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第236話:強敵を求めて

「飛んじまったか。それならしゃあねぇ、俺の負けだな」


 治は溜め息混じりにそう言うと、おもむろに立ち上がった。


「帰るか。悔しいね。でも今までの敗北の中じゃ、一番楽しかったよ」


「……そりゃどうも」


 治は勝ち金を受け取ると、そのまま店の出口へと歩いていった。

 和弥は声をかける訳でもなく、そのまま見送るのみである。

 そのあとは別の客が入り、半荘(ハンチャン)ほど打ったが2位一回に連続トップ。

 しかし何の興奮もなく、用事があるからと和弥は卓をあとにした。

 1,000点100円(テンピン)なので、勝ち金は20,000円にも満たない。

 しかし今までの紅帝楼(こうていろう)では得られなかった満足感が、和弥の心を満たしていた。


(………)


 ───こうして外に出てきたワケだが、行きたい場所などは特にない。そろそろ夕食の時間だが、不思議と空腹も感じられない。和弥は当てもなく裏神威町を歩き回っていた。

 五条治との白熱した麻雀を打ったあとなので、どこかのフリー雀荘で打とうという気にもなれない。

 ルーチェの裏賭場にでも行くか? そんなことも考えたが、ルーチェもレートが高いだけで期待外れもいいとこだった。

 仕方ないので、その日は帰路につくことにした。


◇◇◇◇◇


 次の日もフラリと登校した。


「か…竜ヶ崎くん。今日は部活は?」


 小百合に和弥ではなく竜ヶ崎呼びされると、ここは学校なんだと実感する。


「一応は顔出す予定だ」


 気の抜けたような和弥の返答を聞いて、小百合も理解しかねたようで眉をひそめた。


「どうしたの竜ヶ崎くん……? 何か元気ないように見えるわ…」


「説明するのは難しい…。いや、出来ないかな。とにかく、あれだけ馬鹿にしてた学生麻雀を少し見直してる、というが今のところの心境だ」


「……」


 歩きながら、小百合は質問を変えた。


「お金のかかってない麻雀なんて興味ないって言ってたのに。随分心境の変化があったみたいね?」


「まーな。それぐらい、大会で会った連中は衝撃的だったってこった」


「……そう。貴方が競技麻雀を見直してくれたのなら、嬉しいわ」


 2人でおしゃべりをしながら歩いていくうちに、麻雀部の部室前についた。


「この部室に来るのも、マジで違和感なくなったなぁ」


「ええ。考えてみたら麻雀部って部員は6人しかいないのに、結構立派な部室を貰ってるわよね」


 小百合が感心したようにそう言った。


「じゃ、入ろっか」


 ガラッ───


「……あれ? 珍しいわね。私たちが一番乗りなんて」


 小百合も流石に驚いているようだった。


「でも鍵は開いてたって事は、白河先輩は確実に来てるんだろ。少し待つか」


 和弥と小百合は、ソファーに腰を下ろした。

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