第243話:負の連鎖
「ツモ。500・1,000」
1回戦目は和弥の圧勝だった。しかし…。
「リーチ・ツモ・中・面前混一色。6,000オール」
「メンピン・ツモ・三色・ドラ3。8,000オール」
2回戦・3回戦は龍子が文字通り暴風雨を吹き上がらせ、和弥は3位・最下位。
二階堂も八神も嫌がらせのように着順確定和了りをしてくるから、和弥には厳しい対局だった。
「それじゃあ、4回戦の前に10分休憩にするか」
八神がそう言って牌を伏せた。
「異議なし」
和弥もそう言って牌を伏せ立ち上がる。
そんな和弥に龍子が話しかけた。
「やはりキミは……麻雀が強いな」
「……」
意外な龍子の言葉に、一瞬言葉が出なかった和弥である。
龍子には正直舐められてると思ったからだ。
「意外ですね。先生からそんなに高く評価されてるなんて」
そしてやっとの思いでそう聞いてみた。すると───
「私はね、キミが『麻雀が強い』と言ったんだ。勘違いしないでくれ」
「……?」
最初は龍子の言葉の意味を、和弥は理解できなかった。
「私はね、キミに興味があるのさ。だから……今日はとことん打とうじゃないか」
「……」
そう答えた龍子に、やはり和弥は言葉を失うのだった。
しかし前回は半荘1回戦で終わり。今回は恐らく8回戦はいくだろう。
そう思うと再び闘志が湧き上がってきた。
休憩が終わり4人が戻ると同時に、4回戦目は開始された。
東1局。ドラは六萬。配牌の様子を見るに、出端からリードしているのはやはり龍子だった。
彼女にとっての理想はやはり明確なターゲットを作りだせるロン和了りだが、そう易々と振り込む面子ではない。そうなると目指すは単純明快なハネ満ツモである。
「既に翻数の問題はクリア。タンピンに纏めていってリーチをかければあとはツモるだけ……」
モニタールームで見ていた麗美が、唯一気になる箇所は七萬が雀頭になった場合にドラの六萬が出ていってしまう点。だが、なにせまだ1巡目なのだ。雀頭を他で作るぐらい、造作もないことだろう。
しかし───龍子は捨て牌の一列目を、すべてツモ切りで埋めた。萬子の下やズレている索子などばかりを引き、一向に手が進まなかったのだ。
反対に手出しを繰り返して聴牌までこぎつけたのは、親の二階堂であった。配牌の段階では両面塔子すらひとつもないバラバラの状態だったが、今は見違える手牌である。
567の三色の変化を待ちつつ、出アガリの期待値を上げるためのダマテンであろう。
他の3人については、龍子は前述したとおり足踏み状態から抜け出せずにおり、八神は六種七牌から無理やり純チャンに向かっていたものの、二階堂のダマテンに気づいたのか途中からはオリに回っていた。
そして和弥だが───9巡目、彼の手はこのようになった。
四筒を切れば高目三色のタンピンテンパイ。和弥は当然四筒に手をかけた。
「リーチ」
しかし、次の瞬間───
「ロン」
二階堂が手牌を倒す。平和・赤・ドラで、5,800の和了りである。




