第246話:ギリギリ・3
「やるね、お兄さん」
「流石竜ヶ崎のセガレだけあるな」
二階堂と八神も今の親ッパネには感心したようだ。
ラス目の和弥が最も苦しいように思えるが、ここから連荘出来るという強力な権利を持っている。それを考慮すると、親番がもうない龍子の方が難しい立場にあると言えるかも知れない。
(あの時は上手く逃げられたが……今日は逃がしはしないっ!!)
拳を握りしめる和弥である。
超大差を付けているならともかく、今の親ッパネで差は一気に縮まった。何度も連荘されるようなことになれば簡単に逆転されてしまうのだから。彼女にとっての理想はこのまま逃げ切るというコースである。
しかし前に出れば出るほど、放銃のリスクは高まる。麻雀の負けの半分は自滅───和弥が秀夫から学んだセオリーの一つである。つまるところ麻雀はその判断に尽きるのかもしれない。
「今局の配牌は全員が落ち着いたものになっているね……」
「ハナちゃんは今の彼から逃げ切れる自信ある?」
「さあ…。彼の逆境からの強さは決勝で骨身に沁みたから」
綾乃の質問に答える麗美。
南3局一本場。ドラは四索。八神が役牌対子をふたつ使い切っての萬子の混一色に寄せられそうな牌姿をしているが、役牌が鳴けなければ相当に時間がかかりそうな点と、ドラの色が合っていないという点が一概に好配牌とは言えない状態になっていた。
平凡な配牌をもっとも早く形にしたのは、龍子であった。バラバラだった牌をひとつも間違えず重ねていき、七対子の一向聴に。
そして9巡目。選び残していた三牌のうち、一牌が重なった。
ドラは四索だ。龍子は引いてきた東を手牌の端にくっつけ、そのままの姿勢でしばらく手牌を見下ろしていた。
ここでの選択肢は4種類。初牌の發で待つか、一枚切れであるドラの四索で待つか、そして、それぞれリーチをかけるかダマにするか。
「ここは難しいね…。あの捨て牌ならチートイ丸バレだし…」
「私はドラ単騎ダマかな。生牌で待つならリスクは同じだし」
「私なら發待ちダマ。さてさて、無敵の龍がどんな選択をするのか見物だね」
綾乃・麗美・恵がモニター室で好き勝手な会話をしているが、勿論龍子にそんな会話が聞こえる訳がない。
やや長考の末に龍子が選んだのは、ドラ単騎ダマという選択であった。たしかにリーチをかけずとも他家から出ればハネ満なので、それで決着がつく。
しかし、その龍子の長考を見逃す和弥ではない。
(張りやがったな…ドラ絡みのチートイ…)
ドラは和弥が2枚使いなので、既に牌山には存在しないのだ。この形ではドラはほぼ順子固定なので、手から出ることはない。もう一枚も使われてるので、龍子のドラ単騎は完全な純カラである。
その直後───次のツモ番で和弥が引いてきたのは、五索であった。タンヤオに移行するため、当然一索が切り出された。
「リーチ」
一筒では平和安目なので、当然ここはリーチに行く。
3巡後。その一筒をカタリと横に置く和弥。
「ツモ。安目だが4,000オール」
結局4回戦目は、和弥のトップで終わった。
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