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第225話:1億5000万

「ロン。2,900(ニック)だ。和了(アガ)りトップで終了だな」


(しかしここでそんな甘い牌が出るかね)


 5回戦目も和弥の圧勝であった。5連続トップである。

 最下位(ラス)の中年の座席にいき、3,000万を抱えこんだ。


「もらっていくぜ、これは」


 1億5000万を詰めた紙袋はパンパンである。

 他の卓で打っていた中年達は立ち上がった和弥と小百合の紙袋を凝視するが、和弥は全くお構い無しだ。


「やれやれ。帰りは気を付けた方がいいかもな」


 和弥が立ち去ろうとしたその時。


「兄ちゃん。またこのここには来るのかい?」


「そちらの卓に入れと?」


「まあそういうこった。タネ(せん)はタップリ出来たみたいだしな」


 ───あー、やだやだ。こんなセオリーも満足に知らない中年達と打ったら腕が鈍る。

 そう思った和弥はコホン、と咳払いを入れるとこう切り出した。


「悪いけど俺ら一泊二日でしてね。明日の朝には帰るんですよ」


「面倒なやっちゃなあ……」


 面倒なのはどっちだよ。そう言いたいのを我慢し、和弥はさっさと麻雀ルームを出た。

 入り口では小百合が清美に挨拶をしている。


「ごめんなさいね小百合ちゃん。双葉によろしく言っておいて……」


 清美が小百合に向かってそう言った。彼女はどうやら西浦本家では、まともに話ができる人間らしい。


「はい。伝えておきます」


 和弥は靴を履きながら、小百合と清美のやり取りを見ていた。

 そしてそのまま外へ出て歩き始める。

 和弥はそれだけ言うとそのまま歩き続ける。そして───


「和弥くん!」


 振り返るとそこには小百合が立ち止まっていた。


(……なんだ?)


「……その、今日はありがとう」


「何が?」


「代打ちの事とか……」


「別に。俺がやりたいからやってるだけだし」


 そう返すと小百合は更に続けた。


「でもその……ごめんなさい」


「何が?」


「お母さんが……」


 和弥はそこで小百合の言わんとする事を察した。


「……何か言われたのか?『あんな男やめとけ』とか」


「……いう訳ないでしょう。新一さんの息子である貴方に」


「冗談だ」


 和弥がそう言うと、小百合は顔を真っ赤にし、やや頬を膨らます。


「何でそんなこと……」


「基本『人には好かれない』と思って生きてるからな」


「そんな……」


「……ま、本音を言えば『この話はこれでおしまい』って意味だ。それ以上も以下もない」


 そう言って歩き出す和弥。


「さ、宿に急ごうぜ」


 和弥は振り返った。


「明日の朝イチで東京戻りたいし」


 そう言うと再び歩き出す。


「ここからはタクシー拾おうぜ。こんな現金抱えてると不安だ」


 ───現金1億5000万をもって、和弥と小百合はタクシーに乗り込むのだった。

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― 新着の感想 ―
この場合1泊もしないでタクシーで帰るべきでは……?
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