第192話:最終決戦
全国大会個人戦、ファイナルバトル開幕!
『完全競技ルール決勝・最終戦を行います。出場選手は集合して下さい』
再度アナウンスが、今度は廊下に響く。
「んじゃ、行ってくるぜ」
和弥は小百合の肩を軽く叩くと、決勝の対局へと向かって行ったのだ。
(竜ヶ崎くん……頑張って!!)
ここまで追い詰められても、弱音を吐かない。そんな和弥の勝利を、心の中で願った小百合だった。
小百合だけではない。由香も紗枝も綾乃も龍子も、そして犬猿の仲だった今日子も。和弥の後ろ姿を目で追うだけである。
『完全競技ルール決勝戦・最終戦を行います』
係員の声が三度会場内に響く。
「何度もしつけーよ」
場内のアナウンスに、和弥も思わず独り言が出る。和弥は己に笑ってしまった。
「およよ。余裕ある顔してるね」
先に着席していた恵が茶化す。
「流石にもう負けられないんでね」
和弥も軽口で返したが、目は笑っていなかった。
「いいね。それでこそ私も完全競技ルールを選んだ甲斐があるってもんだよ。そろそろ役満いくからねー!!」
そういうワケでもないだろうが、麗美が言うとイカサマ宣言にも感じる。
「勝手に吠えてろ……」
和弥もため息交じりに返し、最終戦東1局が始める。
下家の親。ドラは西。
和弥は配牌を取り、山からツモった瞬間───
(…手は悪くない。456か567の三色か)
中々の好配牌だ。字牌から処理していけば勝負できるはず。
まずは不要牌から切っていく。
(花澤麗美、発岡恵……。面前でよし、鳴いてよしのバランスファイターだ。似たタイプが同席すると割を食うことがあるが…)
8巡目。
(よし…。むしろいい方に風が向いてくれたぜ。中張牌が伸びたら、ドラ切ってリーチに行こうと思ったが。重なってくれたか)
「リーチ」
七索を切ってのリーチ。
「ポン!」
しかし同巡。上家の麗美が、恵の切った白を鳴いた。
(何っ!?)
思わず顔を上げる和弥だ。一発のないこのルール、狙いは間違いなく一発消し目的ではない。
「チー」
そして恵も、下家の捨てた牌を鳴いてきた。
「序盤からピーチクパーチクよくもまあ……」
和弥はそう毒づくが、内心焦っていた。
(まずい……向こうも張ってるか…)
そして12巡目、麗美のツモ番。麗美は3連続は不要牌を河に捨てる。
(不要牌と分かったらノータイムでツモ切りか。よほど大きな手なのか…)
恵も迷わずツモった牌をそのまま切った。
(あの捨て方……索子か? いや、くっつきの筒子の順子と見ていいだろう。そして中切りで様子見ときた。でもこっちはリーチしてしまった以上、見ているしかない)
しかし───
「ツモ! 300・500」
麗美は和了りは役牌のみである。これには和弥も動揺を隠せない。
(…俺の手がデカいと分かっているからこその、ノーガードの殴り合い。と見せかけて三筒は抱え込んでやがる。上等)
和弥は静かに牌を伏せた。
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