第206話:由香との勝負
東2局、今度は和弥の親。ドラは一筒。
和弥の配牌
(筒子の順子が2組、ペンチャンが入れば一通完成…。素直に混一色・一通でいいか)
しかしこのような状況はかえっって難しい。確実に浮いていて不必要な牌が、一枚もないのだから。
対子を落とすなら、二筒か南。タンヤオ狙いなら南を落とすべきだろうが、ドラが一筒、さらに九萬もあるから結構遠回りになってしまう。
効率だけを重視するなら八・九筒を落とすのがいいけれど、そんなに簡単な話ではない。
どっちにしろタンピン系を狙っても、捨て牌でバレる。
ましてや、『ただの大物狙い』じゃないのをついにカミングアウトした由香が相手だ。
だからこそ、この手を大きく上がって、由香を含む他の3人にプレッシャーを与えたい。
(読むなら読めっ!!)
和弥の第一手は四索だった。一瞬、場に緊張が走る。
それでも和弥は、強打を止めない。続いて六索、ツモ切りの三索、七筒と強打を続ける。
序盤から中張牌を切り出し続けると、手は完成しづらくなる。
逆に言えば、最初から極端な打ち方、特定の偏った牌を捨て続ければ、手牌の方もかなり偏っていることになる。そして、偏った手牌は得てして実りが大きくなるのだ。
「チーッ!」
麗美が動き、由香の捨てた八筒を手に加えて六、七、八筒をそろえる。相手が誰で変わらない、チャンスと見たら鳴いて速攻を仕掛けてくる攻撃的な打ち方だ。
(彼の手が大きいけど重くて遅い。仕上がってしまう前に、手作りを急がないと)
(チ…流石だな。基本大物狙うだが割り切ってサックリ流せるのがこの女の強いとこだ)
恵は6巡目にして四索、次巡に六索を手出しで切り捨て、和弥からオリている気配がする。勿論戦える配牌では無かったのだろうが、和了る道を諦めてでも和弥にアガリ牌を出さない覚悟なのだから、ツモったらそのまま引き込むのは目に見えている。
両隣が和弥を警戒し始めたにもかかわらず、由香は何のためらいもなく生牌の東を捨ててきた。
この巡目で一枚も切られていないダブ東を切るのは、かなり危険なチョイスだ。
(間違いない…南野め、デカい手をガメってやがる)
9巡目。ツモは七萬。
(六索捨てなかったらこれで和了りか…。しかしこの手は最初から染めると決めた手だ…)
そう。この手なら、もっと高い手を狙える。和弥は中と入れ替えで北単騎に構えた。
12巡目。
「リーチ!」
手出しの四筒を切っての由香のリーチである。
(俺が染め屋さんなのは分かっているはず。それ叩いてリーチか。めくり合いなら俺が不利だが引きはしないぜ)
その後の2人の打牌は、四筒の合わせ打ち。麗美も恵も、完全にオリている。
けれど、この調子なら由香が北をツモったらすぐにでも出てきそうだ。
15巡目。由香のツモ番。ツモってきた牌をそのまま切り出す。
「ロン」
「えぇっ!?」
大げさに驚く由香を後目に、手牌を倒す。
「18,000だ」
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