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第230話:迷い

 夏休み明けの立川南高校麻雀部部室。

 ここで和弥、由香、今日子、紗枝の4人が卓を囲んで対局していた。

 小百合と綾乃は勿論ギャラリーである。

 南4局(オーラス)の一本場。


「いいのかよ先輩。そろそろ受験の準備とかあるんじゃねえの?」


「私? 私は推薦取れるくらいには学力高いからご心配無く」


(そうだった…瞬間記憶能力の持ち主だったこの人…)


「文系なんて勉強した事ない、教科書一度見れば全部憶えられるから」という綾乃の言葉を思い出し、また卓に向き直す。由香、今日子、紗枝の4人の打牌をチェックする和弥だが、こんな機会を綾乃が逃す訳がない。


「いやいや、そういうキミこそさ…」


「ん?」


 奥にいた龍子の顔も、いたずらっ子のようにニコニコしていた。


「大会までだって約束だったのに。夏休み明けてからも普通に部室(ここ)に来たから驚いたよ」


「……ボランティア精神の延長ですよ。せめてあと2名、部に入るまではいてやろうと思いまして」


 その言葉を聞いて小百合は複雑な心境になる。

 それにしても、綾乃も龍子も、話してるとどうもペースが狂う。もうシカトするように牌山に手を伸ばす和弥。ツモ牌を確認すると、両面の八索が先に入ってしまった。

挿絵(By みてみん)

(トップの南野とは丁度2,600点差…。一本場の分300で逆転出来る)


 待ちも悪いため、和弥はダマテンを選択。


(まあ、二翻(リャンハン)で逆転なんだから無理にリーチに行く理由はないわよね)


 後ろで見ている小百合も、納得のダマテンである。


「───この、リーチッ!!」


 牌を曲げてきたのは今日子である。『リーチデス』という女性の電子音が、部室に鳴り響いた。


(チ…最近打つおっさん連中よか、はるかに気合入ってるな)


 次巡。半ば叩きつけるように、ツモ牌を置く今日子。興奮気味に裏ドラを確認する。

 一枚乗ったが、大勢には変わりない。

挿絵(By みてみん)

「リーチ・一発・ツモ・純チャン・三色・裏ドラ! 8,100オール!!」


 漫画でも見ないような逆転劇で、見事トップ奪取。爆乳でセーラー服が破けんばかりに、今日子はのけ反り気味に鼻高々である。


「上等上等。負けたよ」


 由香と紗枝を相手に講釈を始めた今日子を見ながら、3位に転落した和弥は、苦笑いをしながら席を立った。和弥を抑えてトップに立ったのが、今日子はよほど嬉しいのだろう。とはいえ、聞いている由香と紗枝も真剣である。


(西浦家の3,000万ルールでも、花澤組の賭場でも熱くなれなかった。人間ってのはマジで勝手に出来てるな)


 あれだけ馬鹿にしていた学生麻雀に刺激を受け、待ち望んだ高レートはいざやって見ると刺激がない。和弥は何だかいたたまれない気持ちで、ただただ俯いていた。


「ちょっと、完全競技ルールの個人チャンピオンがうなだれてないで! もっと堂々としてなよ!!」


 和弥の代わりに入った綾乃が、口を尖がらせる。


◇◇◇◇◇


「んじゃ、今日はこれぐらいでお開きにする?」


「そ、そうですね。外はまだまだ明るいけど」


「明るいのもだけど、残暑酷くて嫌になっちゃう」


 由香は相変わらずのマイペースで、今日子は上機嫌で、紗枝はいそいそと帰りの支度を始めるのだった。

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