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第59話:鷹の子は鷹

(………竜ヶ崎くんなら、あんな序盤から両面決め打ちなんてしないわ…。雀頭(ジャントウ)暗刻(アンコ)になる可能性も考えて、もっと引っ張っているはず。それに………)


 綾乃のその考えの続きは、恵も同じようだった。


「ダマでもタンピン・ドラ・赤で7,700(チッチ)あるじゃん。あなたなら1回戦目みたいに、息を潜めてダマかと思ったけどね」


 3連勝していた恵はまさかの最下位(ラス)に、先ほどまでの蛇が鳥の巣穴を覗き込むような態度が消えている。


「逆だよ。むしろ和了(アガ)りたいからリーチをかけたんだ」


 勝ち分の札をコーナーに置いた和弥は、ノンシュガーのカフェ・オレを飲みながら平然と答えた。


「あンた相手にダマなんて意味ないからな。ウチの先輩や久我崎の部長さんも同じだ。それに………」


「それに?」


 恵は勿論、上家(カミチャ)下家(シモチャ)の麗美と綾乃も興味非常に興味をもって、和弥の次の言葉を待っている。


「あンたならリーチかけりゃ、必ず読んでくるだろうと思った。

 現に『萬子(マンズ)の上はない』って判断して八萬切ったんだろ? 出るならむしろあンたからだと思ったぜ」


 理由に綾乃と麗美は唖然とする。

 真顔になっていた恵の表情に、再び笑みが戻っていった。


「へぇ~………。まんまと一杯食わされたって訳ね」


「何言ってやがる。先輩に俺とのマッチアップ頼んでケンカ売ってきたのはあンただろうが。

 それに俺が終わってるか終わってないか、これで分かったろ?」


 和弥は恵を一瞥すると、仮親決めの為のサイコロボックスのボタンを押す。


「あっはっはっ! いいわねその太々しさっ! よし、5回戦目レッツ・ゴーッ!」


 結局10回戦までのうち、5回戦目からは綾乃と麗美もトップ争いに加わる形となり、結局結局和弥のこの日の“儲け(アガリ)”は1,100円だった。


◇◇◇◇◇


「あぁ、この人で間違いないぜ」


 全国大会一回戦開始前日。禁煙席の卓を借り切り、紅帝楼にやってきた立川南麻雀部。

 和弥が陵南渕の部長と互角に打ったのは早速綾乃を通じて、早速他の部員や龍子にもあっという間に知られた。紗枝が持ってきた麻雀雑誌の「各校の注目の選手」のページで恵を指さした。

 麻雀雑誌まで高校選手権を取り上げるようになったのか、と和弥は別の方向で感心すらするが。


「陵南渕も優勝候補ですけど、その理由が発岡さんなんです。凄いですね竜ヶ崎先輩………」


「発岡さんって去年のU-17個人戦の完全競技ルールの優勝者なのよ。本当に凄いわね………」


 心から感心している紗枝と小百合だが、和弥には今一つピンと来ない。


「いや、マジで凄いよ和弥クン」


 飲み物やおしぼりを持ってきた、紅帝楼の店員(メンバー)のシフトリーダーである井上も、心の底から驚いているようだった。


「俺さぁ、別の雀荘でこの発岡って子を見てさ。順番待ちまでして対局したけど、何も出来ずにあっさり負けたのに」


「それは単に井上ちゃんの腕の問題じゃないの~?」


 ドカドカと来店してきた大学生たちが、一斉に井上をからかう。

 その様子を見ていた秀夫は苦笑いをしながら店長室に入り、新一と仲良くなるやすぐに地元の雀荘に連れていかれた高校時代を思い出した。


「どうです秀夫さん? あなたや新一さんと同格………いえ、それ以上の雀士になれる可能性ありますよ?」


 店長室のソファーに座っていたいた龍子は、コーヒーを飲みながら微笑む。


「そういう龍子ちゃんだって。本当は彼と打ちたくてムズムズしてるんじゃないの?」


 図星を突かれた龍子は、珍しく顔を赤面させた。

 ゲン担ぎに勝負の前は新一と2人でカツ丼やカツ定食を食べ、勝った金で当時はまだ珍しかったスマホを買ったりパソコンを買ったりしたことを思い出し、秀夫もまた笑顔を浮かべるのだった。

月・水・金曜日に更新していきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 赤ナシの競技ルールである程度以上の腕同士でやると浮き沈みも小さいか…
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