第205話:戦場へ再び
「…はい。“高い卓”で打ちたいと…分かりました。ちょっと待って下さい」
一旦和弥はスマートフォンを顔から離す。
「見せ金は300万だぞ? ああるのか?」
一番打ちたがってた由香だけが、唯一を横に振る。
「……ったく」
そして和弥は再び秀夫に連絡をする。
「一名無いそうです……。はい、分かりました」
スマホを切った和弥は、3人を見ていった。
「だったら隅っこの卓で、バレないようにやってくれってさ。あとレートは聞こえないように、だとさ」
「んじゃ、1,000点1,000円でどう? ウマは1-3で」
「乗った!」
「じゃあ、私も」
「決まりね」
3人は早速奥の卓に移動する。
「あ、あの……」
小百合が恐る恐る和弥に声をかける。
「……いいよさゆ…委員長。残りは俺が入る」
(とはいうものの、今日は持ち金5万しかねぇ…。箱で6万。ほぼ金無しと一緒だな)
しかし小百合の母親の件もある。
勿論出しゃばるな、と言われるかも知れない。しかし久々にピリピリするような高レートで打てる、そんな予感があったのだ。
その為にもこのメンツでの予行演習も悪くない。
「んじゃ、始めるか」
東1局。ドラは發。綾乃の起家。
和弥の対面には由香。上家には綾乃、下家には恵。
9巡目。
(三色狙いでも發暗刻でも、どっちにしろハネ満か…九筒はもう一枚しかない。ならば4枚見えてないこっちで…)
發に手をかける和弥。
「リーチ」
ドラを切っての和弥のリーチだったが…
「ロン。6,400」
捨て牌から予想だにしなかった由香の和了りである。捨て牌が全く七対子に見えなかった。
「全帯公っぽかったんでね。發は一枚も見えてないし、怖くて切れなかったよ」
(チ…。八筒固めてやがった)
点棒を渡しながら和弥は言う。
「部室では苦労しただろ。北条みたいなのを相手に、『常に大物狙いの初心者くさい打ち手』演じてたの」
「あっはっは」
いきなり笑い出す由香。
「やっぱり和弥クンにはバレてたか。あの子、プライド高いから。こっちが下でに出てないとヘソ曲げるし」
やはり、大会の時に感じた違和感は正しかった。
後ろで見ていた小百合も、今まで見た事のない由香の表情に思わずゾッとする。
「ねえ、和弥クン。サシウマいかない?」
「……いくらだ?」
「これでどう? 5回戦で」
由香はカバンから封筒を取り出した。厚みからして100万だろうか。
「悪いが、今日俺は金持ってきてないぜ?」
「後払いでいいよ。サシウマ受けてくれるかが重要だから」
「大した自信だな。受けて立つぜ」
いよいよ東2局。和弥の親である。
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