第240話:気乗りのしないまま
以前よりも何故か熱の入らなくなった高レート麻雀。そして新入部員・莉子の登場。
マンションに戻ってからの和弥は、ハァ、とため息をついてソファーに横になった。
「早く週末になんねーかなぁ……」
思わずそんな独り言が漏れてしまう。
和弥のスマートフォンが鳴ったのは、それから1時間ほど経ってからだった。
電話の主は綾乃だった。
「……もしもし?」
『あ! 竜ヶ崎くん。ハナちゃんがさ、竜ヶ崎くんの電話番号教えてくれって。いい?』
「ハナちゃん? 花澤麗美がか?」
『ああ、うん。花澤組の賭場で打ったでしょ? それで連絡先知りたいって』
「ふーん……。まあ別に構わないけど」
『じゃー伝えとくねー!』
そんな綾乃の言葉で電話は切れた───
(花澤麗美がか……)
少し嫌な予感がした和弥だったが、その予感はすぐに的中するのだった。
翌日、和弥は久々に汗を流したくなり「ジムにいくから」と部活を休んだ。
そして───
キックボクシングジムでのひと汗を流した後、和弥がスマートフォンを確認すると知らない電話からの着信がある。
勧誘業者か?
そう思い検索してみたが、番号は迷惑電話情報には引っかからない。
(……花澤麗美か…)
練習を切り上げたあと、改めてその電話番号にかけてみた。
すると、すぐに花澤麗美に繋がったのだった。
「もしもし? 竜ヶ崎ですが」
『あ! 新一さんの息子さん? 昨日綾乃から番号聞いてさ』
「何か用か?」
『今度の土曜日なんだけど、高い卓が立つの。よかったら打たない? 絶対退屈はさせないから』
「え……?」
そんな意外な誘いに少し戸惑う和弥。
『見せ金3,000万! どう?』
「おい。いくらなんでも見せ金高すぎだろ」
『いいじゃん。勝負に絶対はないんだからさ』
「……まあ、考えてはおくよ」
そう答えて電話を切る和弥。
(3,000万か……)
確かに魅力的な金額ではある。
(しかし…西浦家のジジイ共みたいな連中でも来るのか?)
そう思うと、あまりいい気はしない。しかし───
(まあ、行ってみるか)
そんな軽い気持ちで和弥は参加を決めるのだった。土曜日の夜8時前、花澤組の店“ルーチェ”に赴いた。
店員の例のカードを見せ、裏賭場に入る。
「あ! 来たわね!」
麗美が和弥を見てそう言った。
「あれ? 他の奴らは?」
「まだ来てないわ。あんたが1番乗りよ」
「そうか……」
少し拍子抜けする和弥である。すると───
「お、お前さんが新一の息子か?」
そんな声と共に現れたのは、見た事もない中年である。
「…はい。竜ヶ崎です」
和弥がそう名乗ると───
「そうか! ワシは以前お前のオヤジにこっぴどく負けたことがあってのう」
中年はそう言いながら和弥に近づいてきた。
(オヤジよ…色んなとこで勝ちまくったんだな)
そんな意外な話に、一瞬固まる和弥だった。
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