第185話:余裕の敵
※第54話と登場人物紹介・2に発岡恵を追加しました。
和弥はゆっくり牌を開ける。やはり期待に反して配牌は平凡なものであった。
(まあこんなもんか。さーて、どうしようかな。手なりで789の三色を狙っていくか…)
和弥はどうするべきか。敵側の2人、麗美と恵がまた何かをしてくるのはまず間違いないと言える。手を進めるより、相手の手元を観察していたほうが得策か。また露骨なイカサマではない、『ルールの範囲内』なのがまた始末に負えない。彼女達のチェックもまた、和弥の重要なミッションだ。
第一打の西を切る恵の動きを注視して見届けたあと、和弥は自分のツモに手を伸ばした。
このルール通り、手牌の進行は至って平凡だった。というより、むしろいい進み具合だった。
7巡目にこの形。できることなら好形で聴牌したいところである。
次巡、四索を引いてきた。ツモ切ればカン七索待ちが残った場合にスジ引っ掛けにはなるが、まだ伸ばすつもりで八索と入れ替えた。
本来なら索子が伸びるのを期待して九筒切りだろうが、このままでは平和にしかならない。一発・裏ドラ・赤ドラ・槓ドラがないルールだからこそ、ドラの受け入れは極力残しておきたいという和弥の判断だった。
ここまで2人に目立った動きはない。最早数合わせである下家もなにかをした様子はない。
(仕掛けてくるならここからだが…)
1巡ツモ切り。またも無駄ツモが来るが、一向聴を維持。
次巡───ツモったのは四萬であった。
(ドラ待ちだが…最悪九筒でも構わないっ!!)
「リーチ」
役無しだが、和弥は2人の出方を見るという意味でも五索を切ってリーチをかけた。
(さて、どう動く? ベタオリするとは思えない。回し打つか?)
しかし意外なことに、2人は素直に現物の八索を手出しで切る。
そして次巡。和弥がツモった牌を確認すると、ドラの八筒だった。
「ツモ。1,000・2,000」
もし裏ドラ有りルールだったら───
このルールで打ってから何度も思うが、まずまずの逆襲パンチである乗らず。
「あーあ、和了れると思ったのに」
パタリ、と手を倒す麗美。
また異様な捨て牌だ。一体さっきから何を狙っているのか。
いや、考えてみたら。一発も裏も赤も槓ドラもないこのルールでは。手組の上手さが非常に重要になる。
(……彼女なりの戦略ってワケか)
しかし手は遅くなるだろ……心の中で思ったことだが、それは打ち手の考えそれぞれだ。
点棒を回収し、牌を収納口に落としたその時。
「ね、私が何狙ったか気になる?」
「いや、別に……」
直球すぎる。本当に麗美は遠慮がない。
相手にするだけ無駄なことだ。だが麗美は高らかに笑ってみせた。
「次は私の親番だね」
「そうだな」
全く相手にしない和弥。東3局。ドラは一萬。
いよいよ問題の麗美の親である。
眠たそうにあくびをしている恵。自分だけ点数が減って焦る下家。思いは四者四様である。
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