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第79話:準々決勝へ

 立川南の控室ドアを、激しくノックする者がいる。


「あ、いいよ龍子先生。私が出るから」


 立ち上がろうとした龍子を手で制し、ドアに向かう綾乃。


「はいはい、どなたですか~?」


 ドアを開けた前に立っていたのは、準々決勝進出を決めた久我崎の部長・麗美である。


「ありゃりゃハナちゃんか。準々決勝進出おめでとう」


 わざとらしい笑顔を作る綾乃だが、麗美も薄ら笑いを浮かべるのみだった。


「入っていい?」


「うんいいよ。ついでにハナちゃんもコーヒー飲む?」


 麗美は綾乃の淹れたコーヒーを飲みながら、立川南との準決勝について語り始めた。


「マジで、準決勝まで綾乃のとこと当たらないのを祈るよ。そして決勝進出は間違いなく我らが久我崎になるだろうね」


 それを聞いた綾乃が両手の平を上にし「ヤレヤレ」のポーズをする。


「ウチにトレマで負けたくせに~……」


 そんな綾乃を笑顔で見つめる麗美だ……。

 しかしそれは余裕か? それとも何か他に理由があるのか? 麗美以外は誰にも分からない。


(ん……?)


 またもドアをノックする音。


「いつからウチはこんな忙しい学校になったんだよ」


「まあまあ竜ヶ崎。嫌われるよりはリスペクトされた方がいいと思うぞ」


 愚痴を零す和弥を、さすがにたしなめる龍子である。


「あ、先生。私が出るから大丈夫」


 またも立ちあがり、ドアに小走りに向かう綾乃。


「はいはい、今開けまーす」


 立っていたのは───眼鏡をかけたボブカットの少女。神奈川県東地区代表の陵南渕高校部長・発岡恵だった。


「ありゃりゃ、恵ちゃんまで。優勝候補2校の部長が訪ねてくれるなんて、ウチも有名になったもんだね」


「相変わらずね、白河さんは。私はむしろ今回狙いたいのは個人戦なんだけどね」


 恵はチラリと和弥を見る。

 だが和弥は、そんな視線など何処吹く風といった様子でコーヒーを飲んでいた。


「そんな目が笑ってない笑顔で睨むなよ。こっちはウチの顧問に完全競技ルールで叩きのめされて、自信喪失だってのに」


(ダブロン無し頭ハネルールだったら、竜ヶ崎くんの和弥の勝ちだったはずなのに………)


 勿論和弥流の自虐ジョークだろうが、聞いていて小百合は複雑な気分になった。


「さてと……私はそろそろ部員引き締めて、綾乃達の対局の見学させてもらうわ。頑張ってね、綾乃」


 コーヒーを飲み終えた麗美が立ちあがるが、恵に呼び止められた。


「待って、花澤さん。私も今いく」


 麗美の後を追うように、立ちあがった恵。


「本当に2校とも勢いあるなー……」


 そんな様子を見ていた綾乃が、そんな事を呟いていた。

 和弥達の立川南以外の試合が全て終了した。あとは立川南が準々決勝進出を決められるか、である。


「それじゃ、俺らもサクッと準々決勝決めて帰ろうぜ」


 麗美が控室から出ていく。続いて恵も。


 龍子が見送りに行こうとした時、ふと和弥に視線を向けた。


「……竜ヶ崎。お前は彼女達に何かないのか?」


「やめて下さいよ。彼女らは今はまだ敵なんですから」


 2校とも準々決勝進出が決まったのなら、別に行かなくてもいいかと思ったのだ。


「行って来たら? せっかく2人が来てくれたんだし……。ありゃ明らかに竜ヶ崎くんに会いに………」


 綾乃の声を遮るように、首を横に振る和弥。


「今更労いの言葉をかけてもしゃーないでしょ。それより俺らもサックリ勝って、ベスト8進出きめましょうや」


 今は次の戦いに集中する時。和弥にはその気持ちしかなかった。

月・水・金曜日に更新していきます。

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