第198話:勝負の一打
(ダブリー、だと……?)
エアコンが効いているはずの決勝会場。 にも関わらず、和弥のこめかみを、一筋の汗が流れていく。が、第一打でのリーチに待ち牌を読む情報などあるはずはない。
(参ったな…。全くのノーヒントだな。現物の北以外何も情報がない)
幸い北は和弥の手の中にあった。
(安全牌がある内は……無駄な冒険は必要無しだな)
それにしても麗美のダブリーとは。
(この女の事だ…。ペンチャンみたいな愚形待ちでも、平気でリーチをかけてくるはずだ。しっかし神様も意地が悪いぜ…)
捨て牌から徐々に情報が出ていくが、それでもまだ油断出来ない。
逆転トップを狙った恵が勝負に出た。打・四索。
(見たぞ…今ほんの一瞬だが四索をガン見したな?)
四索に近い形…六索か三索である。
(間違いない。ペン三索だっ!!)
とにかく───和弥は自分の配牌を今一度確認する。自分でも六索を切った。これで三・六索もない。間違いない。
これが和弥の現在の手牌の形だった。
(俺にできることは、和了り続ける事。それしかない)
麗美と恵の2人を封殺し、尚も和了る。何という難しいミッションか。しかも麗美のダブリーをかいくぐり、だ。
(よし、ハラ括って怯むことなく攻めていくかっ!!)
和弥は決意を胸に、ツモに手を伸ばした。引いてきた牌は、八索。
そこで和弥は改めて考える。
(結構いい手に育ってきたじゃないか。形を気にしないなら既に一向聴だし、少し工夫すればタンピンも、はては三色までもがつきそうな手…。出来れば萬子を678で固定したいので、三索を手にしたら当然引き入れる)
しかし、ここからが関門だ。麗美ならその内ペン三索もツモるような気がする。
幸いなことに、この巡目ではそのような現象も起こらなかった。第2関門突破である。和弥は小さく安堵の溜め息をついた。
(毎回毎回、嫌な汗かかせるなこの女…)
恵と、そして下家も。目立ったような打牌はここまで見られない。強いていえば、恵の四索くらいか。何事もなく、どんどん巡目が消化されていく。また和弥のツモが回ってきた。引いてきたのは、“大本命”の三索だ。三色固定したいがそれを我慢し、今度は四萬を切り、この形にする。
六・九萬、五・七・八萬、一・四索の一向聴。もっとも嬉しいのはやはりドラの八筒を引いての三色確定平和聴牌。次点に一・四索引きの三面張か。
(一番シラケるのは六・九萬の両面単騎をツモっての役無し聴牌か。無論最終形がノベタンになったとしても、オリない以上はリーチをかけるつもりだが)
2巡の無駄ツモを経て和弥が引いたのは四索を引いた。ドラ含みとはいえ、まだ8巡目が三面張なら引き和了ることができるだろう。
和弥ゆっくりと点棒箱を開け、九萬を切ってリーチを宣言した。
「リーチ」
「あらら、追いつかれちゃったか」
(そういえばこの女と初めて打った時も、678のメンタンピン三色和了ったっけ)
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