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第42話:カミングアウト

 麻雀部の部長である綾乃は、校内でも評判のいい生徒だ。

 立川南三大美少女の一人というだけではいない。成績優秀で人当たりもいい性格なので、男子・女子問わず人気がある。

 街を歩いてて芸能スカウトに声をかけられたのも、一度や二度ではない。

 昨年度の高校選手権では惜しくも個人優勝を逃したものの、綾乃の将来に期待する声は多い。

 そんな綾乃が何故麻雀部に所属しているのか─── 答えは簡単である。彼女は“天才”だから。

 天才の名を欲しいままにした彼女だが……しかし彼女には同級生はおろか麻雀部部員、東堂龍子にも言えない秘密があるのだった。それが和弥の指摘する瞬間記憶能力である。


(りゅ、竜ヶ崎くんは気付いていたのね……悔しいなぁ)


 小百合は唇を噛み締めた。だが……


「でも、確かにそうかもしれないわね……。部長の今までの打ち方を思い出してみると、竜ヶ崎くんの考えには同意出来るわ」


「最近委員長も俺の真似して、筒子(ピンズ)を左端に置いたりしてるだろ。あれ最初やった時、先輩は明らかに動揺してたもんな」


 自動販売機でカフェ・オレを買いながら、和弥は答えた。


◇◇◇◇◇


 週が明けて月曜の部室。


「あっはっは! バレちゃったか。そそ、竜ヶ崎くんの言う通り!」


 小百合に問われた綾乃は否定する事なく、むしろ清々しいほどの笑顔で肯定した。


「正直言って私、子供の頃から文系は勉強なんて一度もした事ないよ。だって一回教科書読んだら全部憶えれたもん」


 綾乃の答えに小百合は目眩(めまい)すら感じた。彼女の圧倒的な頭脳とセンスは、幼い頃から身に付いていたものらしい。

 しかし、今重要なのはそんな事ではない。


(た、たった1局で部長の実力を看破するなんて……竜ヶ崎くんって一体……)


 あまりの衝撃的な告白に固まる小百合の横で、和弥が珍しく笑った。

 しかもバカにしている様子などない。


「ずっと不思議だったんだよ。トータルポイントがプラスで次に進めるルールなら、5人目はもう麻雀のルールさえ理解出来てればいい、数合わせでも入れときゃいいんだから。

 それがなんで俺なのか………」


 和弥はカフェ・オレを一口飲むと続けた。


半荘(ハンチャン)2回ごとにメンバーが入れ替わる団体戦のあのルールは、最初はデータ取りに捨てる先輩には明らかに不利だもんな。自分が足引っ張るかもって自覚あったんだろ?」


 由香も今日子も紗枝も、唖然としている。

 和弥がそこまで綾乃の力量を把握しているとは、思わなかったのだろう。


「その通り。実は竜ヶ崎くん以前にも『入部したい』って生徒はいたんだよ。ここ、私も含めて可愛い子多いし。スケベ心丸出しの男子生徒も多かった」


「自分で可愛いっていうのかよ………」


 和弥のツッコミにも関係なく、綾乃は続けた。


「でも皆企業でいう『今回は採用を見送らせていただきます』だったよ。そりゃそうでしょ。私の穴埋めなんだから。やっぱりある程度計算出来る、即戦力が欲しかったんだよ」


 綾乃の笑い声が響く中、小百合はハッとした表情になった。しかし綾乃の演説はまだ終わってはいない。


「そこで小百合ちゃんに紹介されたのが竜ヶ崎くんって訳!」


 綾乃は、まるで悪戯っ子のような表情で小百合を見た。

 それを聞いて和弥は(いぶか)()な表情をする。

 考えてみたら、教室では小百合は自分とは全く接点の無かったのだ。どうして自分が麻雀を打てる事を知ったのか?


「言われてみたらその通りだな委員長。一体誰から俺が麻雀打ってるって聞いたんだ?」

月・水・金曜日に更新していきます。

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[一言] 瞬間記憶能力…ガン牌無双は難しいかw
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