第202話:切り捨てられない存在
和弥が小百合との待ち合わせ場所に到着した時。時刻は0時を回っていた。
「あ……竜ヶ崎くん」
「よう」
小百合はワンピースにサマーセーターという、いかにもなラフな格好である。
「悪いな、遅くなった」
「いいの。私が急に押しかけてきたんだから」
(ま、それはそうだが)
しかし───と和弥は思う。
(しかし、なんだってこんな時間に?)
学年中の男子の人気者である小百合をまたも、マンションに泊める事になったら。
バレたらつるし上げを食らうだろう。
いや、処女をもらった時点でもうヤバいが。
「ねえ竜ヶ崎くん、コンビニに寄っていい?お腹空いたわ」
「あ、ああ。ならファミレスに行こうぜ」
小百合の言うままに、和弥はバイクを走らせる。
「着いたぞ」
着いたのは24時間営業のファミレスだった。
「ここなの? もっといいところでも良かったのに」
「急いで単車転がしてきたから金持ってきてねぇんだよ」
「そっか……じゃあ私が奢るわ」
「……いや、そこまで」
とはいうものの、紅帝楼ではカフェ・オレしか口にしていない。腹が減ってないといえば、嘘になる。
「遠慮しないで。さ、入りましょう?」
(ま、いいか)
和弥は小百合に付き従い店内に入る。
「いらっしゃいませ~」
フロア案内に立つウェイトレスに案内され、窓際のボックス席に通された。
「ご注文が決まり次第お呼びください」
2人分のドリンクバーを注文し、とりあえず飲み物を取りに行く事にした。
「竜ヶ崎くんは何を飲むの? 取ってくるわ」
「……じゃあカフェ・オレで頼むよ。砂糖はいらん」
「分かったわ。待っててね」
(……なんか調子狂うな)
小百合のテンションに和弥はついていけてない。
(でもまあ、悪い気はしないな)
そんな事を考えながら、カフェ・オレを2つ持って席に戻ってくる。
「あ……ありがとう」
和弥が礼を言う。
「いいわよこれぐらい」
小百合も席に着き、ドリンクを飲むことにした。
「……で?何があったんだ?」
「うん……」
小百合が語り始める。
「実はね───」
2日前。小百合の母が電話をもらって以来、何かおかしいという。
「何? どうしたの」
「それがね、お母さんが何かおかしいの」
小百合が言うにはこうである。
「お母さんが『ねえ小百合、あなた賭け麻雀はできる?』って聞かれたの…」
「……は?」
和弥も思わず間抜けな声を出してしまった。
「え……何で急に麻雀なの?」
「知らないわよ! 私、大人に混じって賭け麻雀なんて打った事無いし…」
「…んで。お袋さんの様子は?」
「私が『賭け麻雀なんて打った事ない』って言ったら、ひどくガッカリした様子だったわ」
和弥は、小百合の母・双葉がマンションを尋ねた時のことを思い出していた。
『西浦家は、新一さんに助けてもらった事があるんです』
間違いなく、新一に助けてもらったというのは麻雀だろう。
(オヤジ…あんたの彼女、今度は俺が助ける事になるかも知れん…)
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