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第222話:決意

 客間は静まり返っていた。誰に(はばか)ったワケでもないが、和弥は二の句を告げることが出来ない。


「田舎は都会ほど、人間付き合いがドライではないんです。ましてや親戚同士なら猶更なんですよ」


 それを言われると、クラスでも意図して同級生との付き合いを控えている和弥は、何も言えなくなってしまう。

 

(全く……いざとなると人のことあれこれ言えない部分ばっかだな、俺…)


「…俺がやりましょうか? 代打ち……」


 自虐の気持ちから思わず、自然に出てしまった。

 本当は微妙な空気をどうにかしたい理由を必死に考え始めていた矢先、思わず口にしてしまったのだが。


「───よろしいのですか?」


 間もなく、双葉が口を開いた。和弥は慌てて思案をやめ、彼女に視線を合わせる。

 言ってから和弥は後悔していた。


(チ……何やってんだ俺。『損か得か』でしか動かないって決めてるのに…)


 麻雀部に入ってから、どうも自分はおかしい。以前の自分はこんな事を言い出すタマでは無かったはずだ。しかし今更取り消すのも格好悪い。


「……よろしいのですか?」


 再び和弥は双葉と視線を合わせた。彼女はすっと目を閉じて白濁した瞳を隠すと、口元を微かに歪めてからおもむろに話し始めた。


「貴方が代打ちをしてくれるなら、本当に心強いです」


「………夏休み中にやってくれるとありがたいんですが」


 ───なんとなく、この人のことがわかってきた気がする。彼女に対して抱いていた畏怖は、次第に薄れていった。そうして和弥は、吹っ切れたかのように気を楽にして返答した。


「……わかりました。貴方にも関係がありますし、詳細が決まり次第小百合に伝えます」


「頼みます」


◇◇◇◇◇


 後悔しながら西浦家の門をくぐる和弥。


「ごめんなさい、和弥くん…」


「気にするな。てかまんまとやられた気がするな。まあ承諾しちまった俺が一番悪いんだが」


 和弥は今になって、つい調子に乗ってしまったことを後悔する。しかし麻雀勝負で頼られるのだ。悪い気分ではない。


「出来れば東京に出てきてくれるのが一番ありがたいんだがな」


「……それは分からないわ。多分本家でやると思うけど」


「だろうな。下手すりゃ宮城行きの切符を買わなきゃならないか」


 マンションに戻った和弥はシャワーを浴び、ソファーに倒れ込むと急激に眠気が襲ってきた。

 時計を見ると針が指している時刻は午後の7時。今眠ってしまったら、真夜中の変な時間に目を醒ましてしまいそうだ。

 しかし、この眠気には抗えない───和弥は目を閉じ、全身を支配している心地良さに身を預けるのだった。

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