第180話:泥沼への引きこみ
下家は2連続ツモ切り。ひょっとしたら聴牌したかも知れない。
(…和了るなら和了れっ!!)
臆面も無く九索を切る和弥。
「チーッ!!」
今度は両面を鳴く下家。さらに次の巡目。
下家は勢いよくツモ牌を置いた。
「ツモ! 3,000・6,000!」
(なるほど…。一索に反応したのは対子であったからか)
「「……」」
恵も麗美も眉間にシワを作り、それぞれ6,000、3,000点を渡す。
「滅茶苦茶するね」
流石に麗美も引きつっていた。
「俺も勝負手だったんだ。別に俺は下家さんと組んでるワケじゃない」
さらっと嫌味を返す和弥。
勿論勝負手というのは嘘である。初戦の和了り合戦は勝てない。そう見るや相手に和了せない作戦。今のように麗美と恵が動き出す前に場を回してしまえば、十分勝機はある。今回の麻雀における打ち方の路線というものが決まった気がした。
「周囲も手駒に使う……か。本当に新一さんを見ているようだな」
控室でモニターを見ていた龍子も、思わず呟いた。
「リスクありすぎでしょ、あれ…。どういう神経してんのよアイツ…」
今日子が思わずしかめっ面をする。
「それでも竜ヶ崎くんには、あれしかなかったんだと思うわ」
ただ、それにしても今日子の言う通りだ。小百合も今の一局は気が気ではなかった。
東2局。ドラは五萬。今度は麗美の親である。
今の3,000点放出を一気に挽回するチャンス手が、麗美に入ってきた。
最初の9枚で天和、もしくはダブリーを期待した麗美だが、残念な事に天和にもダブリーにはならなかった。
が、ダブ東を鳴ければ11,600は確定である。もし面前聴牌したら愚形とはいえ、どれを引いてもリーチにいく。
2巡目のツモで引いてきたのは五筒という好牌であった。まずは一筒をを切り、引き続きとはいえ随分形がよくなった一向聴に取る。
しかしそこからが続かない。3巡無駄ヅモが続き、さすがに麗美もイライラし始めた。
(この坊や、全部牌を引き入れてるわ…。不味いわね…)
その和弥から東が切り出された。麗美はすぐに飛びつく。
まだ捨て牌は一列目。速さも打点も十分の聴牌である。他家から出ずとも、流局までにはツモれるだろう。
しかしそれもつかの間だった。
「リーチ」
今度は和弥のリーチである。
(……あンたも張ってるんだろ? めくり合いだな)
緊張感がさらに高まる卓上の空気。9巡目───
「ツモ」
カタリ、という音と共に八索を横に置く和弥。
「メンタンピン・ツモ・イーペーコー・ドラ1。3,000・6,000」
恵にもようやく和弥の狙いが分かったらしい。
(……なるほどね。やっとらしくなってきたわ。道中は楽しい方がいいしね)
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