第22話:敢えて妨害
7巡目。
麗美が筒井から、ペン七筒をチーする。
おかげで和弥は六索をツモり、タンヤオ・ドラ3のダマテンカンチャン待ちが、両面の四・七索待ちになった。
(両面待ちに変わってくれたわ。親満確定だし、流石に竜ヶ崎くんもここはダマテンにとるのね)
すかさず三索を捨てる和弥。小百合も和弥の“先制パンチ”を確信する。
「ポン」
しかし今度は、麗美が何と和弥の三索をポンしたのだ。
(………!?)
小百合が驚くのも無理はない。
ネット麻雀はともかく、“久我崎を一流校にした”と日々綾乃や龍子から聞かされていた麗美が、こんな鳴き方をするとは思っていなかったからだ。それは和弥も同じである。
(チ………。三色か筒子の一通か。役牌片和了りもあるな)
和弥のツモ切りのあと、今日子も白をツモ切りした。
「ロン。1,000点」
「言っておくけど、通しなんてしてないわよ?」
「はいはい。必死になって俺の親を蹴ったのか。でもドヤる割りにはやっすい麻雀だな」
手牌を倒し収納口に落とす和弥だが、麗美も負けていなかった。
「強がらなくていいよ。親のチャンス手を潰されてホントは悔しいんでしょ?
第一打の九筒の次がダブ東で、今度はドラ表。その捨て牌を見て、早くて高い手だって気づかないほど私はバカじゃないよ?」
「ほぉー………。ちっとは分かってるみたいだな」
光景をニヤニヤと見ていた筒井が口を挟む。
「ああ、君にも紹介しておいてやるよ。この女はウチの部長、花澤麗美。このヒトと俺で、久我崎は一流校になったようなもんだ。
君みたいなちょっと麻雀齧った程度の人間が、何とかなる相手だと思うなよ?」
「………強くなったのは少なくともテメーのおかげじゃねえって事だろ。茶髪ハダカデバネズミが」
「なっ!?」
表情を変えず雀卓の収納口に牌を落とす和弥だが、周囲は再び凍り付た。出っ歯は筒井本人が一番気にしているのを、久我崎の麻雀部員達は知っていたからである。
あっさり親を蹴られ、東2局が始まった。
和弥はまた好手の一向聴。しかし………。
「ツモ。500・1,000」
麗美は徹底して和弥のキー牌を絞って鳴かせず、逆にまたも和了られてしまう。
(なるほどな。やってくれるぜこの女部長。席決めもせずに俺の上家に座ったのはこういう理由か)
一方、和了って再び和弥のチャンス手を潰した綾乃は鼻歌を歌いながら、和弥を横顔をチラリと見た。
(ごめんね~新一さんの息子くん。確かに筒井くんは嫌な性格してるけどさ。でも………)
山から4個づつ牌をとる麗美。
(部員を目の前でコケにされて大人しくしてるほど、私は丸い性格はしてないんだ。悪いけど、今日はキミに決定打は一度も和了らせないよ)
和弥の雀力は認めている小百合だが、後ろから見ているだけで麗美の力量を即座に理解する。
(筒井さんは問題じゃないわ………。本当の敵は花澤さん……どうするの竜ヶ崎くん?)
対して綾乃は、この対局を非常に興味深く見守っていた。
(ハナちゃん、ワザと意地悪してるねぇ~。さてさて。どうするのかな?)
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