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第199話:掴み取れ!

 そう言いながら麗奈には、全く恐怖した表情はない。躊躇することなく、一発目───このルールに一発はないが


「カン」


 何と五筒を暗槓してきた。

 声には出さなくったが、これにはさすがに和弥も内心ショックを受ける。


(チ…。これで五筒で和了(アガ)りはなくなったか)


 三面張(サンメンチャン)のアドバンテージは、かなり下がった。しかし逆に言えばもう安目の七筒かド高目の八筒和了りしかないのである。


(追いついたのは褒めてあげるよ。でもね、麻雀は一枚の和了り牌を引いた者が勝つんだよ)


 下家(シモチャ)は慎重に共通安全牌(アンパイ)を切り、場を繋ぐ。そして和弥のツモは───ニ索だった。

 一瞬ヒヤッとしたが、そのまま切る。残り3枚の三索を引くより、こっちの和了り牌である七・八筒を三種類のどれかを引くほうがずっとイージーに思える。


(ニ索とか、ヒヤッとさせるなよ…)


 和弥は心のなかで毒づきながら、そのニ索を(ホー)に置いた。

 とはいえ、五筒の槓は悪いことばかりでもない。これで4枚枯れたということになるので、その近辺の牌は他家にとっては使いづらい牌になったということだ。対子、暗刻で持たれてしまう可能性はあるが、八筒なら一枚くらいは溢れてくれるだろう。

 次巡。

 恵がツモり、手のうちから七萬を切る。そして───


「リーチ」


 3人目のリーチ宣言した。下家は唖然として、思わず恵の顔を見つめた。

 下家の視線に気づいた恵が、リーチ棒を捨て牌の前に置きながら微笑とともに言う。


「ふふ……。私の顔になんかついてる? テンパイしたから、リーチを宣言したまでです」


「す、すみません……」


 思わず謝る下家。

 和弥の高鳴る鼓動は自分でも感じた。心臓は狂ったように暴れ続けるのが分かる。まさか本当に、8巡目に変則三面張のリーチをかけた和弥が、放銃に回るなんてことが……。

 立川南の控室はもう騒然だ。


「どういう事よあれっ!?」

  

 今日子が声を荒げる。


「裏ドラ無いとはいえ、五筒を槓されたの痛すぎる…。もう三面待ちの意味ないじゃん」


「お願い、変な牌は持ってこないでほしいっ!?」


 綾乃と由香ももう神頼みしかない。

 しかしそれは和弥も同じであった。祈る思いでツモってきた牌を確認する。───八筒


「……あ」


 ───じゃなくて、これは自分の和了り牌。しかもド高目の八筒だ。


「ツモ」


 和弥は慌ててツモの宣言をし、切りかけたその八筒をカタリと手牌の端に置いた。


「ふふ、キミでも動揺する事あるんだ」


 麗美が手牌を伏せてからかうが、勿論無視。

 このルールに裏ドラはないが、メンタンピン・ツモ・三色・ドラ。倍満には一歩届かなかったが、親ッパネだ。

挿絵(By みてみん)

「6,000オール」


 この瞬間和弥の優勝が決まった。一斉に焚かれるフラッシュの雨。


「やるわね。こっちも逆転の手は張ってたけどね」


 手牌を伏せながら、恵が言う。


「……そりゃ残念だったな。でも和了ったのは俺だ」


 全員から6,000点を回収し、点棒入れにしまう。念のため点数表を表示させるが、やはり和弥が逆転トップだ。


「和了りトップで終了(ラスト)だな」


「ゆ、優勝は東京都西地区代表・立川南高校の竜ヶ崎和弥くんに決定しましたっ!!」


 場内アナウンスが鳴り響き、和弥が再びフラッシュの嵐が降り注いだ。

月・水・金曜日に更新していきます。

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― 新着の感想 ―
こういう時はちゃんと持ってくる…強い。
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