第241話:無敵の龍、再び
あと2名、来るのは誰なのか。
「あの……」
和弥がそう切り出すと───
「ん? なんじゃ?」
「他の2名は……?」
すると中年はこう答えた。
「……ああ。あとの奴らか。もうそろそろ来るだろうよ」
中年はそう言うと、和弥に背を向ける。
(おいおい……なんだよ。こっちは時間厳守で来たってのに)
そんな態度に少し苛つく和弥だった。しかし───
「あ! 八神さん!!」
そう言ったのは麗美だ。そして───
「おー!! 久しぶりだな、嬢ちゃん!」
そう答えるのは、花澤麗美に『八神』と呼ばれた中年である。
「え……?」
2人のやり取りを聞いて驚く和弥。そんな和弥に麗美が説明するのだった。
「この人は八神さん。私の知り合いの代打ちで、この裏カジノにもよく出入りしてる人なの」
「ああ、そうか……」
(代打ちか。少しは面白くなりそうだな)
和弥は少しだけ安堵した。
(まあ、花澤麗美みたいな奴が2人も3人もいるわけないしな)
そんな思いも頭に過る。すると───
「ほら。金はこれでいいか?」
後ろから聞き覚えのある女性の声だった。
「!?」
後ろを振り返ると、立っていたのは麻雀部顧問・東堂龍子その人である。
「な……、なんで先生がこんなところにいるんだよ…?」
驚愕する和弥に龍子が答える。
「私は『八神さんの連れ』だと言ってある」
「……悪い教師だな」
「未成年でこんなところにいるキミに言われたくないな」
「……」
そんな会話をしていると、再び麗美が和弥に話しかけてきた。
「じゃあ八神さん! こっちで勝負しよ?」
「お? ワシはかまわんが」
そして龍子が和弥を茶化す。
「……よかったな竜ヶ崎。キミもここで麻雀が出来るぞ」
「花澤麗美の言っていた『退屈させない』とはこういう意味か」
以前龍子に大三元を和了がられ逃げ切られるという、苦い思い出が蘇った。
(あの時は完全競技ルールだったが…赤アリならどうだ)
和弥はそんな事を考えていた。
「じゃあ、4人そろったし早速始めようか。完全順位制のオカは1位600万、2位200万。3位はマイナ200万、最下位はマイナ600万」
(……なるほど。見せ金3,000万の理由はこれか)
「じゃあ、始めようか」
八神がそう言って椅子に座った。
「私はキミの対面に座らせてもらおうか。キミの顔が良く見えるようにな」
「上家だろうが下家だろうが構わないけどな」
先ほどの中年も口を挟んでくる。
「二階堂じゃ。俺もどこでもOKじゃ」
そんな訳で、和弥の上家には八神、下家には二階堂、そして対面には龍子が座ることになった。
1回戦目の東1局、親は八神である。




