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第46話:決勝

(この戦いが終わったら、委員長に話すべきか………?)


 小百合の母・双葉との昨日の会話を思い出す和弥。

 いや、おかしな事を話して混乱させる事もない。決勝が終わったらゆっくり尋ねればいい。和弥は頭を切り替える。


『これより決勝戦を開始します。各校の先鋒は雀卓に、他の部員の方は控室にお願いします』


 会場にアナウンスが鳴り響き、いよいよ決勝戦。「楽勝」という綾乃や龍子の予想に反して、立川南は苦戦していた。先鋒の今日子が大コケしてまさかの最下位(ラス)。次鋒の紗枝も信じられないミスから3位。由香がトップ、小百合が何とか2位だが和弥がトップを取らない限り苦しい。

 いよいよ大将戦。和弥の上家(カミチャ)の大柄な男は、卓に着いたときから敵意をむき出しにしている。ツーブロックに金髪に染めた髪に、色黒で艶のない顔。他のスポーツでもやった方がいいだろうに、何で麻雀をしているのか皆目見当がつかない、得体の知れなさがにじみ出ていた。


(関係ねぇ。俺がここに座った以上、目指すのはただ一つ。トップのみだ)


 和弥はできるだけ視線を合わせないよう、いくぶん反対側に体を向けて打っていた。

 だからこそ、下家(シモチャ)の少女もその男に注目したのかもしれない。痩せすぎとは言わないが、制服の上からも分かるスレンダーな体つきにお似合いの、細くしなやかな指をしていた。

 大柄の男が雑に激しく打つのと対照的に、少女は音もなくツモり、捨てるときもそっと並べるように置く。

 東1局目。


「ツモ。(ハツ)のみ500・300」


 和弥がさっと親を流す。どこといって不自然な感じのない進行だった。だが、その両側2人は、和了(アガ)りを抑えているように感じた。

 所謂(いわゆる)『小場』と呼ばれる、点数の変動があまりない小さな和了りが続き、南4局(オーラス)を迎えた。点数に開きはない。和弥はトップとの差は3,900点ほどだが、トップ直撃の2,000か、トップが親なので1,600・800ツモ以上を和了ればトップとなる。


(とにかくここは我慢だ………。和了ればいい場面だからな) 


 9巡目。ついに和弥は聴牌(テンパイ)。しかし役がない。

 これには控室でモニター観戦している立川南麻雀部にも、動揺が走る。


「ど、どうするのよあれ………」


 この劣勢は今日子の最下位が原因だというのに、それをも忘れているかのような口ぶりだ。


「タ、タンヤオか平和(ピンフ)への手変わりを待つしかないね………」


 顔では平静を装っていたが、綾乃も内心気が気ではないようだ。


(竜ヶ崎くん………)


 文字通り祈るような思いの、小百合である。

 10巡目。現在2位の大柄の男が点棒入れを開け、千点棒を取り出し捨て牌を横に曲げた。

 

「リーチ!」


(それを待ってたぜ…)


 同順。和弥もツモ切りリーチ。 


「な、何あれ…。役無しで…!?」


唖然とする今日子。


「あ! ちょっと待って下さい!」


紗枝が和弥の狙いに気づいたようだ。


(こいつとトップの差は1,100点。1,300以上でトップなのにリーチをかけてきた。それは役がないからだろっ!?)

  

「あ、これをツモ和了りすれば…!?」    


 由香も和弥の狙いが読めたようだった。

 12巡目。


「ツモ」 

挿絵(By みてみん)

 裏は乗らなかったが、100点差で逆転トップ。大柄の男は和弥の手牌をまじまじとを見つていた。


「西東京代表は、立川南高校に決定しましたっ!!」


 控室内は歓喜の渦に包まれた。

月・水・金曜日に更新していきます。

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