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第27話:凄み

「凄い、凄いわ竜ヶ崎くん!」


「あんな純チャン、初めて見た!」


 小百合と由香も興奮気味に和弥を出迎える。


「よせやい。あんまり褒められるとほっぺたが赤くなるだろ」


 和弥は短ランを着て、ボタンをしめていく。

 一方綾乃は、麗美の座るソファの隣に移動していた。


「どう? ハナちゃん。立川南(ウチ)の“最終兵器(ファイナルウェポン)”は?」


「いやあぁ………。凄いね。あの雀力をどこで磨いたのかな、あの子。ガチンコ勝負がしたいよ」


 卓の上でブルブルと悔しさをかみ殺していた筒井だが、突然立ち上がった。


「おい! ちょっと待てよ!? 」


「なんだよ。腹でも減ったのか?」


 久我崎の麻雀部員にコーヒーを淹れてもらった和弥は、筒井などまるで眼中にないような態度を取る。


「もう一回勝負受けろテメーッ!!」


「………そりゃあいいんだけどよ。今日はもう勘弁してくれ。ヌルイ麻雀ばっか打ってると腕が鈍る」


「クソがッ!!」


 筒井は大股で和弥のもとに近寄り、胸ぐらを掴んだ。


「おいコラっ! やめなよ!」


 久我崎の部員たちが仲裁に入ろうとするが、和弥はそれを制止する。


「やんのかよ。言っておくけど俺は()()()も麻雀と同じくらいの自信あンぜ?」


 筒井の手首を掴み返し、和弥もすでに戦闘態勢だ。久我崎の顧問は別件があるらしく、不在である。


「う、うぐぐ………」


 部活や配信、鳳凰荘内ではイケイケな陽キャを演じてるが、実は筒井は生まれてこの方喧嘩など一度もした事はない。和弥に睨み返され、思わず目を背けてしまう。


「竜ヶ崎くんっ!?」


 小百合は流石に止めようとするが、立ち上がった綾乃に止められた。


「ここは久我崎だよ。あの程度、ハナちゃんに任せようよ」


「で、でも……部長……」


 和弥の喧嘩の実力を直に見ている小百合が、心配するのは当然だった。が、綾乃の予想通りの出来事が起こる。


「筒井くん。いい加減にしなよ」


 怒鳴ったり大声を出した訳でもない。しかし麗美の発した声の凄みに驚いたのか、筒井は反射的に手を離してしまう。


「ううっ……」


 んな麗美を見て、小百合と由香もさすがに引いてしまった。

 悔し気な筒井だが大の男が気圧(けお)されるほど、麗美の声にはドスが効いていた。


「ふん」


 筒井と違い麗美に恐怖を覚えたりはしない和弥だが、事を荒立てる必要もない。そう思い、筒井の手首を離す。


「ね? 大丈夫って言ったでしょ♪」


 綾乃は優しく微笑み、小百合と由香にウィンクをする。

 狂気さえ感じさせた麗美の今の凄みは、そこら女子高生に出せるものではない。

 そしてそれを平然と受け入れているあたり、綾乃も、そして教師にも関わらず平然と眺めていた龍子も、麗美の“裏の顔”を知ってるのだろう。


◇◇◇◇◇


「そろそろ5時になるな。今日はお開きにするか」


 龍子はほとんど不在で申し訳なさそうにしている久我崎の顧問に言った。


「あ、はい。東堂先生、今日はありがとうございました」


 ぞろぞろと部室を出る6人。

 由香は麗美のやりとりを思い出し、改めて綾乃に問いかけた。


「部長。ハナちゃんって……ひょっとしてあの久我崎の部長さんと以前から知り合いなんですか?」


「うん。ハナちゃんは幼稚園からの親友だよ」


「えぇっ!?」


 驚く由香。


「そ、そんな幼馴染だったんですか……」


「ハナちゃんが小学2年の時にね。『麻雀教えてあげるから一緒にやろう』って。それが私が麻雀憶えるキッカケ……」


 小百合も興味深げに聞く。


「お2人はそんなに仲が良かったのですね………」


「うん。ま、高校は私は立川南(タチナン)、ハナちゃんは久我崎を選んだからね。実はリアルでは半年くらい会ってなかったし。昔よりも凄みが増したかな?」


 和弥にはどうでもいい女子トークだった。


(ま………。久我崎の部長さんとは、次打つ機会があれば決着(ケリ)をつけてやるか)

月・水・金曜日に更新していきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 筒井君は今度は部内で一旦折られるんだろうなあ。立ち直れるかネット弁慶引きこもりになるか…w
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