表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/244

第91話:忍耐

 ───ベスト16の5回戦目。ここで一度、和弥は状況を整理する。トータルポイントの差は25。さすがに1回戦目にハネ満を和了(アガ)ったくらいでは、大差をつけられない。もっとも和弥にも「完全競技ルールだから」と言い訳をするつもりはない。

 

(つまり、だ。俺が2位以内に入らなくては勝利はないということだ)


 もっとも勝負の前から2着でいい、と思っているとうっかり最下位に転落するのが麻雀である。


(それにしても、まさかここまで追いつかれるとは思ってなかったぜ。流石は全国だ)


 いよいよ5回戦目が始める前に、控室で龍子が煙草を出し火を点けようとする。


「先生。ここは未成年者がいるんです。煙草は控えて下さい」


 文字通り突き刺すような視線で赤入りルールのベスト8進出を決めた前回覇者、小百合が龍子に釘を刺した。


「やれやれ。誰かさん達のバイクの2人乗り(タンデム)は、見逃してやったのにな」


 皮肉っぽい笑いを小百合に向けながら、渋々煙草を仕舞う龍子。


「!?」


 瞬時に表情が変わる小百合。そうだった。和弥とタンデムしているのを、龍子と綾乃にしっかり見られていたのだ。


「え~? ズルいじゃんさゆりん。あたしも和弥くんに今度頼んで乗せてもらおっと」


「私も。よし、今度のサシウマの条件はそれにしよっと!!」


 由香に続き、綾乃も悪ノリして小百合をからかう。


「な、な、何を言ってるの南野さん。それに部長も!?

私は竜ヶ崎くんにおかしな感情は一切持っていません。余計な先入観を持たないで下さいっ!?」


 小百合はそこで言葉を切り、プイっと横を向いてしまった。しかしその顔は風呂上りのように真っ赤なのが、誰の目にも分かった。


「ほらほら。あの男の対局が始まるわよ」


 未だ和弥に対し意地を張っている今日子が注意するなか、いよいよベスト8進出最後の2名を決める5回戦目が開始された。


◇◇◇◇◇

 

 (トン)1局。ドラは一索。

 配牌を開けた瞬間、和弥は『おっ!?』とは思った。やろうと思えばノー理牌(リーハイ)でも打てる和弥だが、「牌譜をとるのと不正防止のため、理牌は極力するように」との規約があるので、渋々理牌していく。本当は麗美や恵も完全競技ルールに参加すると聞いて、個人戦はノー理牌で挑むつもりだったのだ。

 理牌をし終えて待っていたのは、気持ちを昂らせてくれる歓喜と期待であった。

 七対子(チートイツ)一向聴(イーシャンテン)である。しかもドラの一索は最初から対子だ。完全競技ルールでもダブルリーチは認められているので、第一ツモで引ければ文句無しのダブルリーチだ。

 しかし和弥の第一ツモは九萬。


(ダブリーならず、か………)


 しかし、和弥は一切悲観せず、九萬をツモ切りしていく。


(まあ、現実はこんなものだよな)


 一向聴なんだ、と再度自分に言い聞かせ、1巡後に和弥は牌山に手を伸ばした。

 そのとことん冷めてるようにすら見える和弥とは対照的に、一喜一憂しているのは立川南麻雀部控室である。


「お、惜しいっ!」


「和弥クン、凄いね!!」


「別に、配牌のおかげでしょ。あの男が凄い訳でもなんでもないでしょ」


 騒ぐ紗枝と由香。苛立ちを隠せない今日子。画面に食い入ってる小百合と綾乃。現実の厳しさを改めて実感した顧問の龍子。


(本当に表情一つ変えないんだから大したもんだ。そういうところも新一さんそっくりだな)


 8巡目。長い一向聴から、ついに和弥の七対子は聴牌(テンパイ)する。

挿絵(By みてみん)

月・水・金曜日に更新していきます。

「面白い」「続きを読みたい!」と思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。

していただいたら作者のモチベーションも上がります!

ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ