第三十四話
とある喫茶店にて。
「何にする?」
「えー、どうしようかな」
メニューを眺めながら楽しそうに話すカップルがいた。
「アイスココアにしようかな」
「今日は寒いのに、アイス?あ、でもアイスココアはアイスクリームがめっちゃかかっていてでかいな」
「確かに、こんなに飲めるかな」
なかなか決まらず、それでも楽しそうに話すカップルを横目に、窓から見える景色をぼんやり眺めていた。今日は本当に寒かった。
「で、先輩はなんでまた落ち込んでいるんですか?」
私はなぜか休日に先輩と喫茶店にいた。呼び出されたのだった。
「あー、すまん、いつもお前ばかり呼び出してしまって」
「今更なんですか。本当ですよ。彼女じゃないのに、なんで私なんですか」
「すまん」
「すまんですめばケーサツいりません」
「あー」
「すみませーん、アイスオレ一つと、ホットココア一つ」
隣のカップルはなぜかアイスとホット、両方注文していた。再び窓ガラスを見ると、
磨りガラスになっており、植物が風で揺れてキラキラとしていた。
「お待たせしました。ホットココアの方」
「あれ?生クリームがのっていない」
バイトの子が運んできたホットココアには生クリームがのっていなかった。メニューには乗っている状態なので、確認してきてもらうように言っていた。
「すみません、確認してきます」
その後、ホットよりもすこしウォームになったホットココアには生クリームがのって再びテーブルに置かれていた。
「先輩、伊藤さんとなにかあったんですよね。ついに告白でもしましたか?」
「告白はしていない。していないが、あいつのほうから、好きな人ができたって言われた」
「それで、何ていったんですか?応援しているとか言ったんじゃないですか?」
「お前、なんでわかるんだ」
私はなんでこの人のことが好きなのだろう。思いっきりため息をはく。好きな人なのに。
「先輩、すみません。馬鹿ですか?」
「ほんとだな。俺は馬鹿かもしれない」
「でも、お前にそういってほしかったのかもしれない。俺は本当になんで応援するって言っちまったんだろう」
「そこが先輩の詰めが甘いところなんじゃないですか」
「そうだな」
失笑混じりの小さな声を飲み込むように、コップに入った水を一気飲みする先輩。
「そうだ、失恋記念になにかおごりますよ?」
「おごられてたんじゃ、面目ない。俺がおごるわ。話を聞いてくれたお礼だ」
「じゃあ」
「付き合いませんか?私達」
「え」
先輩の固まる顔を私はじっと見つめていた。




