はあるが、


「気にする必要はない。幻術のようなものだ。

形を変える訳ではない。もし見破れる物がいるとすれば、私と同格、この世界では、()だけだろう。」


女神の手が、顔と髪に触れ少しの魔力が流され手が離れる。


「あーー、ん?」


声を出すと聞き覚えのある声に驚く。

女神が手を振いそこに大きな鏡が現れ、顔を見ると

そこにはよく見慣れた。神楽の妹である。

土屋琴乃(土屋ことの)の顔によく似ていた。

目は元のフェリシアと同じ

髪色は、黒ではなくグレーになっているが確かにそう間違いない。


「貴様の魂に、よく似た人間を真似た。問題はないだろう。」


そう言う女神、に戸惑いながらも頷く。

確かにそれならば妹によく似る事も納得はし難いが、理解は出来る。


「さて最後は、知識だな。」


再び女神に手が近づき、神楽の頭に触れる。

女神の指先が光り神楽へと言葉、知識、過去が頭の中に流れてくる。

一度に詰め込まれた。大量の情報をフェリシアやコンバルとの記憶と照合しゆっくりと咀嚼し頭の中を整理して行く。

その姿を女神は見届け、もう用は済んだと腕を振い洞窟が光を取り戻す。

神が去り元の洞窟へと戻って行くその時、


「時間はまだある。せいぜい励むがいい」


その言葉を残し女神は闇の中に消えていった。






これで第一章が終了となります。ここまで見てくださりありがとうございます。

これからも書いていきたいと思っています。よろしくお願いします。

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