第245話:ギリギリ・2
そのまま巡目が進み、3巡後、八神が自分のツモ番で再び口を開いた。
「カン」
彼は持ってきた九索を卓の右端に持っていき、手のうちの3枚とともに晒した。暗槓である。それを受け、王牌の前にいる二階堂が人差し指一本で新ドラをめくる。新ドラ表示牌は三筒、すなわち四筒である。
「ツモ」
龍子はゆっくりと牌を置く。ツモったのは六索であった。中、ドラ4───親満のアガリである。
「やるね、龍子ちゃん。余計なことはするんじゃなかったな」
点棒を支払いながら、八神が言う。彼は続けてこう訊いた。
「四索じゃなくてドラを勝負したのは、ただ単に両面を選択したかったから?」
「中途半端な高得点を追ってカラテンのシャボ待ちにするくらいなら、ドラを切って当たったほうがまだ納得しますから」
「カラテン?」
今度は和弥が問い尋ねた。
「一筒は場に一枚と、二階堂さんが持ってる。ドラはキミが一枚、二階堂さんが一枚ずつだ。違うかね?」
「へぇ……ご名答ですよ」
牌を伏せる和弥。龍子に4,000点を渡しつつ、牌を伏せる和弥。
「ドラのありかの根拠はなんだろうね?」
モニター室で思わずキョトンとする恵。
「竜ヶ崎くんの捨て牌、中盤でニ索と八索が捨てられている。索子がドラ含みで2面子完成してる、って読んだんじゃないかな」
「あまり捨て牌飾るタイプじゃないもんね。牌効率打法の弱点だよ」
「……それにしても、さすが“無敵の龍”だね。あの手を一手も間違えず親満に仕上げるなんて…」
「余計な槓のおかげもあったけどね〜」
モニター室で綾乃・麗美・恵に褒められてることなど知らず、12,000点を回収し点棒入れにしまう龍子。
思えば先ほどの息が詰まるような局面ですら、彼女はいつも通りの目だった。感情の起伏に乏しいほうであるとは思っていたが、ここまで冷徹な女性でもハズだ。
とにかく───和弥は龍子のそんな様子に、違和感を抱いていた。彼女もまた、なにか事情を抱えているのだろうか……
「ツモ。500・1,000は600・1,100だ」
タンヤオ・ドラ1で二階堂が龍子の親を蹴るが、自分の親も和弥に流される。南3局が始められる。親は和弥。ドラは西。
前局の勢いそのままで、配牌は悪くない。
「ここいらで、そろそろ和了らせてもらおうか」
そう言って、この局のドラである西をパシンッ、と河に置いた。
「ポン───そんなに楽に和了れるとでも? 私も甘く見られたものだな」
「あーめんどくせ。わかったわかった、意外に絡みますね先生って」
「この局もトップを狙っているのでね」
「どうぞご勝手に。こっちもトップを目指していくのみだ」
「威勢のいいお兄さんだな。俺ら2人がいるのも忘れないでくれよ?」
その会話をしている間に、二階堂が切った牌を龍子が鳴くという行為が最初のドラポンも含めて3回行われた。結果、龍子の手牌は瞬く間に聴牌となった。
「鳴かせた俺が言うのもなんだけどさ。そんな待ちで和了れんの龍子ちゃん? お兄さんに追いつかれて放銃とかしても責任取ったりは───』
「リーチ」
会話の直後に牌を曲げ、リーチ棒を横に出す和弥。
「先生も張ってるんだろ? めくり合いだな」
(筒子を引けば終わりだ。だが逃げるくらいなら最初からリーチなんてかけたりしない!!)
───「ツモ」
次巡。静かに牌を置く和弥。裏も一丁載った。
「メンタンピン・一発・ツモ・裏。6,000オール」
反対に、トップに立った龍子の点棒の雲行きが怪しくなってきた。今の手も、間違いなく七筒をツモれる自信はあった。
配牌の調子は悪くない───というより絶好調なのだが、最終的に和弥にこのような和了を許してしまったのだ。
もう親番はないのだ。希望を見出すことは難しいだろう。




