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第89話:胸の昂り

 駅まで送ってもらう小百合。


「じゃあな委員長。また明日な」


 和弥はNinja400のアクセルを吹かすと、文字通り消えるように去っていく。


 小百合は、和弥が見えなくなるまで手を振り続けた。


(ああ……竜ヶ崎くん帰っちゃったわ……)


 気がつくと小百合の胸の動悸は、走り終えた後のように(たかぶ)っている。


(やっぱり私もお母さんの娘なのね……お母さんが恋してた人の息子に……」


 大勝負を終えたボクサーのように、その場に立ち尽くす小百合であった。

 信号待ちでNinja400を停めると、スマホが振動しているのが分かる。


(誰だよ……)


 一旦道路脇に寄りスマホを確認すると、何と小百合からであった。

 そしてメッセージが1つだけ届いていた。


『今日はありがとう』


(委員長……)


 すぐに返事を送ろうとした和弥だが、何と返信してよいか分からずスマホをポケットにしまう。

 そしてNinja400に跨り、家路を急ぐのであった。

 和弥が帰宅すると、誰もいないマンションがひと際大きく見える。


(誰もいないっていいよな……)


 一人暮らしは寂しいとか言う人もいるが、和弥はそう感じたことはない。

 和弥自身が自立しているせいか、人付き合いの苦手なせいか、あるいはその両方か。

 今までも新一が“夜の住民”だっただけに幼少から一人で過ごすのは当たり前だったし、とにかく一人でいることに寂しさを感じたことはないのだ。

 しかし今日は違った。

 小百合から届いたメッセージが頭から離れない。


(委員長………俺のことが……?)


「いや!そんなわけねぇ!」


 和弥は頭を振りながら叫ぶと、冷蔵庫から缶ビールを一本取り出した。

 勿論未成年飲酒なのは分かっている。しかし本来飲むはずだった新一は、もうこの世にいない。


「捨てるのももったいないしな。すまねえオヤジ!」


 プルタブを開けると、一気にビールを流し込む。


「ぷふぁー!」


 大して美味いとは感じなかった。が、和弥は一気に飲み干すと、缶を握りつぶす。


(あんなスーパー美少女が、俺のことを好きになるわけがない………)


 しかし和弥は、その思いを打ち消そうとしていた。


(でも……もしかして……)


 と、そんなことを思っていると、またもスマホが振動している。


「何だ?!……げっ!」


 スマホの画面を確認すると、そこには小百合からのメッセージが表示されているではないか。


『今日はありがとう。明日もまた話したいわ』


(委員長!)


 もうそれだけで鼓動が高まる和弥は、慌てて返事を打ち込む。

『いや、こちらこそ』


 そしてすぐにスマホから着信音が鳴り響いた。小百合からである。慌てて通話に出る和弥。


『こんばんは。今何してるの?』


「家にいる」


 ほんの僅かの沈黙。意を決したように、小百合は切り出す。


『私、竜ヶ崎くんのことが…』


(委員長……)


 もう和弥の鼓動は、爆発寸前であった。


「待ってくれ委員長……その言葉の続きは大会終わってから改めて聞きたい」


 和弥が小百合からの告白を期待したことは言うまでもない。

 だが、小百合の返事は意外なものであった。


『分かったわ。じゃあ、大会が終わったら改めて貴方に伝えるわね。それじゃあお休みなさい』


「あ……ああ……。おやすみ」


 和弥は拍子抜けした。が、小百合らしいと納得もしたのだった。

月・水・金曜日に更新していきます。

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