第204話:キナ臭い空気
隣で小百合は寝息を立てている。朝チュンだった。
また避妊具も付けずにやった事を、和弥は激しく後悔した。
(…シャワーでも浴びてくるか)
自分に言い聞かせるようにシャワー室に向かう。
◇◇◇◇◇
「おはよう、竜ヶ崎くん」
シャワーを浴び、下にジーパンだけ履いて洗面所から出てくるや、入れ替わりで小百合が来た。
「お、おう」
和弥は昨日の事が頭をよぎって、まともに小百合の顔が見られない。
「ねえ竜ヶ崎くん」
シャワーを浴びて髪を乾かしながら、小百合は真剣な表情で訪ねてくる。
「な、何だ?」
「私ね、紅帝楼で麻雀を打ちたいの」
(……おいおい)
「なあ小百合。悪ィ事は言わんから───」
2人っきりの時は名前で呼ぶようにはなったが、未だに小百合呼びには照れくささを感じる和弥である。
「お願い!」
小百合が頭を下げる。
「お、おい……」
(多分お袋さんに『賭け麻雀は打てるか』って言われたのと関係してんだろうな)
そう勘ぐって和弥は渋々……しかしどこか嬉しそうに頷いた。
「分かったよ。但しだ。お袋さんに『なんでそんな事を聞くのか』はちゃんと確認取ってくれよ?」
「ありがとう!竜ヶ崎くん!!」
そう言うと小百合は、和弥に抱き着いてきた。
(やれやれ)
2人はその後朝食を摂り、小百合を連れて紅帝楼へ向かった。
「「いらっしゃいませー」」
「おはようございま───」
和弥が挨拶をするや、こちらに手を振っている連中がいるではないか。
綾乃と麗美、恵、さらに由香までいる。
「あ、来たわね」
「おはよう竜ヶ崎くん……あら?」
綾乃は和弥と一緒にいる小百合に気づいた。
「……ああ。ついさっき一緒になったんです」
気まずそうに返事をする和弥。
「西浦小百合さんだよね? どうしたの?」
まだ小百合と面識のない恵が訊く。すると───
「はい、西浦小百合です。はじめまして。さっきそこで竜ヶ崎くんと一緒になったんです」
(おいおい)
いきなりの自己紹介に呆れる綾乃達だった。
しかし、呆れに似た驚きは和弥も一緒である。
「…どうしてお前がここにいるんだ、南野?」
「へ?い、いや~。その、ね?」
和弥に聞かれ、ばつの悪い顔をする由香だった。
「実は和弥クンと高い卓で打ちたいな、なんてね」
間違いない。由香は特別麻雀ルームの事を知っている。
「……俺じゃなく、秀夫さんに聞いてくれ」
同時に、麻雀部に入ってからずっと感じていた由香に対する違和感。それがどんどん具現化していくのを感じた。
「話つけたいので呼んでくれない?」
「なんでもかんでも人任せにすんなよ」
とりあえずスマホで秀夫に連絡を取る和弥だった。
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