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死想英雄譚〜死して始まる物語〜  作者: 亜化月
第一章 英雄への道
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少女の願い

洞窟へフェリシアを抱え逃げ込む。だが油断は出来ない。

あの魔王は、地形に干渉出来る。洞窟の入り口を破壊したがすぐに追ってくる。

どうにかここから逃げ出す手口を考えなければ、

この洞窟はあの入り口以外に外に出る場所は無い。故に穴を開けるか?この洞窟はそれほどの強度を持っているか?もしくはいや、その前にフェリシアの容体は、

抱えたフェリシアを一時的に地面へ降ろし傷口である胸元を確認する。


「これは..」


その傷は酷いものだった。体が貫かれ臓器を深く傷つけたその一撃によって傷口から向こう側の景色が見える。

心臓の大部分が損傷し今も意識がある事自体がありえない程に、

その傷からフェリシアの体を這うように身体全体に広がる鎖が見える。

その鎖は禍々しい魔力を発しながら今も勇者の魔力を奪い続けている。

だが今これを消す訳にはいけなかった。

この鎖と禍々しい魔力こそが今も勇者が意識を保てている。要因なのだと理解できたから。

傷口を塞ぎ出血を止めその上心臓の代わりを果たすように脈打ち血液を回している。

まるでフェリシアを生き長らえさせるように。

フェリシアを助ける為には、この呪いを維持しつつこの場から脱出しこの傷を治せる人物を探すそれが必要だった。

その手立てを考えている時


「カグラくん...わたしの剣を..とって来てくれない?」


その言葉が神楽の耳を打った。

息も絶え絶えながら放ったその言葉によって気付く。

この洞窟を入ったあとフェリシアは剣を入り口の中に落としてしまっていたのだと。

辺りを見渡し入り口の近くにあった剣を見つける。

勇者の手から離れその光を失っている剣を持ち上げ勇者の手に握らせた。

それだけで剣は光を取り戻し魔力が宿る。

勇者は、その剣を数秒眺め覚悟を決めたように

その剣を握り自らの傷口に突き立てた。


「何を!」


その行動に神楽は驚愕しその行動をやめさせようとするだがもう遅い。

傷口から伸びていた鎖は消え失せ傷口からは、時が動き出したように血が流れ出る。

鎖によって生かされていた彼女は自らその鎖を断ち切った。呪いは完全に消失したわけでない心臓を動かそうと未だ脈打っているだが、魔力を生み出していた心臓を破壊され魔力を吸うことはなくなり徐々に弱くなっていくこのままでは、フェリシアは、

それでも神楽は、フェリシアを諦めない。

傷口を確認し流れる血をポルターガイストで止め有り合わせの物で傷口を防ごうと動くだが


「止まらない」


頭では理解している。うるさい。このままでは、黙ってろ。この少女は、認めない。助からない事を。


「何かある筈だ。考えろ考えろ」


今まで見た書物、映像、記憶をあさり思考する。

そこで少年が辿りついたのは、


「フェリシアさん少し待てますか。すぐにあの肉を魔王からなんとかして奪って来ます。」


魔王が持っていた物を思い出した。どうにかして奪うその為にどうやって。

そうして洞窟の外へと向かう少年を


「待ってカグラくんもういいの」


その言葉に、振り返って見えた。勇者の表情に

自分の顔が歪む認めたく無いそう思っても彼女は自らの命をもう諦めているのだとそう理解した。


「どうして」


勇者に問うその問いがなんの意味もないとわかっていても


「...あの鎖はわたしのまりょくを...奪って捕えるためのもの。あのままだったらわたしは...死ぬこともできずにとらえられていた。それはだめ、それではつぎの勇者がうまれないまま人々はちからを...うしなうことになる。」


彼女から出る言葉はまるで自らを道具にように軽く捨てるように、自身のことを全く考えていないそう感じた。


「カグラくんそんなかおをしないでお願い。」


自分が今どんな顔をしているのかカグラにはわからいきっと酷い表情をしているのだろう、


「こっちに来ておねがい」


彼女に言われ近づく彼女の手が神楽の顔に触る。


「わたしのせいで...そんな顔をさせてごめんなさいでもおねがいわたしはだれかがそんな顔をさせない為に...勇者になったのだからおねがい」


彼女の言葉に自分がどれだけ酷い表情をしていたのか

悔いがあるような今にも泣きそうなそんな顔を自分はしていたのだろうか。


「よし!!」


顔を両手で叩き彼女に笑顔を見せる。やめてほしいとフェリシアが言ったのだから、表情を直しフェリシアを見る。


「それならフェリシアさん、あなたもそんな顔をしないでください。」


フェリシアのお願いを叶えたのだ次はこちらが願ってもいいだろう。

その神楽からのおねがいにフェリシアは気づいていなかったのか自身の顔を手で触れ確かめようとする。


「全てを諦めたような受け入れたみたいなそんな顔をしないでください。」


まるで最後に母が見せたようなその表情を彼はもう見たく無かった。


「俺にもう出来ることはありませんか?なんでもいいただ俺は貴女がしたいこと知りたい。」


勇者としての彼女ではなくフェリシアに何かが出来ないかそう彼女に問う。

その言葉に戸惑うような迷うような数秒のあとフェリシアは口を開いた。


「...約束覚えてる?剣も鎧もあなたを...つれだすこともできなかったけど、わたしにあなたのお話を聞かせてくれない?」


「ええ、もちろん」


話をした。たわいの無い話を、好きな事を、家族の話を、元いた世界の話を、夢の話を、英雄の話を、

辿々しくもしっかりと伝わるように、

フェリシアは本当に楽しそうに笑いながら頷きながら話を聞いていた。


「その時妹が、...フェリシアさん」


フェリシアの顔を見る彼女は本当に楽しそうに笑いながら瞳から涙を流していた。


「...あれなんで?そんないや...ちがうの本当にいいおはなしで、でもどうしてだろう..涙がとまらないの」


手で涙をぬぐいそれを止めようとしても次々と溢れ出す。隠していた気持ちが止めどなく溢れるように、


「フェリシアさん貴女の話を聞かせてくれませんか?」


「...わたしはね、おはなやさんになりたかったの」


「ええ」


「たびの途中に見つけた。はなをそのきれいな、はなをだれかにみせてあげたかったの。」


「ええ」


「友達や家族といっしょに...だれかをえがおにできるようなそんな、はなをとどけたかった。」


涙は止まらないそれでも話す彼女は一人の少女として

目の前の少年に話続けふと言葉を止め。


「カグラくん...わたしの英雄になってくれませんか」


そう彼女は少年に助けを求めた。


「わたしは、とどかなかったたどり着けなかった。

でも貴方なら...できるようなきがするのやさしいあなたなら、わたしができなかったことを成し遂げられるそうおもうの。」


フェリシアは神楽の手を取り頭を下げ頼む。


「どうかわたしの体をつれていって。そしてわたしが大切に思っていたひとに、わたしのことばをとどけてくれませんか?」


弱々しく神楽の手を握るフェリシアの手を両手で包むように握る。彼女に頭を下げた彼女られるよう目線を合わせ力強く。


「ええ、伝えます。聞かせてください貴女の言葉を」


フェリシアの言葉を聞く大切な人に心を込めて一言ずつ心に留めるように、彼女が声を出さなくなるまで。


フェリシアの体に神楽が入っていく記憶と感情が流れ込んでくる。体を動かし剣を取り誓う。


「フェリシア・マーラ俺は貴女の想いを継ぎ絶対に貴女を救って見せる。」


洞窟の中一人の勇者である少女を救う英雄がここに誕生した。








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