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第239話:和弥への評価

 次の日は初日以上に細かくうるさく、莉子に対する麻雀講座が繰り広げられた。莉子の後ろに常に誰かがいて、莉子に教えている状態である。もっとも、その講座に和弥はいない。


「竜ヶ崎くんはねぇ、莉子ちゃんがある程度基礎技術やルール、セオリーの知識を高めてから教えてあげてほしいな。キミの麻雀はそういう麻雀だから」


 ノンシュガーのカフェ・オレを注いだカップをソファーに座った和弥に差し出しながら、綾乃はウィンクした。


「応用、ねぇ…。まあ俺はなんでもいいけど」


「部長の言う通りよ一ノ瀬さん。麻雀を一通り憶えてから、彼から教わった方がいいわ」


 莉子と対局している小百合も、綾乃には同意したようである。


「でも和弥クンの打ち方真似して、これ以上厄介な打ち手が増えたら困りものじゃん」


 横から口を挟んできたのは由香であった。


「………」


 サシ馬を打って由香の本当の実力を知っている和弥は、何も言わずカフェ・オレを啜る。


「───やっぱり、お前と話してると無駄に疲れるな」


「ちぇ、素直じゃないなぁ~」


 由香は溜め息をひとつ漏らすと、再び莉子との対局に集中した。


「まずは配牌で平和(ピンフ)・タンヤオ・三色が出来るかをチェックしろ」「4枚目が出たから大明槓(ダイミンカン)は素人がやりがちなミス」など自分たちが初心者だった頃に教えられたことを散々莉子にも教え、この日の部活は終了した。

 特にド素人の後輩が出来たのが嬉しいのか、今日子は喜々として莉子に教えていた。


(特にやることないな俺……。こんなならどっかの雀荘いけば良かったな)


 莉子が一通り基本を憶えてからの講師という名目の和弥は、内心あくびをしていた。


◇◇◇◇◇


「ねえ、紗枝?」


 帰路の途中、突然、莉子が紗枝に向かって話しかけてくる。


「なになに? ───顔怖いけど」


「あの竜ヶ崎先輩って、一番強いの?」


「はぁ……というか、どうしてわかったの? 確かにウチの部じゃ一番強いけど…」


 莉子が来る前は“6番手”だった紗枝にも、和弥の強さは十分に分かっていた。


「そりゃ、大会のことを検索したし」


「そ、そうなんだ……」


『普段は雀荘で打っている』などとは流石に言えず、紗枝はとにかく莉子に話を合わせる。


「私が一通り憶えたらあの人が教える、ってことだけど」


「マジ目からウロコだよ、竜ヶ崎先輩の教えは。そのためにも莉子も早く憶えないと。少なくともチーすべきかどうかはすぐに判断出来るくらいにならないとね」


「はいはい、分かってますよ〜」


 そんな一年生同士の会話など(つゆ)ほども知らず、紅帝楼(こうていろう)に向かう和弥だった。

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