第214話:再来する三元牌
「ツモッ!!」
2巡後、麗美はそのツモ牌を盲牌で識別し、手牌の横にそっと置いた。
「メンピン・ツモ・イーペーコー・ドラ。裏は…」
裏ドラを確認する麗美。
「おっと、裏が一筒。3,000・6,000」
読もうが当たり牌を止めようが、ツモられては仕方がない。こればかりは和弥であろうと、どうすることも出来ないというもの。
フッ、と笑った恵がそのまま、手牌を裏返して卓の中央に流し入れるが───
小百合は見た。収納口に流れていく牌にバラバラの東や北が見えたのを。恵も捨て牌が異様だとは思ってはいたが、国士無双狙いだったとは。
全く油断もスキもない。
この2人を相手に完全競技ルールで個人戦優勝を果たした和弥を、改めて凄いと思う小百合である。
一時和弥のリードで勝負あったように思えた局面が、今の麗美のハネ満ひとアガリによって良くも悪くも偏ってしまった。勿論由香はマイナスだけに、和弥としてはこのまま逃げ切りたいところだろう。
東4局。
「ポン」
───第1打にして、早くも仕掛けが入る。親番である恵が切った白を見て、麗美が仕掛けた。
「珍しいね、花澤さんが早鳴きなんて」
これから連荘したいと思っている直後の局面だ。満貫を和了った後だし、どっしり構えてくると思ったのだが。
小百合はあのトレマの事を思い出す。
白の片アガリで、和弥の親を蹴った麗美を。しかし事情は違ったようだ。
「ポン」
今度は發鳴きである。
「……やれやれ。2回もツモを飛ばされちゃった」
ツモが飛ばされ、苦笑いをする由香。再び回ってくるツモを引きながら、和弥は表情も崩さず。
副露からして小三元、あるいは大三元の気配すら漂うのに。
「勝負してみたら?ひょっとしたら違ってるかもよ」
和弥を煽る麗美。
小百合の脳裏には、龍子と対局し大三元を和了られたシーンがフィードバックした。
そう。和弥が唯一完敗を認めた、あの龍子との対戦である。
「そうだな。そのときが来たなら、試してみるのもまあ悪くはないかもしれない」
「いまはまだそのときではないと?」
「中がこないんだ、どうしようもないだろう」
「……あっそう」
───こんな状況でも、4人に緊張感というものはないようだ。まるで50円、100円の麻雀をやっているかのような雰囲気である。
(1,000点1,000円、しかも竜ヶ崎くんは100万のサシウマなのに…)
改めて、和弥の強靭なパーソナリティーに驚く小百合である。勿論和弥が負けるとは考えてないが、もし万が一のことがあれば───気が気ではない小百合である。
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