第23話:窮地
「ポン!」
東3局。今度は親の筒井が發を鳴く。同時にドラの九筒をあっさりと捨てた。索子の混一色丸分かりである。
しかし。今度は麗美が、生牌のダブ東をためらいも無く切った。
「ポォォォォンッ!!」
(な、何よあれっ!? あんな見え見えのホンイツに、生牌のダブ東って………)
唖然とする小百合。
筒井は好手なのを隠そうともせず、ニヤニヤと笑うばかりである。
(張ったな、こいつ……。隠す気もないって訳か)
9巡目───
「ん、いたな」
ツモった九索を筒井は、パタリと置いた。
「ダブ東・發・ホンイツ・赤1で6,000オールだ」
「ちょっとふざけないで! こんなの麻雀じゃないわっ!?」
思わず立ち上がり叫ぶ小百合だが、当然「はい、そうですね」などと認める人間などこの場にいる筈がない。
「あのねぇ。アナタ、西浦小百合さんだっけ? U-16のチャンピオンの。でも『この条件で構わない』って言ったのは、彼なんだよ?」
不敵そのものな笑顔を浮かべながら、筒井に6,000点を支払う麗美。
「いいんだよ委員長。言う通りだ」
6,000点を支払った和弥は、構わず続ける。
「俺の方が強いんだ。これぐらいのハンデは認めてやらないとカワイソウだろ」
和弥のふてぶてしさに、さすがの綾乃と龍子も苦笑いしか出てこない。一方、小百合と由香は不安のどん底である。
東3局一本場。
「ロン」
またも和了ったのは筒井だった。
「トイトイ・ドラ3。一本場で12,300」
明らかに麗美の差し込みである。
「楽しくなってきたわね?」
今日子の挑発も意に介さず、無表情のまま収容口に牌を落とす和弥。
「たかが東3局でハダカデバネズミのご機嫌取りか。メデタイ女だな」
「な……っ!? アンタこそほざいてなさいよっ!? 」
東3局二本場。
「ツモ。500・1,000の二本場で700・1,200」
今度は和弥の喰いタン・ドラ1である。
「なんだそりゃ。大そうなクチ叩く割には君も安い麻雀打つじゃねぇか」
和弥に投げつけるように1,200点分の点棒を渡す筒井。しかし綾乃・龍子の評価は違っていた。
(これだけの点差がついたら東場とはいえ、焦って大きな手を強引に狙いたくなるもんだけどね)
(まるで獲物を狙う鷹か鷲みたいに冷静だなこの子は………新一さんそっくりだ)
派手な髪型や外見とは裏腹に、全く表情を変えず淡々と打ち続ける和弥に、麗美も感心する。
東4局。
麗美の親だが、今度は今日子がの筒井の平和・ドラ2の3,900に振り込んだ。
和弥の配牌は完全に“腐った”状態である。
(麻雀にツキや流れなんてないって人もいるけど………。
大物手を連続で潰されてから、竜ヶ崎くんにはまともな手が入って来ないわ。この親で連荘出来なければ、かなり不味い状況ね………)
南場に突入。和弥の親。しかし………
「ロン。七対子のみの1,600」
字牌整理をしてる内に、またしても麗美に親を蹴られてしまった。
「ごめんね。アナタにも連荘はさせないよ?」
「まだ3局あるだろ」
和弥の言葉に我慢できなくなったのか、今日子は大笑いし出した。
「あはははははっ! 強がってないで、いい加減泣き入れたらどうなのっ!?」
親を失っての南2局。ドラは九萬。
(………ずっとこんな配牌しか来てくれないわね)
(こんな腐った手でどうするんだろ………)
後ろで悲壮な気分になっている小百合と由香だが、和弥は変わらず平然と第一ツモに手を伸ばす。
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