第216話:暗中模索
いよいよ由香の親番。
(ここを流せば…)
ここまでトップは由香だが、まだ和弥の親は残っている。どちらも親番のひと和了りでトップに出ることができるのだ。
肝心の配牌だが───和弥は正直、中々の配牌だ。ドラの八索を含む456678の順子がひとつ完成している二向聴である。
七筒に何かくっつけば、すぐさま聴牌に持っていけそうだ。河の一列目が終わるまでには完成しそうな形である。この状態での理想は六・八筒引きだが、萬子の下でも、中張牌さえ引ければなにも問題はない。
引っ張ってきたのは六筒。六・九萬、五・八筒の受け入れ4種の一向聴である。ここまで来たら雀頭は固定。一筒切りを選んだ。
(この局の決着は早そう…)
このパターンに入った時の和弥の強さは、誰よりも小百合が知っている。
(欲をいえば678の三色が欲しいわね…)
ただ和弥の場合、何をしようとアタリ牌が5枚残っていればリーチにはいくだろう。麗美、恵の配牌はわからないが、流石に1巡目一向聴より早いということはないはずだ。
それから3巡目、ムダヅモだったが───ついに和弥が六萬を引き入れて聴牌を入れた。現状でも7,700、高目八筒でハネ満である。
「リーチ」
(さすがに竜ヶ崎くん、ダマ選択はないわね)
この局はあくまでも親である由香の和了りさえ防げればいいのだ。その為にも牽制の意味でのリーチ攻めなのだろう。
一方、由香は苦しい配牌とツモに翻弄されていた。
索子のリャンカンができたというぐらいで、配牌からさして変わっていない。せめて役牌のひとつでも重なってくれればまだ動ける分希望はあるのだが、抱えているうちのひとつである發は既に二枚枯れているので安牌にしか使えない。
彼女が聴牌する頃には、敵方のどちらかがアガってしまっているだろう。
その2巡後───本当に恵がリーチを宣言してきた。
(これはまずいわ)
そう由香が思いきや、
「ロン」
その宣言牌、五筒を和弥が討ち取った。裏は無し。
「メンタンピン・ドラ。7,700」
小百合はホッとした感情半分、驚きの感情半分で和弥のこの和了りを見つめる。
間違いなく、恵も大きな手だったのだろう。あまり捨て牌に迷彩などは施さない和弥だ。その和弥に五筒で立ち向かうなど、あまりにも怖いもの知らずすぎるからだ。
「ま、次は私の親だね」
麗美が機嫌良さそうに呟く。その言葉を聞き、由香の表情に微かな緊張が走ったように見えた気がした。
(一番厄介な人が親よね…でもこれを流せば…)
まるで自分が打っているかのように緊張する小百合である。
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