第273話:ミスにつけ込む
(自分で五筒を切ってる以上一・三・四の形からではない。それに今右の2枚目から一筒を抜いた…。間違いなく一筒の対子落としだ)
後ろから見ていた和弥も、カン二筒待ちを確信する。それは当事者である小百合も同じだった。
(考えられるパターンは三種類……)
(一・三・五なら五筒を切るハズ。三枚見えてる以上ペン三筒もないわ……)
【小百合の捨て牌】
【筒井の捨て牌】
【菱崎の捨て牌】
【上家の捨て牌】
「何だよ長考かよ。さっさと切れよ」
少し長考に入った小百合を、菱崎が挑発する。
(筒子の下は二筒はまだ三枚が山にいる……この男がリーチをかけるとしたらカン二筒しかないっ!!)
「おいどうした?」
菱崎の挑発が続く中、やがて意を決した小百合は二索に手をかけた。
「先輩オリちゃった……」
後ろで見ていた紗枝が、無念を滲ませながらこっそり呟いた。
「仕方ねぇ。ここで二筒を切ったらあの菱崎って奴の注文にハマるだけだ」
(コイツ……ニ筒を掴んでオリたのか)
ツモ山に手を伸ばす菱崎。
(二筒だけは絶対に打てないわ。さすがにこの一戦は落としたかしら……)
(まあいい。この女はこれで金縛りだ。あとはゆっくりツモ和了りするだけだ)
ツモ山に手を伸ばす菱崎。4枚目の五萬であった。
(暗カンするとリーチドラ4赤でハネ満か…。西浦と先輩の点差は10,700差…絶対に先輩から出和了り出来ない手になるな)
4枚の五萬をゆっくりと倒す菱崎。
「カン」
(どうせ裏が乗ればハネ満になるんだ。元々先輩から和了る気はないんだ)
嶺上牌は九筒であった。
「分かったよ菱崎。俺はオリとけってことか…」
(そういうことだ…。ツモるか他から出れば今度は俺らの勝利だ)
ツモ牌を河に捨てる筒井。
「ほらよツモ切りだ。ここら辺なんて大通りだろー」
その牌は───“二筒”であった。驚愕する小百合と菱崎。
凍り付いた空気を感じ取ったのだろう。筒井は「俺なんかやっちゃいましたか?」的は表情を浮かべている。
(何が天上位だこの馬鹿野郎……! 雑な麻雀打ちやがってっ!!)
菱崎は怒髪天を突かんばかりに激怒した。微妙な立場に追いやられたのは上家である。
(なんか変な空気だな。とりあえずこの女の現物捨てておくか)
二索を切るが、小百合がすかさずチー。
「い…今切った牌じゃないか」
「ええ。一度は回ったわ。でも通らないハズのこの牌が通ったから」
驚く上家を後目に、三・四の形で二索をチーし、悠々と二筒を切りだす小百合。
(クソ…どいつもこいつも役立たずのバカばっかだ…)
菱崎の掴んだのは八索であった。
「どうしたの? 当たり牌じゃないなら早く捨ててくれないかしら」
歯ぎしりをしながら、半ば叩きつけるように八索を捨てる菱崎。
「ロン。流石に敗北を覚悟したけど…チームワークがバラバラね。12,000」
副露した牌も中央に集める小百合。
「今回も立川南の勝利かしら」




