表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
296/310

第293話:戸惑い

 小百合が部室で麻雀をしてない時は、大抵後ろから他の部員の打ち方を見ているか、読書をしている。

 しかし、今日は何故か落ち着かなかった。

 とはいえ、理由はなんとなくわかっていた。おそらく、綾乃の存在がそうさせているのだろう。

 ならばどうするか。思い切って挑戦状を叩きつけるか、それとも波風を立てるべきではないか。

 ───そんな感じで次々と頭に浮かぶ案を自分で否定し続け、気が付けば部活が終了していた。

 こうしていても仕方がない。小百合はとりあえず帰宅のための準備を始めることにした。

 部室を使う直前、綾乃が声をかけてきた。


「どうしたの小百合ちゃん? 元気ないね」


「部長…。自分の今後のことを考えたら、なんだか落ち着かなくなっちゃって……」


 突然綾乃に話しかけられた小百合は、必死に言い訳を考えた。


「ふふ……そう。それなら、気晴らしにどっかで打ってみたら? 知らない人と麻雀打てば、少しはスッキリすると思うわよ」


 提案してもらっておいて生意気と感じたが、イマイチ乗り気にはなれなかった。


「いえ、フリー雀荘に行こうとは……今日はこれで失礼します」


 足早に部室を去る小百合だった。


◇◆◇◆◇


 土曜日。

 小百合はいざ外に出てみると、意外にも足は軽々しく動いてくれた。遠出をするつもりはなかったが、せっかくなので普段行かないような場所に行ってみようと思い、表通りにある駅前へと向かった。

 人混みが苦手という小百合の性格もあるが、そもそも電車を利用するようなこともないし、周辺に立ち並んでいる店舗にも用事はない。最後に訪れたのは、和弥と打つ為に電車を利用したからである。

 駅前広場に到着すると、やはり小百合は懐かしい気持ちになった。日常から離れてまだ日数はそれほど経っていないが、随分昔のことのように思える。

 現在の時刻はちょうど午後2時。朝や夕方に比べれば閑散としている。私は広場の一角にある円形のベンチに腰掛け、一息ついた。


 ───そんなに長い距離を歩いたワケではないが、自分でも不思議に思うくらい息が上がっていた。最近は体を動かすことが皆無に等しいので、体力が落ちてしまっているようだ。

 しばらくベンチに座ってボーッとしていると、私の隣に誰かが腰かけた。

 ベンチには小百合以外誰も座っていなかったのに、なぜわざわざ自分の隣に来たのか。考えられる理由は“私の知り合いだから”というものだったが、特に理由もなく座っただけの他人であった場合には気まずいことになってしまう。

 若干の恐怖を挟みつつもおそるおそる隣の人物を見てみると、幸いなことにそこにいたのは小百合が知っている人物であった。


「ぶ、部長……?」


 隣に座った人物は綾乃その人だったのである。


「なにしてるの?」


 小百合が訊こうと思ったことを、そのまま訊かれてしまう。知っている人物であったという安堵感よりも、なぜ綾乃がこんな場所にという驚きのほうが大きかった。それでも、先に彼女の質問に答える。


「私はちょっと気分転換に散歩に……部長は?」


「私も同じ。甘いものを食べたくなったから、散歩のついでに買いに来たの」


「そ、そうなんですか……」


 初めて会ったときもそうであったが、彼女は小百合の顔をまっすぐに見つめていた。やましいことがあるワケでもないのに、綾乃に見つめられるとどうにも視線を逸らしたくなる。

 一拍置いて、綾乃が言った。


「そこのクレープ屋。小百合ちゃんも行く?」


「え、ええ……」


 小百合は誘われるまま、綾乃についていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ