第212話:リードしているはずの焦燥感
東2局。ここもまた問題である麗美の親番だ。彼女は東1局、不気味なほどに静かなままだったが、親番となればなにか動きを見せてくるのだろうか。
そう考える小百合だった。
また、恵も東1局は聴牌すら入れていない。副露を入れることもしていないので、手が入らないというよりは様子見に徹しているように見える。
しかしこの局、果敢に動きを見せたのは由香であった。4巡目に恵が切った北を一鳴きし、続く次巡に五萬を46の形で仕掛け、六巡目にしてテンパイを入れた。
ドラは九萬なので、役牌・一通・ドラ1で3,900である。アタリの二萬は恵の捨て牌に一枚、和弥の手に234の形で一枚だ。
(萬子の下が全体的に多く切り出されている…。残り2枚の二萬が山に生きている可能性は十分に考えられるわ。今度こそはあたしの和了りかも知れない)
しかし無駄ヅモが3巡後───
「リーチ」
今度は恵がリーチ宣言だ。2人のめくり合いが始まる。
悪くない待ちであった二索も、めくり合いとなってしまえばカンチャン待ちというデメリットが強く出る。ここで恵のリーチならば広く手を作っているハズなので、現状の不利は明白だ。
由香のツモ番。和了り牌にはかすりもしない、4枚目の白。そのままツモ切られる。
そして次のツモ番である麗美は、持ってきたツモ牌には見向きもせずに、面子の中の二萬に手をかけた。
一発避けでリーチ者の現物を切るのは当然だが
「ロン」
ともあれ、麗美が二索を切り出したことにより、由香が和了り。
「アチャ〜モロカンチャン…」
4,000点を払い、100点をお釣りでもらう麗美。
東3局。いよいよ和弥の親である。ドラは五筒。
(いけるわ! 十分形じゃない)
ドラは五筒。唯一の欠点である筒子の愚形も、萬子の連続形を三面張として見れば問題ない。鳴いて手堅く3,900を拾うのも悪くはないが、さらにトドメという状況を考えればやはり面前で纏めて親満、親ッパネまで育てたいところ。
一方の由香は初手が字牌。前局で和了を決めているというのに七種九牌と苦しい配牌だった。
(こりゃあ七対子狙いつつ、イザとなったらオリかな…)
そう自分に言い聞かせる由香である。
3巡後に五萬を引いた和弥は、八筒を切って完全一向聴の形に構えた。
どこが埋まっても良形が残るタンピンの一向聴。
(リーチをかければ一発や裏ドラ次第でハネ満まで見えるわ…)
鳴きの判断という面では、満貫が確定するドラポンの五筒、もしくはドラが出ていかない形でテンパイできる六のポンというふたつのパターンが有力か。和弥のことだ、2,000点のテンパイとなってしまう、四・七筒、二・五索のチーは避けたいところだ。
しかし、有効牌を引き入れることも、鳴きが出来る牌が切り出されることもなく、3巡が経過した。麻雀を打つ者ならば誰しもが抱いたことがあるであろう嫌な感覚、焦燥感───和弥も、心中ではそんな感覚に苛まれているのだろうか。
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