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第191話:交錯する想い

「それでは10分間の休憩です!」


 係員の声が響く。和弥、まさかの3位。しかし勝負は勝負。


「ありがとうございました」


 和弥は形だけの挨拶した後、控室へと向かった。

 控え室のドアを開ける和弥。小百合・由香・今日子・紗枝らが、一斉に和弥を向く───


「……どうだった?」


 由香の質問も無視して、ソファーにドカッと座り込む和弥だった。


「竜ヶ崎くん……」


 小百合も心配そうである。


「どうだったも何も、見て分かるだろ。……何も出来ずに3位だったよ」


 しかし流石に、その表情には余裕がない。


「やれやれ。これで最終戦はマジでトップ以外ダメになったな」


「お疲れさん。ちょっといいかしら?」


 その時だった。控室のドアを開けて入ってきたのは───


「え?何で……?」


 それは龍子だったのだ。


(なんだ? トイレでも行ってたのか先生……?)


 少々失礼なことを考える和弥だが、疑問に思うのも無理はないだろう。何故なら龍子が生徒の対局の最中に抜け出すのは珍しいからだ。


「竜ヶ崎。綾乃が準競技ルールで優勝したぞ」


(!?)


 裏ドラのみありの準競技ルール個人戦。それの優勝とは───


「それは……おめでとうと言っておいてください。こっちはこっちで手一杯なので」


「冷たいなあっ!! 先輩が優勝したんだぞー? 『俺のカノジョにしてやる』くらい言えないのかなあ?」


 後ろからいきなり抱き着いてきたのは、綾乃である。


「ちょっと綾乃先輩。なんですか…」


「つれないな竜ヶ崎くんは」


 綾乃がそう答えた時だった。


「やめて下さい部長!!竜ヶ崎くんも嫌がってるでしょう!?」


 張り上げた声の主は小百合のものである。


「何小百合ちゃん?まずは『おめでとうございます先輩』じゃないの?」


「いくら先輩だからって、竜ヶ崎くんを困らせるのはやめてください!!」


 普段は冷静な小百合も、さすがに堪忍袋の緒が切れたようだ。


「はあ? 私と竜ヶ崎くんの事で、どうして小百合ちゃんにとやかく言われなくちゃいけないの……!?」


 勿論、小百合が異性として和弥に好意を持ってる事に気づかない綾乃ではない。分かっててのこの挑発である。

 いつもの作り笑いも消え、綾乃の顔が怒りに歪むが、そこに割って入ったのは龍子だった。


「綾乃」


「……はい先生」


「そこまでにしておけ」


「……っ!」


(なんだこの威圧感は!?)


 綾乃はおろか、和弥ですら驚く強者のオーラだった。


「分かればよい。お前にインタビューしたがっている記者たちがいる。行くぞ」


「はーい」


 そう言うと、龍子は綾乃を連れて控え室を出ていったのだった。


「何だったんだ……?」


 和弥が呆然としていると


『完全競技ルール決勝・最終戦を行います。出場選手は集合して下さい』


 アナウンスが控室に響く。


「んじゃ、行ってくるぜ」


 椅子から立ち上がり、廊下に出る和弥。


「竜ヶ崎くん!」


「!?」


 今度は後を追って来た、小百合に抱き着かれたのだ。そして───


「うわああああん!!」


「おいさゆ…委員長!?」


「勝てるわよね!? 最後勝てるわよね!?」


 泣きながら自分の事のように叫ぶ小百合に、和弥は困惑すると同時に安堵したのだった。


(彼女の為にも……俺は負けられない!)


 小百合に抱き着かれながら、和弥は改めてそう思ったのだった。

月・水・金曜日に更新していきます。

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