表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/35

第七話

「伊藤、ちょっといいか」


 ある日の休み時間、汐野が声をかけてきた。ひとけのない図書室の廊下まで一定の距離を開けて歩く。


「あのさ、ゆり、俺のこと何か言ってない?」


 汐野は少し申し訳無さそうな声で聞いてきた。


「いや、ゆりとケンカっていうか、ちょっとあって……」



「別に、ゆりからはちょっとケンカしたってきいたけど」


 今度は私が汐野に言わなければと思った。

 

「ゆりはさ、汐野と大和の仲がいいのは別に気にしないタイプだと思う。でも、大和は汐野に依存しているからさ、ゆりに取られたくない思いが強くて、ゆりを無視したりしていたこと、汐野は知ってたの?」

 

「それは……」


 汐野は、大きなため息をついた。心当たりはあるような雰囲気だった。


「あいつ、大和の家、ちょっとごたごたした時期があって、そこらへんからあいつひねくれちゃってんだよな。だからクラスで一時期もめたことあっただろ?っておぼえてないか。でも、俺は友達だと思ってるし、気にしないで接してたつもりなんだけど」


「ゆりも、最初は大和のことが好きだったのかも知れないけど、今は俺と付き合ってるし、大和のことは俺の友達ってことで、一緒にいてくれてると思っていたんだ。だから、あんな言い方されて俺もカチンときて。でもゆりが無視されてたって言われると、たしかにそうなのかもしれないな」


「そう、ゆりも反省してたけど、私は無視するほうがよくないと思う。でもそんな簡単な話じゃないのよね。なんか、いろいろうまくいかないものね」


「そうだな」


 汐野と私は空を見上げた。神様は悩みなんてないのよ、といわれているくらい空は青かった。突然、汐野が話を変えた。


「なあ、お前さ、好きなやつとかいないのか?」


「なんで私の話になるのよ。別にいるわけ……ないわけでもないかも」


「あの例の先輩か?」


「高木先輩ね。話していて楽しいのは確かだけど、うーん、どうだろう。私はゆりとは違って恋愛音痴だからさ、汐野が期待するような話はできないと思う」


 私はスマホをとりだす。ゆりにいまどこ?と短くLINEをした。汐野と仲直りするにはよいタイミングだと思った。



「汐、浮気してんじゃねーよ」


 いきなり背後から怒ったような低い声がした。大和だった。


「大和、こいつは違うから」


「へぇ、それにしては楽しそうだったじゃん」


「お前な……いいかげんにしろよ、ゆりのことだって。俺が気に入らないなら俺に言えよ。ゆりや伊藤にあたるのはやめろ」


「なんだよ、それ……別に俺は」



「ふたりとも、もうやめたほうがいいよ。ゆりにLINEしたから、汐野、仲直りしなよ。私は帰るね。それじゃ」


「おう」


 汐野は返事をしてくれたが大和には何も触れずにその場を立ち去った。やっぱり恋愛って私には難しいと感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ