第269話:小百合の挑戦・5
※新年は1月7日から再開します。
(これで少しは精神的に余裕が持てるわ…)
無論、トップに立ったとはいえ、まだ油断は出来ない。相手が一度苦汁を舐めさせられている筒井に、不気味さを漂わせた菱崎が相手なので、油断大敵という言葉は小百合が自身に言い聞かせるつもりだが。
東4局。ドラは七索。
配牌を開けて小百合は思った。
(もしかしたら、今までないほどに運気が高まってくれている状態なのかもしれない……)
先ほどのハネ満を思い出し、小百合はそんな感覚を抱いていた。
勝てるかもしれない。筒井にリベンジし、菱崎をねじ伏せるられるかも知れない。
そんな小百合の感情をさらに後押ししてくれるかのような配牌が来てくれた。ダブ東が暗刻で入っていたのだ。
もう何も考える必要はない。中を切り、1巡目にして最低親満の一向聴に。三・六筒の両面だろうとチーを仕掛け、聴牌を入れるつもりでいた。
だが、ここからが長い。有効牌を引けないばかりか、上家から鳴ける牌もまったく出てこない。対面の菱崎から一筒は切り出されたものの、こんな牌を仕掛けたところで雀頭が無くなり苦しくなるだけだ。
8巡が過ぎた。そこでようやく、小百合は八筒を持ってこれた。二筒を切り、三・六筒のテンパイに取る。全体的に筒子が高い場であったので、用心のためリーチはかけなかった。
(12,000あれば十分…)
しかし次の菱崎の切り番のときに、その“事態”は起きた。
「リーチ」
菱崎はそう宣言し、二萬を切った。───一目見ただけでわかる、異様な捨て牌だった。
筒子と、そして么九牌が南一枚しか切られていない。混一色か清一色か。そして最悪のケースの場合、役満国士無双という可能性もある。役満ならばリーチは不要だろうと思うかもだが、筒井と上家へ知らしめるため、という可能性もある。
(次のツモ番で、怪しい牌を持ってきてしまったらどうしようかしら……)
筒子も么九牌も切りたくないとなったら、出来面子の索子を払うしかない。しかしそうなれば、数歩後退することになってしまう。他の2人が安全牌を増してくれればいいのだが……。
結局、危険牌を引いてしまい小百合もオリてしまい、流局。
「ノーテン」
「ノーテン」
「ノーテン」
「聴牌」
聴牌者は菱崎一人だったが、パタリと開かれた菱崎の手牌を見て小百合はのけ反りそうになった。中膨らみの単騎である。普通ならこんな待ちでリーチをかけたりしない。
「酷い待ちね。和了りたくないのかしら」
嫌味のつもりではないが、思わず口にしてしまう小百合。
「それでも聴牌料はもらえるっしょ。現に聴牌は俺だけだったんだし」
果たしてワザとなのか、それとも天然なのか。小百合は菱崎の真意を測れずにいた。
不定期連載ですが、ブクマや☆5を頂けると更新が早くなるかも知れません。
それでは皆さん、良いお年を!




