第268話:小百合の挑戦・4
(演技とは思えないわ…。どうやらチームワークはバラバラみたいね。まだ浮上のチャンスはあるわ)
とにかくまずは和了り───小百合は自分の配牌を開けながら、今回の麻雀における作戦を改めて確認することにした。
東3局。ドラは二筒。
彼女に出来ることは筒井よりも菱崎よりも早く和了り続け、彼らを封殺してしまうことだ。多少遠いところからでも仕掛け、とにかく最速を目指すのがいいかもしれない。
(よし、怯むことなく攻めていくことにするわ)
小百合は決意を胸に、第一ツモに手を伸ばした。引いてきた牌は、八索。
そこで小百合は初めて気づいた。開局一番にもらったこの手、随分と好配牌じゃないか、と。
形を気にしないなら既に一向聴だし、少し我慢すればタンヤオも平和も、はては三色までもがつきそうな手である。
「萬子を234という順子に固定したいですよね、西浦先輩……」
聞こえない程度の声で、紗枝が和弥に話かけてくる。
「七索か、六萬の周りを引いてそこで新たに面子を作りたいな。タンピンになる可能性が十分考えられるので、發は不要だろう」
その和弥の言葉通り、小百合は發切りからスタートさせた。
さて、ここが第一関門だ。菱崎が絶好調だとすれば、第一打が横に曲がるか、もしくは第一ツモがそのまま手牌の横に置かれてしまうと思われる。───デジタル派からすれば「そんなワケないだろう」という話かもだが、この菱崎は麗美とは違った不気味さがあるのだ。
しかし小百合の心配を他所に、そのどちらの現象も起こらなかった。第一関門突破である。小百合は小さく安堵の溜め息をついた。
筒井ももう一人も目立った第一打牌をするようなことなく、1巡目が終わる。小百合の第二ツモが回ってきた。引いてきたのは、絶好牌の七索。六萬を切り、この形にする。
一・四萬、二・四・五筒、六・九索待ちの一向聴。ここまでは小百合の思惑通りにツモが効いている。もっとも嬉しいのはやはりドラの二筒を引いての三色確定平和テンパイ。次点に六・九索引きの変則三面張か。もっとも寒いのは、一・四萬の両面単騎が埋まっての役無し聴牌だ。無論、最後の形になったとしても先制を取るためにリーチをかけるつもりではある。
2巡の無駄ツモを経て、小百合は六索を引いた。ドラ含みとはいえ、まだ巡目が浅い三面張なら引き和了ることができるだろう。小百合は勢いに身を任せ、点棒入れを開けた。
「リーチ」
一萬を切り、リーチを宣言する。
「おや、早いリーチだな。一発は避けとくかな」
そう言いながら筒井は發を合わせてくる。菱崎は一切躊躇することなく、一発目から赤五萬を通してきた。小百合は思わず、眉間にシワを寄せる。
その点の期待はほとんどしていなかったが、やはり菱崎は6巡目でのリーチを受けてもオリる気はないようだ。
(追いつかれ、私が放銃に回るというような惨劇が起こる前に引き和了ってしまいたいところだわ……)
続く上家は慎重に字牌を切り、場を繋ぐ。そして小百合の一発目のツモは五筒だった。
完全な安目だ。とはいえ、悪いことばかりでもない。
「メンタンピン・一発・ツモ…」
裏ドラを確認する。表示牌は一萬、ようするに二萬である。
「裏一つです。3,000・6,000」
これで小百合がトップに立った。




