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第84話:分岐点

 (ナン)1局。親は和弥。ドラは三索。


「チー!」


 美里の六索を、下家(シモチャ)が赤五入りカンチャンで鳴く。

「好調者が動くと牌も動く」の定石(セオリー)通り、おかげで次の巡目に美里が聴牌(テンパイ)した。

挿絵(By みてみん)

(よし………西(シャ)を鳴く前に三色確定。リーチの必要が無くなったわ。一筒だと2,600(ニンロク)だけど、対面の坊やの親を流したいなら、これで十分)


 静かに三筒を捨て、一筒と西のシャボ待ちテンパイにとる美里。


(一筒は2枚、西は最後の一枚(ラストワン)がまだ山にいる。これなら勝負になるね)


 しかし、ずっと美里の挙動をチェックしていた和弥は、入り目で視線が一瞬止まり、一向聴(イーシャンテン)になった時から見逃さなかった。


(チッ…。張ったな。ダマでも和了(アガ)れる手だが愚形。なのでリーチ無用、ってところか)


 上家(カミチャ)がツモ切りする。

 続いて美里のツモだが、見た瞬間盲牌(モーパイ)もせずあっさりとツモ切りした。


萬子(マンズ)に用事はないって事か。捨て牌からして筒子(ピンズ)の下の可能性が高い。あの女の自風牌の西も、一枚しか見えてない)


 ただし問題は麗美の手の“打点の高さ”である。


(ドラは俺に3枚。今度は上家(カミチャ)もタンピン系の捨て牌だ。赤を使ってる可能性が高い。この女に赤もあったとしても、一枚がいいとこだろう。西で5,200、安目で2,600ってとこか………)


 対してドラが暗刻(アンコ)の和弥だが、またも手が遅い。手は安い可能性の方が大きいとはいえ、このまま美里をあっさり和了らせていたら、美里をさらに楽にするだけだ。

 控室のモニターで見ている立川南麻雀部部員たち。特に小百合は、水筒の中のレモンティーにはほぼ口をつけず、完全に温くなっていた。当然である。不安な感情を表情に出さないようにするのに必死で、レモンティーどころの話ではないからだ。


(ドラが3枚あるけど、全然手が揃わないわね………。このままだと鳳さんが和了って竜ヶ崎くんにさらに差をつけるのが、目に見えているわ…)


 そして和弥がツモってきたのは、4枚目のドラだった。


「………カン」


 ドラを暗カンし、嶺上(リンシャン)牌に手をかける和弥。(カン)ドラ表示牌は二萬。すなわち三萬である。


「リーチ」


 嶺上牌を手牌に引き込み、和弥はドラ槓リーチにいく。親のドラ槓リーチ。これには流石に、場の空気も凍り付いた。が。

 ───ただ一人、美里だけは“別の変化”に注目していた。


(後ろで見ていた係員の顔………一瞬だけど驚いていた。ひょっとしてリーチで親ッパネ確定?)


 美里はもう一度、和弥の捨て牌を確認する。


(典型的なタンピン系………。ここでリーチに来たって事は、役がないか、それともツモアガリ出来る自信のある、かなりの好形って事?)


 何せ表情からは和弥の不安気などが全く読み取れない。ならばと牌譜を取っている係員をチェックしたが、あそこまで驚くのは役があろうが無かろうが、好形で親マン以上の可能性しかしかない。


(もし裏ドラが乗ったら親倍まであるわ………。一気に突き抜けられる)


 次の巡。美里がツモったのは四萬であった。


(あの捨て牌にこれは捨てられない。仕方ないわね)


 この局を“捨てた”美里は西を切った。それを見た和弥は、一瞬だけほくそ笑む。


「ツモ! 500・1,000!」


 結局、この局は下家がアガッた。


(この局でリー棒まで失ったのに………。顔色一つ変えない度胸“だけ”は認めてあげるよ)


 収納口に牌を落とす美里だが、モニターから見ていた小百合は逆に、ここが分岐点になるのを確信した。


(鳳さんは気が付いてないようね。竜ヶ崎くんがノーテンリーチだったのを………)

挿絵(By みてみん)

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[一言] 脅しの武力w
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