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第76話:波紋

 流石に酒を飲んだ秀夫に送ってもらう訳にはいかず、和弥と小百合はタクシーで帰る事にした。


「なあ、委員長。ずっと聞きたかったんだけど」


「何かしら?」


 もう聞くのはここしかない。そう思い和弥は双葉が訪ねて以来思っていた疑問を口にする。


「ひょっとしてオヤジのこと、お袋さんに聞いたのか?」


「………………」


 俯いたまま、何も答えようとしない小百合。


「実はさ。大会直前に和服着た美人が俺のマンション尋ねてきてさ。オヤジに線香上げたいって。顔見てすぐに委員長のお袋さんだって分かったよ」


「………えぇ、そうよ。お母さん、お父さんがいない時は話すのは二言目には貴方のお父さん…新一さんの事だったわ。

 お見合いで半ば無理やり結婚させられたのは聞いてたけど………。『この人お父さんより好きな人いるんだ』って………。私には優しいお父さんだったから、本当に嫌だった」


 俯きながらも顔を羞恥に染めている小百合を見て、これまでの態度からの豹変に和弥は言葉を選ぶ。


「………そういや、委員長のオヤジさんも………」


 そう。和弥の父親・新一の死の騒ぎのせいで全く目立たなかったが。その数日前に、小百合の父もガンで亡くしているのだ。


「発見した時はステージ4………。体のあちこちにも転移していて、むしろ半年間生き永らえたのが不思議だったそうよ」


 今度は和弥が黙ってしまう。


「………お父さん、ずっと健康診断も受けず働き尽くめだったから。お母さんに認めてもらいたかったんでしょうね」


 いつもは口数の少ない小百合が、今日は随分と饒舌だ。

 実は和弥も西浦一族のことについては、少々は秀夫から聞いてはいた。

 宮城の県庁にも繋がりのある人間がたくさんおり、特に新一が育ったあの港町ではほとんどの事業や産業を西浦一族が握っている。

 そして西浦の人間に睨まれたら、あの港町では生きていけないという事も………。

 ならば無理やり見合いさせられたというのは、どうやら本当なのだう。


「お父さんが死んだらお母さん、すぐに探偵や興信所を使って貴方の住所なども調べ始めたわ。もっとも、その時には貴方のお父さんも………」


「ああ、運転手さん。ここで」


 小百合を残し、さっさとタクシーから降りてしまう和弥。


「ぶっちゃけ、俺にはどうでもいい話だったぜ委員長。それじゃあ、な」


 タクシーの運転手に料金を払い、もう誰も待っていないマンションに戻った。


(委員長も委員長で、キッツイ立場だったんだな………。

 お袋が逝った時はまだガキだったけど、今回のはマジでキツイわ………)


 学生服を脱ぎ捨てた和弥は、シャワーを浴びてそのままベッドに横たわると、急激に意識が遠くなった。

月・水・金曜日に更新していきます。

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