第234話:逆襲
(出和了りなんて期待しちゃいない。自力でツモってやる)
───ところが、和弥の気合とは裏腹にそう上手くいかないのが麻雀である。
「ロン。1,600」
安手合戦も治に軍配が上がった。
変則的な捨て牌から七対子のニオイがプンプンだったが、あまりにもそのままである。
とはいえ飛行機と麻雀はアガってナンボ、なのだ。
(…この野郎。三・六萬ガメってやがる)
その時、治の口角がニヤリと上がったように見えた。果たしてこの三・六萬を意図して止めたのか、それは分からない。
しかし結局、スタートダッシュをそのまま決めた治が逃げ切り、1回戦目はトップ。
治の勝利で終了したのである。
「1回戦目は俺の勝ちだな」
治は鼻高々な様子であった。
「詠うのは3戦終わってからにしな。まだ2戦目と3戦目が残ってるぜ」
最下位だった中年がサイコロボックスのスイッチを押し、2回戦目開始だ。
東2局。ドラは三筒。挽回のチャンスともいえる和弥の親番だが……。
(最悪だな……ずっとこんなのばかりだ)
安手合戦に敗れてから、ずっと配牌が悪い。エラーを重ねているわけではないが、手なりで役を作れそうな配牌が来ないのだ。
しかし、諦めるワケにはいかない。和弥はまず東から切り出し、とにかく手を広げることに専念しようと考えた。
「渋い顔してんな。クソ配牌しか来ねぇのか?」
「俺の心配より自分の心配でもしてろよ」
治の挑発を無視する和弥。
8巡目。
「ロン。2,400」
「ほぅ! やるな。一枚もかぶらずかっ」
治の挑発も無視する和弥。これで一本場である。ドラは七索。
「やっと牌勢が戻ってくれたよ」
和弥は第一打から牌を横に曲げる。
「ダブリーだ」
───次巡。
「ツモ」
カタリ、とツモ牌を横に置く和弥。
「ダブリー・一発・ツモ・タンヤオ・ドラドラ・赤。8,100オール」
「やるな。いきなり満貫直撃くらったようなもんか」
茶を一杯飲み干すと、治は8,100点を差し出した。
「言っただろ。2回戦・3回戦があるって」
「そう来なくっちゃ。面白くないぜっ!」
豪快に笑いながら、牌を収納口に押し込む治。
「すいませーん、お茶お代わり」
(まだ余裕あるな……だが一旦握った主導権はもう渡さないぜ)
「ツモ。タンヤオ・ドラ。2本場で1,200オール」
(毎回ハネ満や倍満を和了れる訳ではない。安手でも和了れる時は確実に和了る。だよなオヤジ)
このまま細かい手で連荘を続けた和弥は下家の中年を飛ばし、2回戦目は和弥の圧勝に終わった。
「ま、参ったな和弥クンには……俺が飛んじまった」
和弥にガリガリと削られてハコを割った中年は、頭をボリボリをかきながらボヤいた。
「次が最終戦かい。よっしゃ、気合入れて打つか」
(こういうとこは妹そっくりだな…。最初からギア全開だったクセに何言ってやがる)
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