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第37話:見(ケン)

(ワリ)ィ、俺そういうのやってないんだ。個人情報漏洩もニュースになったしな。その手のアプリは一切入れない事にしている」


「だからってショートメールのみなんて、今時の若者らしくないじゃん」


 部活が終わり。SNSアプリを和弥に勧める綾乃だが、和弥の決意は変わらない。


「カンベンしてくれ先輩。他人(ヒト)他人(ヒト)、俺は俺だ。そういうモンにイチイチ反応するのは面倒なんでな」


「協調性ないわね~アンタ………」


 今日子も白けた目で和弥を見るが、和弥は御構い無しである。


「………………オメーのクチから協調性とか。何のギャグだよ」


 学生カバンを雑に掴むと、和弥は部室から出ていった。


「仕方ないね。さ、今日は解散にしよ」


 綾乃が小百合、由香、今日子、紗枝の4人に(うなが)す。だが小百合はまだ悩んでいるようだ。


「……そうですね。では、失礼します」


 翌日。

 登校して下駄箱に靴を入れてる和弥に、小百合が近づいた。


「おはよう、竜ヶ崎くん」


「おはよ。珍しいな、委員長がこんな時間に教室にいないなんて」


 相変わらず目線も合わせようとしない和弥だが、小百合も動じない。


「ショートメールがいいのなら。直接貴方(あなた)に、電話をしてもいいのよね?」


「そりゃあ構わねぇがよ。何かありゃ白河先輩が………」


 かすかにだが、ホッとしたような表情を浮かべる小百合。


「それを確認出来たらいいわ。それじゃあ教室で」


 艶やかな長い黒髪を(ひるがえ)し、小百合は教室に向かう。


「なんなんだいってぇ………」


◇◇◇◇◇


 土曜。和弥は久々に紅帝楼に来店した。


「いらっしゃい、和弥くん」


 和弥を見るなり店員(メンバー)のシフトリーダーの井上は、バツの悪そうな表情を浮かべる。


「どうしたんすか?」


「その………和弥くんと対戦したいって女の子が………」


「俺と?」


 和弥は、ふー、と一つ息を吐いた。


「どこです?」


「あそこだよ。禁煙卓の4番卓」


(俺と打ちたい、ね。さてさて、どんな奴やら………)


 禁煙コーナーを見る和弥。さらに奥に進むと、見覚えのある女性が手を振ってくる。


「やっほー、竜ヶ崎くん」


 声の主は部長の綾乃だった。全く予想してなかった、とはこういう状態なのだろうか。


「………先輩か。なんであンたがここにいるんだ?」


 和弥の怪訝(けげん)そうな視線に気が付いたのだろう。

 ケラケラと悪戯っぽく笑った綾乃は、開口一番答えた。


「何って、雀荘に来るのに麻雀打つ以外の理由なんてあるの?」


「麻雀打ちてぇなら部活で打てるだろ。わざわざ………」


「だって部室内じゃ『サシウマやろう』なんて言えないじゃん」


 相変わらずの作り笑いを浮かべる綾乃に、少々イラつきを憶えた和弥である。


「………金はあんのかよ」


 綾乃はニヤリと笑うと、バッグを開けて厚い銀行の封筒を見せた。


「200万あるよ。11回戦で6勝した方が勝ち。どう?」


「いいだろう。ただ、俺は今日は現金はそんなに………」


 綾乃の対面に座る和弥。


「いやいや。お金はいいよ。その代わり私が勝ったら…」


「なんだ和弥クン。また随分な美人さんと知り合いじゃないか」


 綾乃の言葉を遮るように、上家(カミチャ)下家(シモチャ)に中年2人が座る。


「部活の先輩です。始めましょう」


 椅子に座った和弥は、熱くなっている自分を(いさ)めた。

 1回戦目は和弥の圧勝だった。綾乃は何もせずに最下位(ラス)である。しかし和弥には、綾乃がわざと無抵抗を演じたように思えた。


(そういや部活でも。この人の本気って、一度も見た事なかったな。それに今の対局は、明らかに(ケン)に徹してた)


 2回戦目の(トン)1局。和弥の下家が親でスタート。ドラは六筒。

 8巡目。早くも和弥が両面カンチャンを引いて、満貫聴牌(テンパイ)となる。

挿絵(By みてみん)

(三色は消えたが、これなら十分形だ………)


「聴牌したんでしょ?」


 点棒入れからリーチ棒を出そうとした瞬間、綾乃がクスリと笑った。

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[一言] 人間観察…w
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